旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

日本の着物をイスタンブールで売ってみた【前編】

2021年12月13日 | 日記


コロナ禍まっただ中、僕は昨年も今年も海外に居ました。
今回は渡航先で行っていた事を書こうかしら。

僕のSNSを見てくれている友達から「楽しんでたねー」と言われたりもするが、
それは楽しんでる状況やポジティブな事のみを意図的に発信していて、
大変だった事や仕事関係はほぼアップしていないので、そう思われるのだろう。

実際、楽しんでもいたのだけど、一応言っておくと、
僕にとって毎回の海外渡航は仕事であって単純な遊びではないのさ。
仕事が遊びなのか遊びが仕事なのかの定義は置いておいて、
観光だけしたり休暇であるのとは全くの別物と僕自身は考えているのでござる。

前置きははこれぐらいにして、
本題に入ろうかしら。

「イスタンブールで日本の着物を売ろう」

何年か前から考えていた事を昨年から実行に移した。

絶対売れるという確信があった訳ではない。

ただ、人と違う事をやろうと思った。
それが主な動機だった。

パリやロンドン等ではだいぶ以前から着物や日本の古い物を売る日本人が居るのを知っているが、
それをイスタンブールでやってみたかったのである。

「何故、着物だ?」
「オメー、普段、チベットやんけ」と思われるかもしれない。

実は僕は日本の着物や古い物が元々好きなのである。
日本の古い物や伝統文化・芸術は世界的にみても極めて美しいと思っている。

そこで、いきなり古い日本の仏像とかを海外で売るより、
国籍問わず実用できる服またはファッションでありながら、
日本の文化を象徴する着物を選んだだけの話しである。

(上記の写真は今年イスタンブールで売った価値のある古い着物で、
今回の文章中に登場する着物とは異なります)

やってみると色々な壁があったんだけど、
さて、どこから話そう。

着物の仕入れからかな。

昨年の始まりは、
中古の安価な着物を知り合いの着物問屋さんから大量に譲り受ける事から始めた。

その時点で既に僕自身が日本には居なかったので、
日本の知人の着物業者さんに連絡して大体の話しをつけたのだが、
問題はその着物業者さんは海外への国際郵送を出来ない事だった。

そこで、日本に住む国際貿易業をやっている友人の事務所宛に
大量の着物を国内発送で送ってもらい、
その貿易業の友人からイスタンブールに居た僕宛に国際発送する流れをとった。
着物の数が多かったので全部を送ると送料が大きくなり、
しかも外国人好みであろう着物は少なかったので、
そこで、単純に間接郵送ではなく友人から写真を送ってもらいピックアップした後に発送手配してもらった。
羽織を中心に選んだのだが、そもそも着物って意外に一枚が重い。
手数料や送料などは、もちろん全て僕が支払ったのだが、
中古の着物自体は無料同然で貰えたのだが必要経費が思いのほかかかってしまった。

日本から僕自身が直接海外へ持ち込めばそれらの手間や経費は必要なかったのだが、
僕が日本に居なくても商売が成り立つスキームを実践してみたかったので、昨年はその方法をとった。

通常時なら何の問題もなく手元に届いたであろう。

しかし、時はコロナ全盛期である。

国際輸送品の多くに問題が発生していた。

いつまで待っても全然届かないので、
日本の輸出担当会社に問い合わせしたら、
「全世界、いつ届くかは全くの不明」という
前代未聞の回答すらあった。

受け入れ国の輸入制限とか輸送機の減便等々、
簡単に言うと、
届く迄、相当な日数が必要であった。

無事届いただけでも奇跡だったかもしれない。

通常10日間位かなー、で届く品物だったが、
結果的に二ヶ月間も待った。

最終的にはさー、
イスタンブールの集積場まで自分でタクシーで行って、
膨大な量が積まれ、溜まりに溜まっていた段ボールの山の中から自分で見つけ出す荒技まで使った。

さて、無事に手元に届いたのは良いが、
次にやる事は一番重要な販売先である。

品物が届く間に色々動き回ったよ。

イスタンブールでの骨董市に行って、
出店者に「おらに出店スペースを貸してくりー」とか頼んだり、
知人のトルコ人の古物業者に着物に興味ある業者を探してもらったり。

イスタンブールで骨董市に出るのは正式には主催者に交渉する必要もあるのだが、
日本の古い習慣の骨董市とは異なり、そこら辺は意外に緩かった。
金さえ払えば万事解決できるのも良くも悪くも話しが早い。

金は要らないし出店スペース貸して良いよー、という人も居てくれたが、
最終的には、たまたま骨董市に出てたトルコ人カップルと出会い、
(僕が出会った時は彼らの初出店日であった)
彼らに僕の着物を委託して売ってもらった。

後日談になるが、このカップルとは親密になり、
家に泊めてもらったり遊びに行ったり非常に助けてもらった。
彼ら自身も旅人であり、日本に住んだ経験もあった。

余談になるが、日本でトルコ人というと、
ケバブ屋とかで働く労働者階級の方々や、
古典的なイスラム教の国の人というイメージもあるかもしれないが、
それは、ほんとに偏ったイメージであって、
イスラムの古い習慣に抵抗感を持ち、日本より遥かに欧米的かつ現代的な価値観を持つ人は多い。

容姿も様々であって、一概にエキゾチックな中東的な容姿とも限らない。
実際、その僕の友達カップルは、男の方は青い瞳で白い肌に金髪、女性も緑の瞳でアルメニア系なので
日本人の持つトルコ人のイメージとはかけ離れた容姿である。

余談ついでに言うと、
クルド人は迫害され難民対象の民族であるという情報が日本ではあるが、
僕はイスタンブールに何人かクルド人の仲の良い友達は居るが、
彼ら彼女らは亡命や難民とはかけ離れた生活でカフェ経営など力強くビジネスをやっている。
○○人だから一概に難民の対象とするのは必ずしも正しくはないと思う。
ただし、彼らの故郷の街ではトルコ人との衝突は日常茶飯事とは言うが。
個々の実情を詳しく正しく知る必要があるだろう。

話しを戻そう。

僕が着物を売った、その骨董市、
規模は大きく200店舗位かなー、の出店者がひしめく骨董市である。
タネを明かしてしまうと、
グランドバザールの業者も仕入れにくる骨董市であったりもする。

イスタンブールには蚤の市や日常品の露天は結構やっていて、
中には盗品も売られている市場もある。
それらのマーケットの中では一番有名かつ規模の大きい市場で売った。
いつもではないが、毎回足を運ぶと良い物が安くたまに見つかるのも事実だ。
聞く所によると、イスタンブールの芸能人も来るらしい。



その骨董市。
広い敷地に多種多様な物が並んでるよ。



地方を巡って品物を集める店舗を持たない行商も出店してます。
謎な古道具が沢山あります。
日本でも骨董市が好きな人は楽しめると思う。


で、そこで売ってみましたよ、ジャパニーズ・キモノを。

ここで大切な事を繰り返して言っておこう。

最上部のメインに使った着物を並べた写真は、
今年挑戦した価値のある古い着物である。
昨年売った着物ではござらん。

昨年のイスタンブールの骨董市で売ったのは、安い中古の着物であった。
シルク製だが安価で大量生産されている中古の羽織や着物。

それらの日本では安価な中古の着物を
トルコの一般人が手の届く範囲の値段をつけて販売したのである。

古い物というより、
日本的なファッションを売りにする所から始めたのである。

色々書いたが、
経緯とか知ったこっちゃないと思うので、
売れたかどうかが一番、気になるとこだろう。

戦績を言っちゃおう。

あんま売れなかった。

失敗したよね。

まぁ、全く売れなかったのではなく、
一応売れたは売れたが、
イスタンブールで生活を成り立たせる程の売上は全然ない。
商売として言えない程の売上であって、
輸送コストとかを考えると、むしろ損した。

これが、
昨年のイスタンブールで着物を売った実績である。

「はぁ?なんやねん、それ、ショッボ!」
と言われるだろう。

そんな訳はない。

そんなんじゃ、
話しのネタとして弱い。
イスタンブールで着物を売った話しの落ちとしても余りにも弱い。


まだまだ続きがありますよ。
色々やったんですよ、わしゃ。



【後編に続く】



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