
「ペラク」に関してです。
ペラクとは、
インド最北の地、ラダックまたはザンスカールで、
チベット仏教を信仰するラダック人またはザンスカール人が、
結婚式等で女性が盛装する時に頭に被る「頭飾り」です。
英語だと、ラダッキー(またはザンスカーリー)・ヘッド・ドレスとか言われております。
ラダックとは詳しくは説明しないけど、
インドのジャンムー・カシミール州の地域の名称です。
インド最北部ですな。
すぐ東にはチベット(中国領)、
西にはパキスタンと国境を接しております。
地理的な事から軍隊が常駐していて、
アーミー・キャンプ(基地)も沢山あります。
国際的にはインド領ですが、
チベット仏教圏であり、
地元民達は、
自分達の事をラダック人と自認していて、
他のインド人の事を「インディアン(インド人)」と分けて呼び、
かつてはラダック王国でもあったので、
独自のアイデンティティを持っております。
そして、ラダック人はチベット仏教を信仰してます。
結構、真面目に。
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その頭飾り「ペラク」
欧米の民族装飾品の愛好家の一部では、
知られた存在です。
単なる民族衣装の装飾品ではなく、
その圧倒的な存在感と、
親から子へと伝世する、
特別な位置付けとなる装飾品です。
無数のターコイズが付くのが特徴です。
盛装時には、
顔の両サイドに「耳」(正式な名前を聞いたが忘れてしもた)と呼ばれる、
羊毛の平坦状の飾りを着用します。
そして、その耳部分に銀製のジュエリーなどを垂らします。



実際に着用しているのは、
こんな感じですな。
頭に乗せているのがペラク。
中央の写真奥の女性たちが付けている、
顔の両サイドの黒い羊毛部分が耳。
ペラクと言っても、
デザインが異なる地域もある。
上の写真はラダックでのお祭り用の簡易的なペラク、
真ん中と下の写真はザンスカールの結婚式の様子。
新婦は布でペラクと顔を隠す。
頭上から反り出した見た目から、
欧米では「コブラ・ヘッド・ドレス」とも例えられるスタイル。
これらが通常のペラク。
ただし、
中央の写真の女性たちが彼女達が着用しているのは、
それほど古くはないペラク。
ターコイズも新しい物が付いてたりする。
そう
例え、
正式な結婚式でのペラクであっても、
今では新しいペラクが着用されております。
伝世されるべき、オリジナルのアンティーク・ペラクは、
既に、
換金価値の対象として手放している場合もあります。
古いオリジナルのペラクでも、
一見、見た目は良いが、
よくよく実物を見ると、
チベタン・ターコイズの質が良くなかったり、
古くないターコイズが付いていたり、
ターコイズではない物も混じっていたりするペラクもあるのです。
ぱっと見の迫力自体があるペラク
でも、よくよく見ると色々と違いがあるのです。
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今回、僕が手に入れたペラク。

迫力がある。
写真で見ると小さいが、実物は、
頭を覆いかぶさり肩まで垂れる大きさ。
チベタン・ターコイズ、一個一個も大きさのあるターコイズ。
上部がフラットなのは、チャンタン地方のスタイル。
チャンタン地方と言えば、
遊牧民や古い伝統的なスタイルが残る地域です。
因みに、チャンタンのカシミアは世界的に有名。
超品質が良い。
世界的な某トップ・ブランドも、
チャンタンのカシミア(パシュミナ)を用いていると聞く。
さて、そのチャンタンのペラク。
今では、オリジナルは数が少ない。
これは地布も古いオリジナル。
通常、赤系の布を用いる事の多いペラク。
チャンタンのオリジナルはベージュ色の布を使っている。



圧巻
びっしりと、良いアンティーク・チベタン・ターコイズが付く。
その数、120個。
小粒ではなく、全てそれなりの大きさがある。
全部が古い、アンティーク・チベタン・ターコイズ。
ディープ・グリーンからエメラルド・グリーン、
青緑、青みを感じる色、
雰囲気の良いターコイズから、
艶々パティナのターコイズまで様々。
何より、全部がナチュラルでアンティーク。
因みに、上述の着用写真を見ても分かるように、
新しいペラクには、
明るい青色のターコイズを好んでつけられます。
今では、明るい青色ターコイズの新しい物が手に入るからですな。
でも、元々のオリジナルのペラクは、
青緑またはグリーン系のターコイズが多いのです。
また、
これらはペラクを作った時に、
アンティークの石を一つ一つ選んで縫い付けたので、
ターコイズ自体は、ペラク本体より遥かに古い、
数百年レベルのチベタン・ターコイズが付いております。
ペラク自体の年代は1914年製のシルバーコインが付いているので、
その辺の時代だろう。

この上部の装飾にも僕は惚れた。
大型の銀製のフラットな装飾部品と並行して、
繊細な貝や、
真珠などのビーズが連なって飾られている。
こういった細かい、こだわり的な部分が、
伝世する事を目的として生まれたオリジナルの証。
そして、
並べられたチベタン・ターコイズも、
一個一個が個性的で美しいクオリティ。


ガツーンと付く、メイン・ピース。
大きさも、かなり大型。
名前があるのだが、忘れてしまった。
もちろん、これもシルバーのオリジナル。
彫りと打ち出しが施されて美しい。
これだけでも価値がある。
通常版のペラクは、
ラダック・スタイルのガウを中心に持ってくる。
チャンタンのこのペラクは、
ヘッド・ピースが大型のシルバー装飾品。

写真中央に並べられた物は、
ロックショ(ク)という名前の装飾品。
円形が基本で、
周囲をチベタン・ターコイズで飾られ、
中央にはカーネリアン。
新しい物ではなく、時代を経た、アンティーク・ロックショ。
ヴィンテージのロックショ単体で売られているのも目にするが、
一個だけでも意外に高かったりする。
それが複数付く。
周囲のチベタン・ターコイズの質を見ても惚れる。
良いレベルの物が嵌められている。
商売的な事を言うと、
バラして売った方が効率的だろうが、
このペラクに関しては、僕はしない。
最下部に二段ほどに、
もっとターコイズがあった痕跡があるが、
元々の持ち主が換金のために売ってしまったのだろうか。
不明である。
なお、
新しいペラクは、形の整った台形ターコイズを綺麗に並べるが、
古いペラクは、わざわざ一個一個選ぶので、不揃い。

耳を添えてみました。
耳を付けたこのスタイルが盛装スタイル。
耳というより羽根だろうか。
別で手に入れた耳部分は、
チャンタン地方から行商に来ていたオバチャンが持っていた、
新しい耳部分のみを譲り受ける。
ペラクの耳だけが売られているのは、
今まで見たことがなかった。
ペラク本体のみ手にしていたので、
まさに偶然。

ペラクの耳
意外と大きいです。

前回の投稿にも登場した、野菜売りのオバハン。
ハンド・スピニングの羊毛糸で、
補修してもらいました。

「あら、ペラクの耳ね」
とでも言っているのだろうか。
地元のオバハン連中で話題のネタとなっていました。
オバハン達、
スター・ウォーズとかに出てきそうな容姿だ。
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このペラク
表に出ていなかった物で、
昨年11月頃に誰かが手放し、
ラダックで商いをする僕の知人が買い取ったらしい。
確かに、去年の9月時点では彼は持っていなかった。
今年、それを僕は手に入れた流れです。
手に入れるのも物語があり、
最初の彼の言い値は、僕が買える値段ではなかった。
しかも、
別の地元の業者が狙っているのも耳にしていた。
まぁ、
詳細は省きますが、
店主も流石に粘り、
僕も圧力をかけ、
最終的に店主は現金化を望みましたな。
結果、交渉は成立した。
・・・と言うことで、
個人的に10年以上前から欲しかった、
オリジナルのペラク。
しかもチャンタン・スタイル。
ついに、手にできました。
日本で売れるか売れないかは、
もはや気にしてませんでした。
個別のチベタン・ターコイズを見ると、
お得感は凄くあるだろうが、
金額的な事より
僕にとっては、
見送ることのできない品でした。
アンティーク・チベタン・ターコイズが高騰している現在、
このペラクはコレクションにしておいても、全く構わないんです。
オリジナルの古く良いペラクは、
本家ロンドンのクリスティーズでも出品されていた逸品。
価値がなくなる物ではないし、
そもそもが、もう数に限りがある美しい物である。
良い物を手に入れられました。
終わり
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おまけ

渡航中、同時期に出会ったペラク
通常のコブラ・スタイルのペラク
地布は新しく、
オリジナルではないが、良いターコイズが多く付いてる。
新しくペラクとして作られた物だろう。
最上部に、一際大きな、
チベタン・ターコイズが付いているが、
これらが、トップ・ピースまたはヘッド・ピースと呼ばれる特別なターコイズ。
シェイから来た人が持っていた。
お金に余裕があれば、
これも手にしたとこだけど、
僕は古いオリジナルの、
特別な物が欲しかったので見送った。
以上
美しく圧倒的な存在感のあるペラクの話でした。
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