旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

チベット密教最深部のカパーラという物

2018年07月20日 | チベットもの



【カパーラ】
カパーラ、または、カパラとも呼ばれる。
(カパラー、カ・パラーとも)
密教を意味する、サンスクリット語で「タントリック」の
最深部に位置する宗教法具で、
簡単に言うと、人骨です。

ぐろーい、
きもーい、
触りたくなーい、
とか言われそうだが、
れっきとした伝統あるチベット密教法具である。


数あるチベット物の中でも、
カパーラ(カパラ)はその最深部に位置する物でもあり、
チベット仏教や密教の、宗教性、数珠やビーズや石、お守りに興味を持つと、
行き着く物のひとつでもあると思う。

以前、チベット仏教を研究する年配のある方とお会いしたが、
こっそりと自前のカパーラの数珠を見せてくれた事がある。

「あ〜、やっぱり、この人も持ってるんだ」という印象だった。

なお、カパーラは頭蓋骨杯(盃)を表す事もあるが、
カパーラの数珠もチベットではカパーラと呼ばれる。
むしろ、数珠を指す事の方が一般的である。

髑髏杯を日常使用(特定の業者は持っているが)しているのは、
密教ヨガ行者ンガッパの他には僕は目にした事がない。
なので、このブログでのカパーラは数珠を意味します。

因に、銀装飾や石で飾られた髑髏杯はほとんどがネパール物であり、
チベット本土ではほぼ目にしない。

また、カパーラの数珠もネパールやラダックでは実際に使用している地元民は、
まず目にしないが、
チベット自治区内ラサやシガツェへ行くと
実際に持っている地元民を目に出来る。

カパーラで特に有名なのはカム地方だが、
実際にカパーラを使用している地元民を目にする機会は、
カムよりラサの方が圧倒的に多い。
ラサは人口も多いし、巡礼者や密教徒が多いからだろうか。

よく、「カパーラは、神聖な・・・」とか
いう言葉を目にするが、
僕の現地チベットでの印象は、特別な神聖さ、というより、
生活に密着した大衆的な宗教観と受けとっている。


...で、そのカパーラは、そこら辺の骨を使っているかというと違い、
ネパールからの物は注意が必要だろうが、
チベット本土からの物で大概の物に関しては、
ちゃんと?儀式を通した骨である。

人以外の動物の骨、猿とかであろう、という意見もあるようだが、
それはネパール(カトマンズの某地区)でのカパーラに関しての意見であって、
今の僕の見解は、東チベットを含めチベット本土のカパーラに関しては、
人の骨である場合が、多い。

カパーラ特有の特徴もあるのだが、
僕も見た事があるが鳥葬が頻繁に行われるので、そもそも、人骨の入手がしやすい。
確かに、猿やヤギもいるが、それらの骨を手に入れるより人骨を使う方が自然だと思えるのだ。
猿を捕まえるより簡単なのは確かだ。
だって、猿やヤギより人の方が数が多いからね。

ただし、ヤクの骨を使った物はある。

この件に関して、あるコレクターとも話をしたのだが、
ヤクのカパーラがあるのは、今の時点では事実だと思う。


因に、ブラック・ジョークのようだが、
リタンなどで鳥葬が行われるのは、
週に二回だが、それは生ゴミの日と同じ曜日に行われる。




ンガリ(西チベット)からラサにやって来た、密教ヨガ行者ンガッパの私物のカパーラの数珠

ラサのカパーラの多くは、本場カム地方より渡ってきた物が多いが、
数は少ないが、ラサ近郊からのカパーラもあるらしい。
西チベットのンガッパが持っていた事から西チベットにも当たり前のように
カパーラはあるのであろう。



ラサの業者が持っていたカパーラ
付属品はいらないが、カパーラの質は悪くない。


現地でも、古さや質、状況などで値段はピンキリで、
中にはとんでもない価格で取引されているカパーラもある。

チベット本土でも古色をつけた新しい物から、
ほんとうに古い物、
数珠やパーツなど
大きさまで様々である。


奥が深いチベット密教。

ーー

追記)
2023.06

ネパールでのカパーラも、
チベット本土から持ち込まれた本物のカパーラを
稀に目にする事ができます。

東チベットのカムからなど来たカムパ(カム地方の人)が
持ち込まれたカパーラになり、チベット人地区等で出会え、
時にはお寺に寄贈されたりもするとの事です。
尚、売買においては基本的にはそれらは表では取引はされていません。



コメント    この記事についてブログを書く
« チベットの十字絞り染め民族衣装 | トップ | チベット仏教の小さな仏画 ツ... »

コメントを投稿