
久々に、チベットの古い物に関してでござる。
チベットの版木(木版)が、お題。
骨董市では、
来客する人の特性上なのだろうが、
版木(または木版)と言うとすぐに理解してもらえるが、
それ以外の全く知識がない方だと、特に若い人には、
「はんぎ??何それ?」とゆーよーなリアクションをされる。
ザックリ簡単に説明すると、
経典やタルチョなどを刷る(またはスタンプとして押印)目的で用いる、
彫りが入った木製の板状の物です。
写しとる事を目的としてるので、
原則、彫りは反転して彫られています。
なので、文字も反転しています。
刷る時に黒い染料を使うので、
表面の色は基本、黒い。
木に染料が染み込み、または付着し黒くなっているのです。
赤い色をした版木もあるが、それは赤い染料用の版木。
版木には、ボン教などの催事用のツァンパ型押し木製法具類もあり、
それはちょい違うが説明を省きます。
日本をはじめ現代の多くの国々では、
何かが書かれた紙をコピーをしたい場合は、
プリンターやコピー機で簡単に量産できちゃうが、
チベット圏での経典制作には、
いまだに手作業の木版を使っている場合が多い。
機械を買うより手刷り(または押印)の方が安い、という理由もあるだろうが、
伝統文化を守っている側面があると僕は捉えている。
版木を実際に使って作業してるのを見る事ができる場所もある。
有名な場所では、
東チベットのデルゲパルカンが代表的だと思う。
経典専門の手刷り印刷所のデルゲパルカン。
その階上の奥の版木保管室には、
膨大な数の古い版木が保管されている。
その量には圧倒されるだろう。
壁の小さな窓から射す薄明かりのなか、
暗い室内に保管された
静かに眠る古い版木の数々。
両側を埋め尽くす、本棚のごとくの木棚にビッシリと入れられた版木。
手刷りの作業現場だけが注目される事もあるが、
チベットの版木や経典に興味がある人であれば、
あの版木倉庫は見た方が良いとは思う。
圧巻です。

木版印刷院デルゲパルカン外観。
大きいです。
左下に小さく見える女性二人は五体投地で祈ってる。


デルゲパルカンの外壁周りの道には
コルラ(巡礼)をする地元の人々で賑わう。
ここら辺はみんなゴリゴリのチベタンです。
で、版木の実物です。
大きさ的にはデルゲパルカンに保管されている版木と同じ。
※デルゲパルカンから出た物ではないです。

総真言の両面彫りの古い版木
縦60cmほどもある大型。


深く漆黒のパティナがたまらん。
実際に使われてきた痕跡が多く残る。
この感じは土産物では出せない。
古さもあり、質の良い木も使っとる。
表面は真っ平らではなく、微妙にカーブがかかっている。


表面と裏面
同じに見えるが、別々の面です。

両面ビッシリと真言。
彫りが上手いですな。
たぶん、ちゃんとした彫り師が手がけたのだろう。
版木の中には、ヘタクソな彫りのものもあるが、
それはそれで味わいがあったり、謎の強さがあるので、
どっちが良いとも悪いとも言えない。
趣向の違いと思う。
この両面彫りの版木、お寺関係(またはそれに属したり関連する場所)来歴と思う。
このタイプの版木はそこら辺のご自宅じゃ使わない。
それ相応の所が放出したのだろう。
そのチベットの版木。
チベット仏教世界観を表した、
チベットの素晴らしい物の一つであると思う。
個人的にも
以前から魅力を感じている物の一つだ。
なぜだか、
これもイマイチ、日本ではスポットが当たってないように
感じるが気のせいかしら?
ネパールとかだと、
お土産用に量産された新しい版木が安価で大量に売られているが、
それはそれで、旅の思い出としてや、チベット感を感じるには
手頃で良いとは思う。
言葉が適正かは分からんが、小さな新しい版木は可愛らしくもある。
しかし、
実際に使用されていた物を求めたい場合は、話しが違ってきます。
カトマンズの某地区で多く見られる様に、
お土産品に黒い色やオイルを意図的に付着させて古く見せかけ、
「これ、古いヨ〜」「アンティークだよ〜」とか言って
おぼこい観光客相手に高く売っとるのを見かけたりするが、
それは、なんちゃって品です。
ちゃんとした真面目な物は、ある所にしかない。
・・・と、言いたいが、
チベットの版木に関しては、
実際には少しニュアンスが違う。
意外なとこに残っているのが版木。
もちろん、
観光客相手にボロ儲けを企む、
チベット風を装ったお土産物屋で、
古く良い版木に出会うチャンスは無いだろうが、
チベット本土では路上の露店商だったり、
日用品を売る売店の奥などに
古いオリジナルの版木が突然あったりもするのである。
チベットやネパール、その他のチベット圏の骨董屋であっても、
店や業者を選び、注意深く観察すれば、
今ならまだ、古く良い物を見つける事は不可能とは言えない。
しかし、
それらは簡単に出会えるとは限らない。
あくまで出会いは偶発的なのん。
市場に流れる良い物の数は少なくなっているのは間違いない。
時代の流れとともに
いつの日か、版木もその用途を終え、姿を消すのかなー
チベットの古い版木の販売
↓
https://www.kihachiantique.com/items/26327323
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