麻宮騎亜 日記

漫画家 麻宮騎亜の日記。仕事の連続の日々ですが、できるだけ更新したい。という希望。

Favorite Design3  ポルシェ(デザイン)のカート

2006年11月29日 03時43分39秒 | Favorite Design
 結構前のことですが、僕の車の主治医のところに、面白いものがありました。

 これはフロントエンブレムにもあるように、ポルシェ製のカートです。正確に言うと出来たばっかりの時のポルシェデザインの商品だそうで、ポルシェエンブレムの横に、当時のポルシェデザインのロゴシールがはってありました。
 聞けば、このH型のシャシーも強い剛性とねじれに対応している(当然ながら)考えられた上のものだということでした。ポルシェというと911のイメージが強いと思うのですが、実はレース活動にもフェラーリにまったく引けをとらないくらい精力的に行っていたわけで、当時のポルシェは、子供からカートを推奨して、モータースポーツ及びスポーツカーの発展を考えていたということだったらしく、それがこのポルシェデザインのカートに見ることが出来るそうです。

 ぱっと見た目赤に見えますが限りなくオレンジに近いです。ポルシェのレースの歴史の中で、オレンジという色は意外にも歴史が深い色なんですね。ル・マン24で活躍したマシンにはガルフカラー(ブルー&オレンジ)が塗られていて、最近では最新の997GT3RSのイメージカラーもオレンジでした。
 ここには手前に電動のフェラーリF1カートも飾ってあるのですが、ほとんどのお客さんがそっちの方ばっかりに目をやり、このポルシェ・カートにはまったく関心がない風だと、お店のメカニックの方は嘆いていました。

 この質実剛健さが、とてつもなくカッコイイように見えるのは、僕だけでしょうか?




柿とナイフ

2006年11月28日 11時35分41秒 | 日常あるいは平穏な日々
たまに編集さんが差し入れをしてくれることがあるが、それが男性、女性と傾向が別れていて面白い。よく女性の編集者さんで多いのは果物。

最近はスーパーやコンビニなどでもカットフルーツがあったりするんだけど、何故か女性の編集さんが差し入れしてくれる果物はカットしていない丸ごとが多い。果物は嬉しいがコレがなかなか難儀。(^^;)
自分で皮をむくなんて面倒くさいし、やったとしてもナイフじゃなくて皮むき機。あの100円ショップで売っているようなやつを使って、シャッ、シャッと削るんだけどなんか面倒だ。オマケに仕事を中断して、準備して、食べて、後片付けして・・・。意外と時間を食う。
冷蔵庫に入れていても、アシスタント君たちもなかなか手を出さなかったりしている。

先日、差し入れで柿とみかんをいただいた。みかんはあっという間に食べたが、柿はまた残っている。でもコレじゃいかんと思って、一つナイフで皮を剥く事にした。皮むき機は料理でも使うことが多くて、めんどくささが頂点だったからだ。(^^;)

皮をむいてみるとコレが意外と楽しかった。しかも結構うまく行ったので、調子に乗ってもう一個チャレンジ。剥きつつ一枚の皮で完結させることに集中してしまった。いや、楽しいコレ。果物の皮を剥く、しかも一枚のつながった皮の状態で完結させることの楽しさよ。いただいた柿は5個だったが、1日で全て皮を剥き、食べてしまった。こうなるとこの感覚を忘れないためにも、次に剥くものを検討してしまう。やっぱり大根の桂剥きにチャレンジするしかないか。(^^;)

案外集中力の鍛錬になるかもなぁと思いながら、なかなか仕事がはかどらないジレンマを感じている今日この頃なのだ。




Favorite Design 2 アレッシー レモンスクイーザー 「Juicy Salif」

2006年11月27日 04時12分50秒 | Favorite Design
Favorite Designの2つ目は、イタリアのキッチンウエアメーカー、アレッシー(ALESSI)のレモンスクイーザー、「Juicy Salif/ジューシーサリフ」です。コレってけっこう有名なので、見たことも、持っている方も多いかも。もうキッチンツールというよりは、アート・オブジェといっても良いほどのインパクト。




要はレモン搾り機なんですが、今までコレでレモンを絞ったことがありません。(^^;)完全にキッチンのオブジェです。上の部分にハーフカットしたレモンを、ぐいいいーっと回しながら絞ると、下の部分から果汁が落ちるというわけですね。(って説明の必要もないか)

やっぱりコレも共通しているところが、日常性を感じさせず、なおかつ機能的。デザインと言うもののある種の到達点を見る想いです。世界的デザイナー、フィリップ・スタルクが1990年に発表したものです。このフィリップ・スタルクは浅草/アサヒビール本社屋上の黄金オブジェ「フラムドール」のデザインをした方。
 このビルで、1997年に「電脳の市」という、当時としては初めての反射原稿とコンピューターの混合の原画展を開催しました。来場してくれた方々も、多いのではないでしょうか?この1997年の電脳の市は、僕にとってはとても思い出深いものでした。このはなしはまた後日。
 彼のデザインしたキッチンツールは、実用性としゃれた遊び心が満載。ニューヨーク近代美術館MoMAの永久コレクションにも選出されているそうです。

で、つぎがこれ。



黒いレモンスクイーザー。言っておきますが自分で塗ったわけではありません。ちゃんとしたアレッシーのモデルで、世界限定2000個だったか6000個だったかの品物です。(この辺があいまい)

キッチンツールとしてももちろんですが、リビングやオフィスのインテリアにも良いかもしれませんね。




昨日は病院の日 採血の日

2006年11月26日 05時47分55秒 | 日常あるいは平穏な日々
2ヶ月に1回の割合で病院に検診に行っている。
といっても暗い事ではなく、健康に生きていくためだ。
毎回、血液検査とお医者さんの検診で終了。結構大きい病院なので、待つのに大体1,2時間、検診自体は5分から10分程度で終わる。まあ、検診が長ければいいというものではないけど。

でもやっぱり最近は季節の変わり目の、特に秋から冬にかけての急激な気温の変化にはちょっと息苦しさを感じる。もうすっかり寒さには弱い体になってしまったんだなぁとつくづく思う。

子供の頃から注射は大嫌いで、今もやる採血も気持ちのいいものではない。幸い、今の病院の採血室のスタッフの方はみな上手く、「ちょっとチクッとしますよ」という言葉どおり、チクッとしかしない。

昔、別の病院で採血の時、血管が上手く見つからなかったのか、刺さらなかったのか、しばらく針が腕の中に入ったまま迷走をした。それでも血を抜こうとしているからシリンダーを引いているわけで、ずっと異様な痛みが腕を支配していたのだ。結局、血は一滴も抜かれなかったもんだから、そのまま針を抜いたら、ある意味真空状態にでもなっていたか、どうなんだかよくはわからないが、ものすごい激痛がして絶叫してしまったことがある。そりゃあものすごい痛みで、もう採血は中止。そこの病院にも行かなくなってしまった。

そういったトラウマが僕にはあるので、採血のたびにドキドキしてしまう。あんまりドキドキしちゃ、いけないんだが・・・。
だから僕はいつも採血室に入るときには、今日も血管が思いっきり浮き出て?針がさしやすいように。「おい、血管、浮き出るのかい、浮き出ないのかい、どっち何だい?うーきでる!」    と、アメリカに行ってしまった、なかやまきんにくんみたいなことを、そのたびに思うことにしているのだ。(^^;)




サイレントメビウス 劇場版DVDボックス 製作報告1

2006年11月25日 16時17分10秒 | Comic
↑ちなみに写真はサイレントメビウス TV版DVD BOX1

さて、サイレント劇場版も無事に決定し、一安心と思っているのもつかの間、考えたら時間がもうない。春に発売といっても年末年始をはさむことになるので、1ヶ月は作業時間がないものと考えていいのだ。

先日、DVDスタッフと今後の打ち合わせをする。1と2はもちろん、それに付随した形でいろいろなものもセットに含まれる模様。うーん、ここのところはなかなか発表できない。正式発表まで待って欲しい。 特典でブックレットをつけることになっているのだが、さてこの内容はどうしたものか。なぜなら、(1だけとはいえ)ムックは出ているし、しかもその内容もB4サイズの大型というサイズもあいまって、当時としても、今から見ても十二分の出来だと思っている。 完全版の担当編集が、コミックスの記事ページの編集作業が始まってから、「見たことがない」ということだったので、1冊進呈する。数日後、彼女からは「私の考えが甘かった」との電話をもらったのだ。

アレを超えるものは封入のブックレットでは無理だろう。設定資料を載せて、インタビューを載せて・・・なんて、ありがちなものは止めた方がいいのではないか。 ではどうするか。あの夏。2年にわたって繰り広げられたあの夏を、何とか呼び戻すことは出来ないのだろうか。そういうコンセプトで本を作ることに話を進めている。当時の写真、公開時のグッズ、イベントの模様、特典、・・・。オマケでもない、ただのブックレットでもない、当時の模様を再現するような内容の本を付けることが出来ればいいのだが・・・。




Favorite Design1 ダブルサンド・トースター

2006年11月24日 06時10分39秒 | Favorite Design
車や、自分の仕事のことばかりではなく、自分が持っているものや、街で見かけたもので、お気に入りのデザインのものをチョコチョコとアップして行こうかなと思います。(^^)プライベートでやっていたものをここに移しただけなんですが。(最初の3点のみ)

まず、最初はトースターです。イタリアの建築家 LUCA TRAZZI氏のデザイン。初めてこのフォルムを見たときから購入ボタンを押していました。ステンレス製。

左右の取っ手はそれぞれ引き出せるようになっていて、大雑把な網でパンを挟み込む感じになっています。コレではさんだままトースターに入れて、後は中央のタイマーを回すと、パンが焼きあがるという仕組み。焼きあがったら、この取っ手を引けばパンは取り出せるし、そのまま手をかけることなくお皿まで。クリップは二つに分離してパンを離します。 背面には引き出し式のパンくずをとるためのトレイもあります。中央の大きなダイアル、左右のインジケーターランプ、シルバーメッキのボディとぱっと見てトースターに見えないところがお気に入り。キッチンに置いていても生活臭を感じさせないところが素敵だと思います。 9800円。




石川賢先生 ありがとうございました。

2006年11月22日 21時32分42秒 | Comic
先週、漫画家の石川賢先生がお亡くなりになられたとの報を聞く。58歳という年齢はまだまだ若く、子供の当時から読み親しんできた身としては非常にショッキングだった。

僕は石川先生とは直接の面識はない。ただ子供の頃に目にした「ゲッターロボ」は、ある種のカルチャーショックといっても良いほどだった。テレビアニメとは趣を違えていたその内容とバイオレンス。確かの当時の永井豪先生を初めとしたダイナミックプロの作品は、そういった傾向が多かったが、特に石川先生のものは群を抜いていたように思う。顔の皮をはぐ描写は、いまだに心に残る。アニメ版とは違うゲッターロボの造詣。ゲッター線増幅炉を腹から取り出して敵を殲滅させるラストなど、そのマンガからは危険な香りが漂っていた。

子供の頃は正直言って、石川先生版のゲッターを読むのが怖かった。何かいけないものを見ているような錯覚に陥る。しかし読み続けてしまう。それは読んだものをひきつける・・・いや、引きずり込んでしまうマンガのパワーと説得力。魔力があったのではないかと思う。

この業界に入った頃、また石川マジックの虜になったことがあった。「魔界転生」そのコミックがそうさせた。その迫力と描写は、原作や映画も及ばぬ世界。当時はこのマンガが僕の手元にいつもあった。それくらい鮮烈で強烈だったのだ。
もしまだ読んだことのない方は、一読あれ。

今から6,7年ほど前、懇意にしていた編集がいた。今は袂を別ち、連絡も親交もまったくないが、その編集が石川先生やダイナミックプロとも面識とパイプがあるということで、僕に一つの話を持ってきたことがあった。それは石川先生との合作の企画だった。今でこそスーパーロボット大戦等のアンソロジーコミックもさして珍しくないが、当時はまだまれだったのだ。
内容は「ゲッターロボ対マジンガーZ」。石川先生がゲッター側を、僕がマジンガー側を描くという仕事だった。僕には断る理由もないし、マジンガーもゲッターも大好きで、それ以上に石川先生との合作なんて話だから天にも上がる気持ちで、ぜひやりたいとの返事をした。しかし、それが実現することはなかった。

もし実現していたらと思う。今となっては、もう、かなう術もない。

子供の頃から、マンガを読みふけり、原体験として味わったゲッターロボ。子供の頃のインパクトを受けて、今はこの世界にいる。本当にありがとうございました。石川賢先生。それ以外の言葉が見つかりません。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

最新のコンピューターも最良なのか?

2006年11月15日 18時22分22秒 | 日常あるいは平穏な日々
ポルシェを形容する言葉で、「最新のポルシェこそ、最良のポルシェである」というのがある。これは、ポルシェがイヤーモデルごとに改変、更新を繰り返し、常に新しいモデルこそがベストであるということの表れだ。 確かにポルシェは発表こそしない部分、発表した部分合わせての回収と更新を毎年のモデルごとに繰り返す。購入者はその買う時期のタイミングの見極めがいつも頭を悩ませることになる。

コレはコンピューターにも当てはまるのか。ただ、コンピューターの場合はハード環境は後から増設したり、ソフトに関してはバージョンアップを繰り返したりといろいろな方法が残っている。車に言い換えれば、アフターパーツでいろいろな部分を変えて行くやり方に似ている。でもコンピューターも結局は大きなモデルチェンジの時に、さて次に出るものは・・・と考えてしまう。

やっぱり同じなのかな。いや、コンピューターの方は新しいものに分があるような気がする。一番のコンピューターのパフォーマンスは処理速度の速さに尽きる。なので、昔の方が味わいがある、なんてことは思わないかもしれないし、僕も思ったことはない。最近MAC-PROに変えた話は前にしたけど、前に使っていたG4は、外付けハードディスクとして、第2の人生を歩むことになった。 実はi-bookがある。第2世代のグラファイト。でも今思うと結構重いし、処理速度は遅いし、使うこともほとんどない。会社の倉庫にはG3やその前のクアドラなんてものもある。考えるとMACユーザーは、MACコレクターにもなりがちなのかな?僕の場合、FXⅡから全てのモデルを買っているような気がする(G5は買わなかった。その頃にはカラーをコンピューターでやらなくなりつつあったので、スペック的には買い換える必要もなかったのだ)。僕の回りに聞いてみても、みな同じような答え。MACはそのデザインにおいても、秀逸でこの点だけは過去を振り返っても味がある。コンピューターで速度のパフォーマンス以外に、好きな点の一つだ。 やっぱりコンピューターは最新のものが良いらしい。早いもの。

そう考えると車はちょっと違うかな?早いだけが車のパフォーマンスではないからだ。ポルシェを例にとるなら、「最新のポルシェは最良のポルシェかもしれない。でも、決して最高のポルシェではない」のだから。 *誤解されないように言うと、最新が最高ではないといっているわけではない。なぜなら最高の車は、そのオーナーが決めることで、定義ではないからだ。





引き継がれるもの

2006年11月13日 00時46分48秒 | Cars
自分がとても大切にしているものがある。初めて手にして、ずっと長い時を一緒にすごし、色々な思い出も作った。そのものが無ければ会うことが無かった人たち。そう思うと、そのものがもっと好きになってくる。

でも、そうしてもやむにやまれぬ事情があって、それを手放さなければいけない時。そのつぎに思うことは、コレを次に引き継いでくれる人が、僕と同じかそれ以上・・・。いや、僕と同じではないにしろ愛情を持って接してくれるだろうかという不安にも似た期待。そんなことを考える。

それは車であっても、フィギュアであっても、本であっても・・・。特に車というものは擬人化して見てしまう事も多く、車との別れは切ない。次にこの車を所有する人はどんな人で、大事に乗ってくれるだろうか。
自分から遠ざかって行く車は、必ず後姿で、何かこちらに訴えてきているような気もする。

車を手にしたとき、「ずっとこの車と添い遂げるのか」と思うことがある。乗って好きになって行けばなおさらだ。僕は車を購入する時には、次に手放す時の事なんか微塵も考えない。でもいざ、そのときが来ると逆にいろいろなことを考える。

「彼女のカレラ」というマンガを描くにあたって、僕の中で一つの決まりごとがあった。といっても個人的な胸の中で決めることで、それは他人からしてみたら「?」が付くことが多い部類なのかもしれない。子供の頃、横断歩道を渡るとき絶対白い線しか踏まないとか、テレビで品川庄司の品川さんが、「電車に乗ったら、絶対手すりや吊り革にはつかまらない」といった感じなのかもしれない。

「自分の所有している車は漫画には出さない」というのが僕の中の決め事だった。それは出したらだめだとか、出さない方が良いとかそういった決まりごともなく、まったく根拠の無いことだ。ただ、出来る限り出てくる車は取材して描くと言う事を決めた。主人公「麗菜」のRSは、僕の乗っている車ではない。

麗菜のRSはちゃんと取材車両があり、しかも外装と内装はまったく別の車なのだ。自分の持っている車を描くということは、何故かやっちゃあいけないような気がしていた。しかしその誓いも単行本4巻にしてあっさりと破ってしまう。麗菜が借り受ける黄色いボクスターS。アレは紛れもなく自分の車で、漫画に出してしまった。しかも4巻のカバーにまで。4巻のカバーは色の配分上から、柑橘系の色を持ってくる必要があった。となると、林原のミニクーパー、ユリのミウラ、そして麗菜のボクスターの3つしか選択肢はない。1巻から3巻まで並べると、主人公の麗菜が1巻しか出ていないのは問題だなぁ、なんて思ってしまう。ということで麗菜を4巻の表紙に持ってくることにした。となると、やっぱりボクスターだ。しかも自分の。(^^;)

ボクスターは本当にいい車、いいポルシェだった。僕はボクスターが大好きだった。そんなに100%発揮できる腕は持っていなくても、好きであることに間違いはなかった。そのボクスターとも別れることになった。その僕が好きだったボクスターに感謝を込めて、マンガに出すことにした。この車は僕が購入して、一緒に喜怒哀楽を体験して、ここまで作り上げていった世界に1台の車なのだ。その思い出もあって、4巻は実に思い出深い。

この4巻の表紙を飾った、ボクスターSの次のオーナーになる人はどんな人だろうか。もし数多のドライバーがいる中で、その人が「彼女のカレラ」の読者・・・、いや、知っている人であったら、僕は凄く嬉しいのだ。(^^)