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旅日記

望洋−76(マ・元帥と幣原総理会談記録)

43.五大改革(続き)

43.3.会談記録(続き)

10月11日、マッカーサーは新任挨拶のために総司令部を訪れた幣原首相と会談し、五項目からなる指示・実施することを要求した。

会談では、先ずマッカーサーが、これから日本が行うべき、五つの改革を述べた。

それを受けて、幣原はマッカーサーの意見に対し次の様に答えた。

「マッカーサー元帥から承った意見は、あるものは組閣早々の閣議に於て既に考慮して決定しているものもある。

担当と閣僚と相談する必要のあるものもあるが、五項目を通し差当り実行不可能と認められるものが無く、安心している。

幾多の困難もあるが、日本政府としては、極力努力して実現する。

また、一旦引受けたることは、他日これを胡魔化して責任を逃れんとするが如き意志は毛頭無く、速に実行していく、堅き決意を有す。」

その会談要旨は次の通りである。

 

43.3.2.総理・マッカーサー会談要旨

<1頁・2頁(9頁中)、3頁以降略>

<幣原総理・マッカーサー元帥対談の簡約(一部省略)>

十月十一日午後五時総理大臣「マクアーサー」元帥を聯合軍司令部に往訪せらる。

先方は「サザランド」参謀長同席なりしか総理の座に着せらるるや否や先ず「マ」元帥に於て発言し、今日御面会の機会に先ず以て日本政府に希望することに付申上げ度し。

決して無理なることを期待し居るには非ざる積りなるも聞かるる貴下には或は「ハーシュ(厳しい)」に響くやも知れず。

然し若し無理又は実行不可能と考へらるることあらば忌憚なく御指摘ありたしと、述べ予て用意の書き物(別紙の通り)を読み上げたり。

之に対し総理より、
只今元帥の御意見として承りたる五項目中、あるものは組閣早々の閣議に於て既に考慮して決定せるものあり、担当の閣僚と相談の要はあるも五項目を通し、差当り実行全然不可能と認めらるるもの無く安心せる次第なり。


(婦人参政権について)
第一の婦人参政権の件は既に政府に於ては之が実施を決心し閣議に於て内定を見居れり。

選挙権の問題に付ては次の順序にて事を運ぶ予定なり。

即ち現議会は選挙後数年を経過し居り民意を反映し居るものなりや否や疑を有する向、鮮からざるに付、現在の民意を反映せしむる為解散に進みたし。

解散に当りては現行の選挙法を以てしては実際に選挙を行い得ざる節あり。

時日之を許さず当面の必要問題のみに付改正を加え、近々の臨時議会に提出し同意を得ればなるべく早く議会を解散し、之に依り選挙を行う考えなり。


(労働組合の組織化)
次に労働組合組織化の問題は、余が十数年前閣議に列し居りたる頃議に上りたることあるも、或る事情に依り行はれざりし問題なり。

今日に於て之が実現に非常なる困難ありとは考へざる次第なるも具体的には担当閣僚と相談を要すと考える。


(自由主義教育)
学校に於て自由主義的教育を施す様にしたしとの御希望の点に付ては之亦閣議に於て決定を見、政府は其の方針を昨日発表したる次第なり。

主義として政府に於て何等異議なき問題なり。


(圧制的諸制度の撤廃)
次に秘密審問及其の濫用に依り人民に恐怖の念を与えたる制度を廃止し之に代わうる公正なる制度正義を行う制度を以てせよとの御趣旨は当然のことなり具体的方法は当面の閣僚に考え貰う積りなるが方針其のものに付ては政府は之が実行を決意し居るものなり。


(経済の民主化)
日本の産業に付現行の独占的支配の行はるる事態を改むるを要すとの御趣旨に付ては如何なることを実際問題として考え居らるるや不明の節あり即ち現在の独占的支配なるものが我が国現行の法律制度の定むるところとして存在し居るものとは考えられず或は大工業家が自己の努力又は設備に依り事実問題として他の競争を許さざるものあるに依るものなるやも知れざるも之を如何に改正するや直接法律の規定する結果に非ざるものとすれば直ちに考え及ばざる次第なり。


(国民の住宅、食糧、衣料の問題)
一は今次戦争に於て日本の軍隊の完全なる敗北と文官官僚のへま続失に依り日本が今日の惨禍を招きしものなることに付ては国民全部が充分に之を認むる所なるも其の結果として多数の国民は国運の将来を悲観し自暴自棄に陥れるが、或は呆然自失の状況に在り精神的に沈淪の極に在る訳にて此の点、米国国民の如き戦勝国民と異る所あり之等の人々に対しては希望を将来に与えて奮発せしむる手段を講す可き所なるか彼等に奮発心を起さしむると言うも必ずしも容易ならざる次第なり。

二は物質的に見て生産原料窮乏の状況甚しく原料を如何に調達するか支払方法を如何にするかの難問あり、之が決定を見ずしては早急に事業を復活するも中途挫折することあるべしとし事業家も労働者も躊躇し居る事情も考慮せざる可らず。
然し何れにせよ本問題は政府としては黙視し得る所に非ず何等かの方途を講じて国民に奨励を与え「ユースフル・ワーク」に「フル・エンプロイメント」を用うる様極力努力する決心なり。

尚以上貴下の希望せらるる五項目全般に付日本側として困難は、あるも之が排除は不可能に非ずと見当を就け得るものと考へられ喜ばしき次第なり。

然し茲に一言したきは政府は一旦引受けたることは他日之を胡魔化して責任を逃れんとするが如き意志毛頭無く速に之を実行し行かんとする堅き決意を有す。

(民主化について)
民主主義自由主義の適用は各国夫々異る所ありと考え、例えば米国の「デモクラシー」は英国の「デモクラシー」と異れり。

「ソビエット」が主張する「デモクラシー」は更に異れり。

日本に於て「デモクラシー」が成功する以上は日本国民の長き期間置かれ来りたる環境に適合するものならざる可らず。

主義の目的とする所は民意の反映に在り目的は此処に在るも形成は日本的「デモクラシー」となるものと考える。

と述べ終るや「マクアーサー」は之に対し、右は至極尤ものことなり、貴下等が嘗て局に当り居られたる時代の状況に付ては自分も同様の情報を与えられ居り、之が「インターラプト」せられさりしならば今日の事態には立ち至らざりしなるべし此の点よりするも新政の成功を望むものなり、と述べ会談を終えたり。

(以上)

 

43.4.さらなる指令

さらに、GHQは次の指令を出した。

(教職追放)

10月4日の「人権指令」により、警察首脳陣と特高警察官吏の追放を指令したが、さらに10月22日に「日本の教育制度に対する管理政策」及び同年10月30日の「教育及び教育関係官の調査、除外、認可に関する件」で軍国主義的又は極端な国家主義的な教職員の追放を指令した。

(軍国主義や極端な国家主義的思想の教育、軍事教育の禁止)

10月22日に発行した、「日本の教育制度に対する管理政策」で、GHQは軍国主義的・国家主義的な教育の禁止を命令した。

(神道を国家から分離し、学校での神道教育の排除)

12月15日、「国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督並に弘布の廃止に関する件」の指令を出した。

これにより国家と宗教の分離と公的教育機関における神道の禁止を強調した。

(修身・日本歴史及び地理の授業の停止と教科書の回収)

12月31日に「修身、日本歴史及び地理停止に関する件」の指令をだした。

かつての日本が軍国主義を教えこんでいた修身・日本歴史・地理の教育をGHQの許可があるまで教育現場で教えることを即禁止した。

 

以上の4件は四大教育改革と呼ばれている。

 

(公職追放)

昭和21年(1946年)1月4日、GHQから日本政府に対して、「ある種類の政党、協会、結社その他の団体の廃止」「好ましくない人物の公職よりの除去」が発令された。

後者では、戦争犯罪人、陸海職業軍人、極端な国家主義者など7つの項目を挙げて、該当する人物の公職からの罷免、官職からの排除を指令している。

 

このように、GHQは日本の教育の柱を根こそぎ破壊した。

普通は、他国の文化、宗教、教育への干渉はたとえ占領国といえども許されないが、それを日本に対して行ったのである。

これは、戦時中に欧米諸国を非常に苦しめた、大日本帝国が再興しないように民族を骨抜きにする必要があったからである。

そして、「皇室」「国体」「天皇」「神道」「日本精神」「修身」といった表題・テーマの刊行物は焚書の対象となった。

小柄な日本人が世界と渡り合えたのは軍国主義以外に、①驚くほどの集団行動が取れたこと ②神道や武士道による礼儀や忠誠心 ③識字率も高く個人の教養が高かったこと、なども原因と考え、そこを根絶やす必要性を感じたと思われる。 

この結果「愛国心」、「義侠心」、「神道・仏教などの日本の伝統」、「家族制度」などに価値を見出すことがなくなり、薄れていった。

日本はGHQのこの狙いから、未だ完全には解放されていない。

 

他に

昭和20年10月12日、GHQは戦争記録調査の指示を発令した。

これは、恐らく後日行われる軍事裁判にむけるものであったと思われる。

これらについては後で述べる。

 

<続く>

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