堪らない寂寥感とファミレスでの一杯のHARBAL TEA～僕はオタクの「飛行機男」

　真夜中の空港で、深夜便をひとりで待つ。

　シンガポールの巨大なチャンギ空港も、人の数がめっきり減り、華やかな免税店も、その多くが明かりを消したり、シャッターを閉めたりする。動く歩道も唸りを止めて休養に入る。

　ライトが落ちた待合ラウンジでひとり搭乗時間を待つ間に、とてつもない寂寥感が自分を襲うことが最近、たまにある。
　勿論、ラウンジに人が居ても、それは袖触れることさえない他人だ。
　異邦人の自分がそこには居る。

　これから自分はひとり漆黒の空へと飛び立つ。
　真っ黒な空の中へ、飛行機は消えて行ってしまうのではないか？
　ひとり僕を乗せて。

　このBLOGで友人のことを書いても、彼ら、彼女らとは時々点で交わるに過ぎない。
　コジャレたことを書いても、実は優雅そうな表層を見せているだけで、水面下では溺れないように恐怖と戦いながら必死で足をもがいている。
　僕はひとりだ。
　僕はコドクだ。

　いつしか自分を忘れていた。搭乗時間が来て、声高で僕の名前をアナウンスしている。まるで騒ぎ立てるような大声で、僕の名前が空虚な空港ロビーに響き渡る。重いOFFERMANNのソフト・アタッシュケースを抱えながらゲートへ走る。

　01時15分シンガポール発、中部国際空港行きの飛行機は僕のせいで少し出発が遅れた。

　飛行機のシートに身を投げて、ブランケットにくるまっても眠気は訪れない。
　VIDEOを見る。
　「電車男」映画版をやっているではないか。

　中谷美紀のエルメスが良い。中谷美紀が良いのでなく、映画の中のエルメスという女性が素晴らしく良い。
　天使のように優しい女性だ。

　エルメスの優しさが、ささくれた僕の心を癒してくれる。
　僕は、オタクの「飛行機男」だ--------!!!!

08:15分、予定時間きっちりに飛行機は到着した。
　胃が痛い。
　洗面所で歯を磨き、顔を洗っても、前日から着替えしていないので、何となく気持ちが悪い。

　この世にエルメスは居ない。
　でも、友人に電話した。

　忙しいけど、出てきてくれるそうだ。
　友人の家の近くのファミレスで待ち合わせをした。

　寝起きの（？）顔を隠すためにその友人は淡い色のサングラスをかけてきた。
　たわいのない話をする。

　胃が痛いけど、すこしお腹が空いたので、マカロニ・グラタンを少し食べた。
　その後で、暖かいHERBAL　TEAを飲んだ。

　友人の話と、暖かいHERBAL TEAが僕の背中に張り付いた孤独を溶かしていった。