「おねしょなんてしたくないもん! で、でも……」
勘太の心の中では、おねしょしては佐次郎たちに見られた時のことを思い起こしています。その度に、なみだを流してはある言葉をつぶやいています。
「父ちゃん、母ちゃん……」
この世にいない父母のことを口にすると、はずかしい顔つきで腹掛けの下をおさえています。勘太はおねしょがようやく治った時に、流行り病で父母がそろってなくなってしまいました。
計り知れない悲しみがおそった勘太は、ふたたびおふとんにおねしょをするようになりました。
「あ~あ、またやっちゃった……」
かけぶとんをめくると、勘太はいつものように顔を赤らめてモジモジしています。よく見ると、そこにはやってしまったばかりのおねしょぶとんがあります。