次の日、お寺の庭では勘太が物ほしのとなりでしょんぼりしています。
「あ~あ、またやっちゃった……」
腹掛けの下を両手でおさえながらはずかしがる勘太の横には、大きくえがかれたおねしょぶとんがほされています。
勘太のそばには、お千代が腹掛けを右手で持ちながらやってきました。その腹掛けは、勘太が夜中にやってしまったおねしょでぬれています。
「あらあら、夜中に便所へ行くことができなかったの?」
「う、うん……。だって、化け物がこわくて行けなかったんだもん……」
おねしょの言いわけをする勘太に、お千代はやさしい顔つきでこう言いました。
「夜中でも便所に行けるようにがんばろうね」
お千代が口にした言葉の意味がどんなものかは、勘太もよく知っています。でも、お化けが出るかもしれない暗い時間に便所へ行くことに、心の中ではいまだにためらっているようです。