イチョウ;桐一葉;ひと葉:一葉;一葉落つ;桐の葉落っ;桐葉落っ;桐の葉落っ;桐散る;一葉の秋;桐の秋。桐の葉が落ちるとき秋の訪れを感じる。中国前漢の『准南子』に「一葉落鶴を見て歳のまさに暮れれんとするを知る」、語句がある。これは何の木の葉か知れないが、日本では桐や梧桐の落葉をさすと定まった。桐の葉に当たる雨や風の音、桐の落葉の音に秋を感じる和歌の伝統を受け継いだ季語である。大きな桐の葉が一枚ずつ散る実感が伝わる。ゆるやかに落ちるさまや、地に横たはるその質感をいかして詠みたい。「よるべをいつ一葉に虫の旅寝して 芭蕉」「水の蛛一葉にちかくおよぎ寄る 其 角」「石塔をなでては休む一葉かな 蘭 雪」「たばこよりはかなき桐の一葉かな 支 考」「在りしあ世のままや机にちる一葉 蝶 夢」「つりがねの肩におもたき一葉かな」「蜘の糸ちぎれて桐の一葉かな 凡 菫」「夕暮れやひざをいだけば叉一葉 一 茶」「今朝見れば淋しかりし夜の間の一葉かな 藤野古白」「桐一葉日当たりながら落ちにけり 高浜虚子」「桐一葉尺すおとりの真暗がり 飯田蛇忽」「桐植ゑて祖先は遠き一葉かな 山口青邨」「静かなる午前を了へぬ桐一葉 加藤楸邨」「桐一葉落ちたる影を置きにけり 清崎敏郎」「一葉落つ何か流れる身のほより 鷲谷七菜子」「頓首と書き雅兄と書けば桐一葉 高柳重信」「夜の湖の暗きを流れ桐一葉 波多野爽波」「桐一葉緩急おのずからありぬ 茂 圭一郎」「桐一葉ふと好日を怖れけり 豊長みのる」「散りいそぐ一葉を惜しみ栞とす 山口百桑」「桐一葉漂ひし身の月日かな 坂井とみ子」「城跡やひろびろとして一葉落つ 長岡光風」「桐一葉薬信じて日をつなぐ 相田ふみ子」「老いもまた未知との出合い桐一葉 富田昌宏」「魚雷見て誰も無口や桐一葉 高妻津弥子」「倒立の少年の影桐一葉 西山美」。(青空に桐の一葉は輝けり ケイスケ)。