まず尿素の人工合成により、有機物の自然生成が検証された。途中を省いて、次にコアセルベートやミクロスフォアの生成により、非核原細胞の自然生成が検証された。さらに途中を省いて、プリオンの発見により、分裂する非核細胞の自然存在が確認された。
この間に核酸構造の解明があり、一頃はウィルスから単細胞生物への進化仮説もあった。現状では単細胞生物が退化してウィルスになったとみなされている。理由は、ウィルスは一種の寄生虫であり、宿主より先に存在できないからである。
しかし同じ理屈は、プリオンにも該当する可能性がある。とはいえプリオンは環境対応能力の個体差が大きいので、単細胞生物よりはるかに過酷な環境に対する生存可能性が高い。つまりミクロスフォアがプリオンになった可能性がある。
ちなみに現存の単細胞生物は全て、多細胞生物の退化版である。単細胞生物の各構成部分は、元々別の細胞だったそうである。語の意味に即した単細胞生物の自然存在は、確認されていない。最初の単細胞生物は、太古の早い時期に死滅したものと推測される。
現状の最大の謎は、非核原細胞が核酸を取り込んだ経緯である。ミクロスフォアは、細胞膜をもち、新陳代謝をし、細胞分裂を行う。しかしその細胞分裂は表面張力の限界で、本体が分裂するだけの仕組みである。つまりラーメンに浮かぶ油の泡が、かき混ぜると小さな泡に分裂するのと同じである。さらに問題なのは、分裂と新陳代謝を繰り返すと、ミクロスフォアが死んでしまうことである。ミクロスフォアの細胞膜が、細胞分裂や新陳代謝による肥大化に対応できないためである。この問題点をプリオンがどのように対処しているのかは、ニュースにならないので、不明である。もちろん簡単なのは、現存の細胞と同様に、非核原細胞が核酸を利用する形で、細胞の永久繁殖を説明することである。
はっきりしているのは、非核原細胞が生き残るために、まだクリアすべき謎の事情が存在することである。
現状では、核酸の代替構造が非核原細胞による核酸取り込み以前に存在した、または核酸が非核原細胞の進化と別ルートで進化して両者が結合した、などの仮説が考えられる。ただし後者の仮説は、ウィルスからの進化説の復刻版なので、タンパク質以外にも寄生可能なウィルスが発見されない限り、主流にならないと推測される。
(2011/01/07)
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