過ぎたるはなほ及ばざるが如し

何事もほどほどに、やり過ぎる事は好くないという、茶柱のブログ。
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グランドマスター~一代宗師~(映画)

2013年06月05日 14時27分50秒 | 日々のあれこれ

映画「グランドマスター」をみた。

グランドマスターというタイトルはさておき,「一代宗師」というのは中国武術「詠春拳」の達人「葉問(イップ・マン)」の二つ名である。「誰?」という方も多いだろうが,アクションスター,ブルース・リーの師匠と言えば解るだろうか。
ブルースはこの葉問に弟子入りして才能を花開かせ,アメリカでスターの座を射止めたのである。

さて,映画はこの葉問の一代宗師と呼ばれた全盛期から抗日戦の時代を経て,香港でブルースを弟子とするまでが描かれている。
 

 1936年,佛山で武術家として知られた葉問(トニー・レオン)の元に,北の宗師宮宝森(ゴン・バオセン,ワン・チンシアン)がやってくる。宮の目的は北と南の武術を統合させ,国民を挙げて侵攻してくる諸外国に当たることだった。
葉はそこで宮に認められ,宗師として宮の後継とされた。だが,宮の敗北を受け入れられない娘,若梅(ゴン・ルオメイ,チャン・ツィイー)は,葉と手合わせを行い勝ちをおさめる。その戦いの中,若梅は葉に惹かれるものを感じていた。それはまた,葉も同じであった。

一番弟子の馬三(マー・サン,マックス・チャン),若梅とともに北へと帰る宮だったが,自分を後継者としないことに不服であった馬三に殺されてしまった。若梅は父の仇を討たんとするが,日本軍に取り入り権力を握った馬三に対して不利は否めなかった。

一方,宮から依頼された「拳術の南北統一」を果たすため,北へ向かわんとする葉問だが,時代がそれを許さなかった。日本軍の侵攻で屋敷は接収され,北へ旅するどころではなくなっていたのである。
戦禍は拡大の一途をたどり,困窮の中次女を失ってしまう葉問。
それでもなお「日本の米は食わない」と中国人の矜恃を保っていた。

その頃,若梅は南への汽車に乗っていた。父の仇を討ち,南への逃亡の旅であったが,その汽車の中で同じように軍に追われていた一線天(カミソリ,チャン・チェン)と会う。恋人を装い追っ手を逃れた二人。
汽車はやがて香港へとたどり着く。

10年の月日が経った。同じように香港へと流れ着いていた葉問は,若梅と再開した。ホテルの用心棒と武術教師の職を得た葉問,そして医師として開業した若梅,追っ手を倒して自由の身となった一線天は床屋を開業する。

それぞれが新しい生活を始めようとしていた中,中国は政変を経て共産党政権となり,香港との交流はたたれてしまった。
故郷に妻子を残してきた葉問は帰るすべを失い,若梅は10年前の傷が元で息を引き取る。

希望を失ったかに見えた葉問だが,彼の武術館に才能ある少年が入門した。後のブルース・リーであった。


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と,このようなストーリーなのだが,ざーっと書いてもこの通り。とにかく「話が整理されていない」為にきわめて解りにくい。まして,曰わくありげに登場した一線天が,全く主人公と接点を持たないというのはいかがなものだろうか?
※ラストには一線天と主人公の対決が予定され,撮影まで行われたそうだが完成版ではカットされている。 
http://youtu.be/FAvDD4mxBT8 

そうなるとみるべきものは葉問と若梅のラブロマンスか,葉問の人生かと言うことになるがラブロマンスはそれほど盛り上がらない,人生を描くにはややアクションが多すぎであまりみるべきもののない映画になってしまっている。

ただ,予告映像にもあるように,トニー・レオンは細かな手技を能くして接近戦を得意とする詠春拳,チャン・ツィイーは円の動きで正面を避け側面から攻撃する八卦掌,チャン・チェンは一撃の強さに特徴があり接近戦を得意とする八極拳,マックス・チャンは正面からの突進を得意とする形意拳とそれぞれの武術を修行しており,とてもよい動きを見せてくれている。
惜しいのはこれらの特徴ある門派が,十分に描き切れているとは言えない映像だ。

いろいろな事情でカットされてしまった対決シーンなのだろうが,いつかの機会に完全版として見る機会があればよいと思わずにいられない。

 

全くの余談ではあるが,八卦掌の実在の伝人には「宮宝田」という方がいたり,八極拳の伝人「劉雲樵」が,一線天のような国民党軍の特殊部隊にいたという史実もある。
映画で少し触れられた「中華武士会」「南京中央国術館」なども実在していたので近代中国武術史を知っていると,ちょっと楽しい。

逆に,実在の武術家,史実を積み重ねて作った大河ドラマ的作品としてもよかったのではないだろうかとつい思ってしまう。

残念な作品であった。