多摩川サイクリングロードの車窓から

しまりんは本当にクライマーなのか?

 先日のゆるキャン△聖地巡礼ライド本栖みちを登り、しまりんのヒルクライム能力はかなり高いと結論付けましたが、一つ疑問が生じました。



 しまりんが登ったこの道は確かに本格的なヒルクライムルートでしたが、しょせんは俺の感想に過ぎません。やはりここは数字の裏付けが欲しい。資料にできる映像は限られていますが、何とか検証していきたいと思います。



 しまりんのヒルクライム能力を推定するための資料は、第一話冒頭のこのシーン。



 3秒程度の短いシーンですが、これから速度・傾斜などを特定します。



 1.走行速度
 上の写真のちょうど2秒後のスクリーンショットがこの写真。



 フロントホイールのハブとガードレールを基準にすると、この2秒間で進んだ距離はこうなります。



 これだけでは何m進んだのかわかりませんが、しまりんの自転車を基準にして長さを出すことができます。

 漫画・アニメ版では、しまりんの自転車の車種は完全な特定には至らなかったようです。これはパニアバッグでリアホイール周辺が隠れているためですが、ドラマ版では候補の一つに挙げられていたDAHON Speed Falcoが使われていますので、これを基準にします。


 Speed Falcoのリム外径は451mm、タイヤは28cなので、タイヤ外周の直径は507mm。これを基準にすると、しまりんが2秒間で進んだ距離は約2.8mとなり、時速にすると5km/hとなります。



 2.道路の斜度


 これは画像の傾斜を単純に測定し、3.5%となりました。

 3.5%で5km/hか、思ったより・・・


 ちなみに映像ではペダルを一回転させるのに1.7秒かかっており、これはケイデンスに直すと35rpmに相当します。Speed Falcoのクランクは53T、タイヤ外周直径が507mm。リアの歯数を32と推定するとこの式が成立します。



 しまりんの推定速度は5km/h。計算では5.5km/hですがこれくらいは誤差と見ていいでしょう。

 Speed Falcoのカセットは11-32Tなので、しまりんは3.5%の緩斜面ですでに一番軽いギアを使っていることになります。今後出てくる8%ゾーンをまともに登れたんだろうか?



3.重量
 重量については、自転車・体重・荷物の3つに分けて考察します。


 a.自転車
 自転車はDAHON Speed Falcoであり、公式ページより12kgです。


 b.しまりんの体重
 公式な体重の設定は無い(らしい)ので、これが一番難しい。そこで身長から推定する方法をとります。


 この設定資料によれば、しまりんの身長は145㎝よりやや低いくらい。142cmくらいでしょうか。
 こうしてみると主要キャラ全員小さいな、あおいはもう少し高いイメージがあったのですが。

 身長から体重を割り出す方法としてはBMIを用います。
 BMIはボディマス指数と言って体重と身長から算出される肥満度を表す指数で、
 身長 x 身長 x BMI=体重 
 としてBMIが22が適正体重、18.5以下だと痩せ型、とされます。

 しまりんの体型はスリムではあるが、そこまで痩せているわけでもありません。BMIを20と決め打ちし、体重は40kgとします。


この体型だともう少し軽いかも?



 c.荷物
 しまりんのキャンプ道具については考察記事がいくつもあり、今回はここを参考にさせていただきました。

 ゆるキャン△でりんちゃんが使っている道具の総額が、16万円超えだった。



 第一話で確認されたアイテムをまとめたのがこの表。重量は推定もありますが、そう外していないと思います。



 作中では確認できませんが、他にも飲み物や予備のガス缶はあるだろうし、女の子のお泊りキャンプだから着替えや化粧品も持ってるでしょう。なんやかんや全部合わせて、荷物の総重量は15kgと推定します。


 以上より、自転車・体重・荷物を全部合わせた総重量は67kgとします。



4.しまりんをロードに乗せてみる
 それではしまりんがロードバイクに乗ったらどうなるか?
 まず大きく変わるのは重量。自転車本体・ボトル・サドルバッグなどを合わせて10㎏とすると、体重と合わせた総重量は50kgとなります。

 作中での総重量は67㎏なので、ロードに乗った時の推定速度はこうなります。



 ただし、この数字は重量しか考慮していません。ミニベロからロードに乗り換えた場合の効果はそれだけではなく、ポジションの適正化・ホイールの違いによる転がりの改善・ビンディングペダルの使用といった効果が望めます。特にヒルクライムではビンディングペダルによる足元の安定は大きな効果があります。

 この辺り全部合わせれば1.5倍くらいスピード出るんじゃない?ということで、しまりんがロードに乗った時の推定速度を6.7km/hの1.5倍、10km/hとします。



5.しまりんの本気はどれくらい?
 今まで計算してきた速度は作中の登坂速度を基準にしてきましたが、しまりんは明らかに余裕を残して登っています。



 ではしまりんが全力でアタックすればどれくらいで登れるのか?

 映像の息遣いなどから、大体FTPの75%くらいじゃないかな?と予想しました。その場合、FTP100%を出した場合の速度はこうなります。



 13.3km/h3.5%の坂を登るのであれば、一時間当たりの獲得標高は

 となり、465m/h

 しまりんがヤビツ峠を登った場合の推定タイムは、標高差は650mくらいなので、

 よって1時間24分

 さらに富士ヒルに出た場合はヤビツ2倍の法則より、2時間48分と推定されます。



 聖地巡礼ライドでの感想に反し、浮かび上がってきたのは意外と普通の女子高生の姿でした。
 特に練習もしていない女子高生のタイムとしては水準以上じゃないかと思えますが、ヒルクライム女王の座はちょっとばかり遠そうです。第四話でスクーターに乗り換えたのも、やはり自転車で遠出するのは辛かったのでしょう。



 しかし謎は残ります。本栖みちの終盤は7~8%の傾斜が続き、休むところの少ない厳しいルート。ここをしまりんはどうやって登ったのか?
 映像に出ていないだけで押して歩いたのかもしれませんが、そんな目に遭ったら懲りてしまいそうなもの。にもかかわらず、彼女は本栖湖畔のキャンプ場を贔屓にしている様子。これがどうにも解せません。

 大変な思いをして登ることに意義を見出しているとすれば、それはそれでクライマーの資質がありそうですけども。

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