小説「目覚める人・日蓮の弟子たち」

小説「目覚める人・日蓮の弟子たち」の連載と、上場投信日興225の勉強会をします。

小説「目覚める人・日蓮と弟子たち」十

2010-07-12 | 「目覚める人・日蓮の弟子たち」
 北条小源太 十

「それはありがたい。おって使いの者をよこすのでその節は頼みもう
す。ほかに用むきもあるので今日はこれにて失礼しよう」

と小源太が立ち上がろうとするのを三郎はあわてて止めた。

「との、幕府の動きにつきましては、今日に今日のことですから平の
頼綱どのの動きもないようでしたが、変わった動きがあれば私のほう
からお知らせします。

 ところでとの、私が以前いました京都から珍しい酒が届いておりま
す。
お差支えなければご一献差し上げたいと思いますが」

「ほう、酒には目がないので、それに京の酒とは珍しい。
暗くなるのを待って飛び出してきたので、いささか腹もすいてきた。
ご馳走になろうかのう。
それに大学どのに頼みがあるのだが、供の者も腹をすかせていようか
ら湯づけでも振舞ってやってくれぬか」

「承知しております。家内に申し付けていますので馬の世話がすみま
したら、あちらで夕餉を差し上げるよう手配しております」 

 「それはお気遣いありがたい。大学どのは、長らく京にお住まいだ
ったから、京の様子もよくお分かりだろう。京の話を肴に上方の酒を
馳走になろうか」

と言って小源太は座り直した。

大学三郎能本(よしもと)は、頼朝によって亡ぼされた比企能員(ひ
きよしかず)の子で、比企家没落後は京都に逃れて学問に励み、今は
小源太の推挙もあって幕府に用いられ儒官として仕えていた。

続く