建物(建築)に由来する言葉 ― 10
近頃、建物の色々な部分の名称や、建物に由来する言葉を知らない人が多くなったそうなので、思いつくままに、書いてみます。
今回は「欄間(らんま)」です。
「欄間」とは、日本家屋の部屋内外または部屋境の鴨居(かもい)又は内法長押(うちのりなげし)と天井との間の小壁に設ける採光および換気(通風)等を目的とした開口部のことを言います。(写真参照)
欄間は・採光・換気の目的の他に、部屋と部屋、部屋と縁側、縁側と外部とのあいだの連続性を感じさせるための、開口部に格子組みや透かしの技法を使った意匠性の高い装置です。
欄間はその形態(とり方)や種類は非常に多く、小壁に水平の開口を設けたもの、また、小壁に欄間敷居と欄間鴨居を設けたものが有り、それぞれに様々な意匠を凝らしています。
そして、設置する場所によって名称と意匠がかわります。
*「座敷と座敷の境」の小壁に設けたものを「間超欄間(まごしらんま)」または「間仕切欄間」と言い、ここに用いるものは「筬(おさ)欄間」「彫刻欄間」「透かし彫り欄間」「組子欄間」「板欄間」「釣襖」「竹の節欄間」およびそれらを組み合わせもの等で、たくさんの意匠が伝えられています(私の手持ちの本にも600を超える雛形があります)
*「座敷と縁側または廊下の境」の小壁に設けたものを「明り欄間」と言い、通常は紙貼りの小障子を引違にし、又は一本引き(これを掛鞘(かけざや)欄間と言う)にする、あるいは掛障子とする事もあります。
*「縁側と外部との境」の小壁に設けたものを、「縁側欄間」又は「縁先欄間」あるいは「鞘欄間(さやらんま)」と言い、昔は紙貼障子か板の無双窓にしていましたが、現在では、当然硝子障子を入れます。
*「床の間の書院(付け書院)」につける欄間を「書院欄間」と言います。
※「筬欄間」正式な座敷に限って用いられるもので、細い木を竪格子に組んだものです、現在では「千本格子」とも呼ばれます。
※「彫刻欄間」伝統的な独特の欄間彫刻模様で、風景・植物・花鳥・人物などが両面に浮き出し彫りにされているものです。
※「透かし彫り欄間」透かし板欄間・透かし欄間とも言い、厚さ12㎜くらいの板に、遠州・丁子(ちょうじ)・七宝・瓢(ひさご)・唐花・踊り菊・藤花
・兎形などを透かしに切り抜いたものです。
※「組子欄間」緻密な組子で模様を組んだもので、模様には、菱組・桝組・麻の葉組・亀甲・七宝組・青海波・篭目組などなど、非常多くの意匠が有ります。
※「板欄間」板だけを入れたもの、板を組み入れたもの、透かし彫りが若干施されたもの、象嵌(ぞうがん)などが用いられたものなどがありまあす。
※「釣り襖」欄間の空間に襖を吊ったものです。
※「竹の節欄間」竹を図案化した柱に細い無目をかけわたし、原則的には筋違(すじかい)を2本ずつたすき入れたものを言います。
添付の写真は「旧伊藤伝右衛門」邸の欄間です(極一部ですが)