君はいつも笑っていた。
君は太陽のような人で、
いつも周りには人が居た。
そしてよくだから同時に君は妬まれていた。
君はとても眩しいから、
その眩しさに心憧れて、だから素直に友達になりたいと望む者もいれば、
その眩しさが心に痛くって、だから妬まずにはをられない人も居たんだ。
だけど君はどんな人にも優しく笑っていた。
その笑みは太陽の笑み。
周りの者にはきっと、北風と太陽の太陽のような穏やかで温かい笑みに見えていただろう。
でも僕には君の笑みが冬の太陽のような笑みに見えていた。
とても綺麗だけど、とても冷たい、触れると切れそうな笑み。
ああ、この人も心寂しい人なんだってわかった。
哀しい人。
君が周りに見せる笑みは作り物の笑み。
本当は君は優しい人じゃない。
その笑みは周りなんか本当はどうでもいい笑みだよね?
どうでもいいから、周りに微笑みかけられる。
君の事をそう勘違いしていた。
君が本当に周りの人間に微笑んでいたなんて。
優しくしていたなんて。
周りの人間なんか君を利用する事しか考えていないのに。
君に優しくされて、どれだけ嬉しい声をかけてもらったって、
何も感謝なんかしないのに。
ほかっとけば、
無視すればいいのに。
他の奴の苦しみなんか背負わなければいいのに。
誰にも感謝なんかされない。
寂しくなるだけだ。
自分が、ぞんざいに扱われているのを何よりも心に感じさせられて。
ぞんざいに扱われた?
君はそう言って、微笑んでくれた。
雪が太陽に溶けていくようだった。
周りの言葉や目なんか気にしなくてもいいんだよ、って君は笑った。
隣の芝を妬んだってしょうがないでしょう、って君は笑った。
他人の土俵で相撲取ってたら疲れちゃうよ。自分の土俵で相撲を精一杯取ればいいんだよ。君はそう笑って、頭を撫でてくれた。
いつも思っていた。
どれだけ子どものように感情のままに泣けたら嬉しいだろうってずっと思っていた。
でも泣けない。
他人に弱みを見せれば、そこにつけこまれるから。
でも君の前でなら、泣けた。
誰よりも素直に君の前でなら安心して泣けるから。
君は優しいから。
優しい人は不幸。
こうやってその優しさを、利用されるから。
背負わされるから。
頼られるから。
ごめん。弱虫で…。
君の心は薄くなっていく。
表と裏の境界線が無くなっていく。
それが優しい君の不幸。
そして薄い薄い境界線の無い、表も裏も無い君の心は、それでもまだその厚みを削って、君は笑う。
君の優しさが哀しいから、僕は泣いた。
でも君の優しさが心地良いから、君の隣に居たいと望む。
だから僕も一緒。
君の心を削っていく。
薄くなっていく君の優しい心は、君の隣だから幸せな僕を映して、でも君は幸せ?
幸せだよ。
君の笑顔が私の正しさを教えてくれるから。
だから私は君の笑顔に自分を誇れるの。
だから僕は言う。
なら僕は笑うから、今度は君が泣いてと。
優しくても見返りは求めない。本当に君は優しいから。無償の愛。
でもだからって、君が傷つかなかった訳ではないだろう?
誰にでも優しく出来る心はだけど、誰の心にでも共振できるほどに繊細で、心弱くって、君はいつも、君に優しくしてもらって、だけどお礼も出来ないような人たちに泣いてきたんだろう?
だから僕は、本当はとても泣き虫で弱い君に笑うから、君は泣いて。
やっぱりとても同じように弱虫で泣き虫な僕に、君がいつも笑いかけてくれたように、君も泣いて。
僕は笑うから。泣いている君に。
だけど君は笑った。
ありがとうって。
僕は苦笑して、抱きしめる。君を。
これで君の泣き顔は見えないよ、そう言ったら、君は泣き笑いの声で言った。
泣かない、と。
でも抱きしめてて、って。
だから僕は言った。離すよ、って。
そしたらそれは嫌だな、と君はそう呟いて笑った。
怖かった?
泣いたら、それまでの事が全て偽善になって、見返りを求めた行為のようになってしまう、のが………
大丈夫。僕は君の味方だよ。
偽善だって優しくなければやれない。
本当に見返りだけを求めていたのなら、君は笑ってはいない。
僕は君をこうして抱きしめてはいない。
他の誰が君を責めようが、僕はいつまでだって君の味方だから、だから泣いていいんだよ。
心優しく、弱き人よ。
弱いから僕らは共に居るんだ。
弱いから僕は君を求めるんだ。君の温もりに包まれて、眠る事を望むんだ。
そうしたら心がやさしくなれるから。がんばれるから。立ち上がって、歩いていけるから。
だから君も一緒。
泣いていいんだよ。
そうしたら僕が泣いて空っぽになった君の心に、温もりをつめるから。
大丈夫。僕は君を見ていて、知っているから。わかっているから。共に居たいと望むから。
嫌いにならないから。
見返りを求め合おう。
僕は君を愛すから、
君も僕が愛した分だけ愛して。
僕も君が僕を愛してくれた分だけ、君を愛すから。
重ねた唇から注ぎ込んだぬくもりの分だけ、君は泣いた。
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