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珈琲ひらり

熱い珈琲、もしくは冷珈なんかを飲む片手間に読めるようなそんな文章をお楽しみください。

お姫様にキスされても

2013年06月09日 | 降る雨のウタ


 
 僕は君に一目惚れだった。

 あの日、席にひとり座る君を見つけた時に、まさに僕は君に心を奪われたんだ。

 ああ、好きだな、本当に君の事を僕は何も知らないのに、心から君の事をそう思えたんだ。

 つまらない、ただただ退屈に流れていくばかりの日々が、君に恋をして、楽しくて、幸せで、それでいて、同じくらいに苦しい日々に変わった。

 君の事が好きで、何とか君に話しかけたくて、君の好きな物を僕も好きになろうとした。

 きっと、僕の浅はかな策略なんて君に見透かされている。僕はそうわかっていて君に話しかける自分に恥ずかしさと侮蔑を感じながら、今日も君に話しかける。

 話しかける度に僕は、君への想いを抑えきれなくなっていく。

 僕の口から零れる言葉には、君の事が好きでしょうがないという想いが溢れだす。

 君は僕の事をどう思っているのだろう?

 気づけば今日も君に話しかけた自分の言葉と、口下手なのに一生懸命僕に返してくれた君の言の葉を思い返しては、君の真意を探るばかり。

 僕の拙い遠回しの告白に君は気づいてくれているのだろうか?

 君は知っていて、話しかける僕に笑いかけてくれているの?

 それとも、君は、僕の気持ちなんて知らないで、僕に笑いかけてくれているのだろうか?

 それをずるい、と思う程度には、僕は恥知らずだった。

 結局、遠回しの告白しかできないのは、僕が君を一方的にしか知らないからだ。

 それをわかっているから、君に告白したくて、君と付き合いたくて、君に好きになってもらいたくて、君とずっと一緒に居たくても、君に好きだと伝えられない。

 どうにかして、遠回しに君に想いを伝えて、君に好きになってもらう事しかできない。

 でも、君と僕とを繋ぐのは糸電話。

 か細い糸が切れてしまったら、それで終わりの間柄。

 そう。だから、僕は君に好きだと伝えたくてしょうがないのに、同時に君に好きだと言えないんだ。

 君に好きだと伝えたその瞬間、君へと続くこの糸が切れてしまうのが怖くて。

 そうして、今日も僕は、君への好きを、君へと続く糸に向かって遠回しに詠う。

 この糸が切れてしまわないように祈りながら。
 
 君とのこの糸でつながれただけの関係に、もどかしさと安堵を感じながら。

 僕は確かに君に、恋をしている。


 

君の面影

2012年08月16日 | 降る雨のウタ

 

誰かが言っていた。
夢に知っている人が出てくるのはその人が会いたがっているからだって。
僕は君の夢を見た。
もうずっと昔に片想いしていた君の夢を。
小学生から高校生までお互いに両想いなのに片想いしていた僕らは結局お互いの気持ちに気づきながらその想いを伝え合う事はしなかった。
あれから僕は何度も他の誰かに恋をして、恋愛を重ねてきたけど、何時だって恋愛の相手はどこかしら君の面影があった。
駅で君に会う度に
街角で君に会う度に
僕の目は君を追って
君の目と会う度にお互いに真っ赤になって目を逸らして   とても心地良い恥ずかしさに心を焦がしていた。
君の姿を目にできなくなってからもう随分と経つけど   僕はまだ君の夢を見る。
君の夢を見た朝は  寂しさと後悔に胸が痛くなって   僕の頬を涙が伝うんだ。
君の夢を見た僕は今朝も無意味に散歩に出る。ひょっとしたら君に出会えるんじゃないのか    そんな想いを胸に抱いて。
君の面影を探す僕は  今でも君に恋をしている。

あなたが笑うから、私も笑える

2012年03月24日 | 降る雨のウタ

 

 

                                 

 好きだよ。好きだよ。好きだよ。

 あなたがそう笑うから、私も笑えます。

 あなたの手が好きだった。

 その指が描くまっすぐな線は、不器用な私にとってはとても真似のできない曲芸で、あなたのその手が描く世界が私の夢でした。

 あなたはもう、とても遠い場所に行ってしまって、私にできることは、大好きだったあなたが私に残してくれた世界を演じることだけで。

 それはとてもきつくて悲しいことだったけれど、でも、それは確かにあなたの命が私の中に蘇る瞬間だったから、私はあなたの手が紡いだ世界を声で紡げたの。

 ねえ、今日は、あなたがいつか望んだ私たちの子どものために紡いだ世界を声で紡ぐよ。

 

 

「竹達さん」私の名前を呼んだその声を私はちゃんと聞いていたのだけれど、私は彼の声を無視して、歩くスピードを上げた。

「あの、竹達さん、待って」けれども甘かった。彼は私の前に回り込んで通せんぼする。

 そして、私をとても愛しむ者の眼で見るのだ。優しい、貌をする。

 私はそれがいたたまれなくて、彼の顔から目を逸らして、だけどそれが、私の大切な彼への背信行為のように思えて、すぐに彼の顔に眼を戻すのだ。

「こんにちは」

「こんにちは。あの、」

「ええ。デートの申し込みを、しにきました」しれっと彼は笑って、恥ずかしげも無くそう言う。「まだ、駄目ですか?」

 私は、声を出そうとするけれど、開いた口から声が出てくれなくて、言葉が見つけ出せなくて、悲しい気持ちでいつもの通りに顔を左右に振る。

 けれども彼は私を責めるような顔も、私を哀れむような顔もせずに、ただ、私の髪をくしゃっと撫でて、優しく笑う。

 それが、でも、私には、嫌じゃなかった。

 嫌じゃ、なかったのだ。

 ・・・・・。

 私は彼の手をそっと、払いのけて、彼に微笑む。ただただ純粋に微笑むという行為を形にする。

 手を振り上げ、彼の頬を、ひっぱ叩いた。

 

 

 

 ーーーーあなたが笑うから、私も笑える   第一話


神様

2008年05月30日 | 降る雨のウタ

 ねえ、知ってる?
 神様はいつだってひとりじゃなきゃ、ダメなのよ?
 君は朝露に濡れた花のような笑みを浮かべて僕にそう言ったね。
 そう言われて僕は心臓が止まりそうになった。
 だって僕は、僕の神様がふたりいたから。


 ひとりは君。
 僕は君にいつだって甘えていた。
 君はいつだって僕を優しく微笑んでくれながら僕を受け入れてくれるから、僕はいつだって辛くなるたびに君のその温もりに癒されにいっていた。
 君の温もりに包まれて、
 沈んで、
 弱くなって、
 強くなって。




 途中。



 っていうか、もうAM2時27分だし!
 早く寝ないと。
 明日、っていうか、今日の昼食後の会議で寝てしまうよ。(^^;
 っていうか、睡眠たっぷりでも会議では寝てしまうのだが。(-_-;

手をください

2008年03月23日 | 降る雨のウタ

 飼いならされた自由から飛び出すための手をぼくに差し出してください。
 たとえそれが絶望へと繋がる手でも、
 ぼくの足を止めるのは絶望ではなくて、諦めだとぼくは知っていますから、
 ぼくはもう絶望はしても、諦めはしないので、
 ですから手をください。
 ただ、歩き出すための最初の一歩を踏み出すための手をください。
 手をください。
 ぼくの大好きなあなたの手を私にください。
 その手を差し出されたのなら、ぼくはどこまででも歩いていける。
 もう絶望はしても、諦めはしない。

見飽きていたはずの黄昏

2008年02月26日 | 降る雨のウタ
 夢から醒めても、この手を伸ばす。
 何度も間違えたのに、また僕は見ていない夢の方へ走る。
 僕の引力がいつか夢に届く事を願って。
 ゴールのつもりで僕はリセットボタンに飛び込んで、ぐるぐると同じ場所を回って、僕は昨日の引力を跳び越える。
 もう少しだって気がするんだ、この壁を崩せるのは。
 だから夢から醒めても、夢を乗り継いで、僕はこの手を伸ばす。
 同じ強さで呼び合う心になれるのなら、僕は強くなれるから。
 僕の引力よ、夢に届け。
 見飽きていたはずの黄昏は、こんなにも綺麗だから、僕は泣いているんだ。
 勢い任せで、いつか昨日の引力は振り切れる。
 僕は懲りずにこの手を、夢に伸ばすんだ。

指きり

2008年01月17日 | 降る雨のウタ

 追いかけていく。
 素直なこの気持ち、あなたに届けて見せるわ。
 あなたがたとえどこへ行ってしまっても、あたしの恋心は翼となってあなたへの元へと飛んでいくの。
 あなたの声に耳を澄ませてばかりの頃、あなたをひとつひとつ知っていける事が嬉しかった。
 あなたを知っていくたびにあたしはあなたを好きになっていった。
 そんな想い出が心を通り過ぎていくたびに、涙が自分勝手に零れていく。
 だからあたし、鏡に小指を差し出すの。
 あなたを追いかけていく。
 お姫様のあたしと騎士のあなた。身分違いの恋だって自分勝手に決めて、逃げてしまったあなたを追いかけて、あたしは絶対にあなたの頬をひっぱ叩いて、その後にキスをしてやるんだから。
 そうしてあなたを追いかけて、真っ白な翼になってあなたの元へまでとあたしを運んでくれたこの恋を、あなたに伝えるの。
 それは初めてあたしの目の前を横切ったあなたの横顔に恋したその瞬間から始まったあたしの恋心との約束。
 あたしは鏡に差し出した小指で、あたしの恋心と指切りをした。

どうして

2008年01月17日 | 降る雨のウタ

 どうしてどうしてあたしはきみが好きなんだろう?
 あの頃は失うばかりで、何も手に入れられなかった。
 だからあたしはきみの瞳にあたしが映っているのが怖かった。
 あたしたちはすごく似ていた。
 きみは気づくといつも隣に居てくれた。
 きみの声はいつだってあたしを励ましてくれていた。
 遠く離れて、あたしはきみがあたしの支えだってようやく気づいたの。
 気づいて直ぐにあたしは迷子の子どものようにきみを探した。
 けれどもきみはどこにもいない。
 でももう想い出にも出来ない。
 忘れようとしても、
 忘れようとする度にきみが大きくなっていく。
 きみはいつだってあたしの支えだった。
 どうしてどうしてどうして、きみの手を離してしまったのだろう?

ひとりきり暗闇の中で探していた

2008年01月17日 | 降る雨のウタ

 ひとりきりで暗闇の中で探していた。
 きみの涙の理由。
 ぼくはきみを失って光を失った。
 その後悔は、ぼくを縛る甘い贖罪の歌。
 ぼくはきみを傷つける事できみとの愛を覚える。
 信じる事が怖くて、
 留まることもできない。
 だからぼくはぼくへのきみの愛をきみを傷つける事で感じる。
 きみの涙はぼくのキスで拭うから、きみを傷つける事を許して。