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珈琲ひらり

熱い珈琲、もしくは冷珈なんかを飲む片手間に読めるようなそんな文章をお楽しみください。

『鋼の錬金術師 堕天使のアリア』

2005年11月24日 | 短編
『鋼の錬金術師 堕天使のアリア』



「………アル」
「あ、ごめん。兄さん。起こしちゃったね」
「いや、気にするな、アル。それよりも」
「ん?」
「もう少しおまえの手を額に当ててくれるか?」
「え?」
「おまえの手は水に浸したハンカチよりもタオルよりも気持ち良い」
「そうか。良かった。僕のこの身体は兄さんの体温を感じられないけど、兄さんは僕のこの身体の温度を感じる事ができるんだね。僕はそれが素直に嬉しいと感じられる。だって僕には僕がアルフォンス・エルリックだと証明する手立ては何も無いし、僕がこの世に存在する、していた事を証明する事だってできない。でも兄さんは僕の温度を感じてくれるから、それが僕が僕にこの世にちゃんと存在しているんだって証明してくれているようで」
「馬鹿だな、アルは。んなのはお互い様なんだよ。俺はアルに俺の存在する意味とかを見ているし、おまえだってそうだ。そうやって俺に自分が存在する意味を見ている。そういうもんだ。先生に教えてもらっただろう」
「うん。兄さん。ねえ、兄さん」
「あん?」
「えっと………昔みたいに一緒に寝て良い?」
「………おまえ…。ばーか。んなでかい図体でこのベッドに横になったら、ベッドが壊れちまうだろう?」
「うわぁ。ひどいよ、兄さん。好きででかくなったんじゃないやーい」
「「ぷぅ。くすくすくすくす」」
「本当に馬鹿だな、アルは」
「馬鹿馬鹿言わないでよ、もう」
「悪い」
 僕らは黙る。
 きっと考えている事は一緒。
「ねえ、兄さん」
「あん?」
「フェスタロッサさん。笑い方が母さんそっくりだったね」
「ああ」
 そしてまた黙ってしまう。
 今度は不安で………。
「イシュヴァール人。フェスタロッサさん、ひょっとして今回の事件に関わってたりするのかなー」
「さあな。でも大佐や中尉の話を聞いていると、無関係とは思えない」
「でもイシュヴァール人っていうだけで疑ったら…駄目だよ………」
「そうだな」
「………兄さん」
 兄さんはベッドの上で上半身を起こした。
「あの人には随分と世話になった。だからこれから俺たちであの人にかかっている容疑を一緒に晴らしてやろうぜ。疑うから調べるんじゃない。無関係だと証明したいから動くんだ、アル」
「うん」
 兄さんは小さいと言われると、容赦なく怒るし、極悪非道だし、すぐに嘘を吐いたり、悪い事をするけど、でも僕は知っている。兄さんが母さんの事がすごく好きだった事を。そしてすごく優しい事を。
 だから兄さんなら絶対にフェスタロッサさんの容疑の晴らしてくれるって、僕は信じている。
「まずはホークアイ中尉。あの人とコンタクトを取らないとね」
「ああ」
「じゃあ、明日朝になったら早速僕、もう一度約束していた場所に行ってみるよ」
「俺も行く」
「兄さんは駄目。肺炎を起こしかけていたんだから、じっとしていて。じゃないと、ウィンリィに言いつけちゃうよ」
「おい、ちょっと待て、アル。どうしてそこでウィンリィが出てくるんだ?」
「そんな怖い顔をしちゃって」
「何でお前の声は笑っているんだよ?」
「何ででしょう?」
「ア~~~ルぅ~~~」
 そして僕らはお決まりの騒ぎあい。
 部屋に飛び込んできたフェスタロッサさんに怒られた僕らは、その懐かしい感触を胸に顔を見合わせて苦笑しあった。



 続く



テレビチャンピョン、すごいですね!
 かぁ~~~、釣りに行きたくなってきました。^^

 雑誌社から封筒が来たから、何かしら~とドキドキしていたら、次の賞の応募へのお誘いの手紙でした。(笑い
 開けるまですごくドキドキとしていたのですが!(笑い×2
 おかしなー。ここは確かもう落ちているはずなんだけど。。。。あ、ひょっとして、選考には落ちたけど、編集者さんが私の才能を見出して、一緒に明日のプロ小説家を目指しませんか? というお誘いだったり、どっかの賞のように、実はあなたの小説をチェックし忘れていて、読んでみたら大変面白く、特例として、特別賞を与え、出版します、なお手紙だったり! とか、色々と想像して、ドキドキとしたのですが!(ほざけ!)
 や、でもここの出版社は、こうやって、お誘いの手紙とかくれるからすごいですよね。こういうところは使い捨てじゃなく、ちゃんと作家を大切にしてくれそうで、好感が持てます。^^


 選考といえば、実はこっそりと一次選考を突破して、二次選考に残っていて、それは本当に夢の前進で、すごく喜んでおりますが、自分自身で自分のその投稿小説の駄目なところは理解していたりするので、駄目だろうなー、とは想うのですが。。。(--;

『殺意のウタ』

2005年11月20日 | 短編
『殺意のウタ』


 11月20日。
 PM11時32分。
 県警本部にその電話はかかってきた。
 深夜の公園で女性の悲鳴が聞こえた。
 どうやら誰かが襲われているようだ。早く助けてやってくれ、と。
 その通報を受け取った警察官が疑ったのは、その通報者がヴォイスチェンジャーを使っていたからだ。
 これはマスコミ各社には伏せられていたが、故にその警察官はそれに取り合わなかった。どんな場合であれ、その通報のあった公園、及び電話がかけられてきた公衆電話に警察官を向かわせるのが責務であったのだが、それを行わなかったのだ。
 結局この犯罪は、これより40分後にその公園に男女の密事を車内でするためにやってきたカップルが被害者の死体を発見し、携帯電話で警察に通報してきた事から発覚する。



 被害者の女性は荒谷千尋。
 新進気鋭のシナリオライターである。
 彼女は何者かにレイプされ、殺されていたが、検死の結果、膣内に犯人の精液が残されており、その精液のDNA検査の結果、及びそこに残されていた犯人の遺留品から、その荒谷千尋と同じ業界で働くタレントの益田隆志である事が判明し、彼は逮捕された。



 マスコミはその次の日の朝には、その事件の詳細を報道している。




 ――――――――――――――『殺意のウタ』



「はぁーい♪ お・は・よ・う、蘭ちゃん」
 東京お台場のテレビ局のロビーでその朝の抱擁は行われた。
 銀色の髪の美丈夫、藤森縁羅は顔見知りの彼女の後ろから抱きついて、左の耳にふぅーと吐息をかける。
 蘭は「きゃぁ」、と身体をびくりと震わせて、きぃっ、と彼を振り返って、睨めつけた。
「縁さん」
 ぷぅーと頬を膨らませた彼女に縁、と呼ばれた藤森縁羅はおばさんのように右の手首を縦に何度も曲げる。
「あーら、やだ。軽い朝のご挨拶じゃない」
「だから左耳に息を吹きかけるのはやめてください、って言っているじゃありませんか! もう。しかもこれ、軽いセクハラですよ」
「あら、それは男に限ってでしょう? おかまはその範疇じゃないと想うんだけど?」
「時たま居ません? おかまのフリをして女性の身体にべたべたと触るいやらしい人」
 半目の蘭。
 縁は大仰に肩を竦めた。
「失敬な。私は正真正銘のおかまよ。おかま」
「もったいない。せっかく綺麗な顔をしているのに」
「どっちよ?」
 縁はけらけらと笑う。
 それから彼は前髪をさらりと掻きあげて、どこか同情するような表情をした。
「大変だったわね。千尋ちゃんは」
 そう言われると、蘭は泣きそうな表情をした。
「はい」
 そう言うだけで彼女はもう精一杯だった。
 昨夜公園でレイプされて殺された荒谷千尋は蘭の友人であり、ライバルでもあったのだ。そして彼女を殺した益田隆志もまた、彼女の知り合いであった。いや、知り合いどころではない。彼は彼女のフィアンセであったのだ。
「何だかねー、隆志ちゃんもどうしてあんな事をしたのか。本当に馬鹿な人」
 ため息混じりの声で縁は吐き捨てる。
 それからもう一度蘭を見て、目を細める。
「本当に大丈夫?」
「はい。ごめんなさい、縁さん」
「仕事、今日ぐらいは休んだら?」
「いえ、そうも言っていられません。千尋があんな事になって、私もショックだけど、でもだからこそ私が彼女の仕事を引き受けないといけないし。だけど賞を取った彼女の役を私にはできない、という意見の方が多いんですけど」
 そう笑う蘭の細い背中を縁はぱちん、と叩いた。
「何を言っているのよ、蘭ちゃん。あなたの才能は私が保証するわよ」
「ありがとう、縁さん」
「いえ」
 縁はにこりと笑って、それから蘭を見送った。
 ひょいっと肩を竦めて、それから前髪をくしゃっと掻きあげながら深くため息を零す。
「本当にどうしてこうなるかな?」
 そう呟いていると、彼の携帯電話が着信した。
 携帯を開き、液晶画面に表示されている名前を確認する。
 そこには両山左京とあった。
「まあ、左京ちゃんだわ」
 縁は上ずった声でその携帯電話に出た。
「ああ、左京ちゃん。おはよう。で、どうだった? 私がお願いした検死結果、教えていただけるのかしら?」




 縁は車の助手席に蘭を乗せて、車を走らせていた。
 とても綺麗な夜景の見える場所に車を停車させる。
「縁さん、窓、開けてもいいですか?」
「ええ、いいわよ」
 縁はにこりと微笑み、蘭は窓を開けた。
 そして蘭は窓から入る風に気持ち良さそうに目を細めた。
 そうして彼女は縁を見て、笑う。
「普通こんな場所は誰か良い人と期待ですよね」
「そうね。夕暮れ時から最高かしら? 海に沈んでいく夕方の光、本当に最高だわ。海は夕暮れ時が本当に一番綺麗だと想うわよ」
「そうですね。だったらその夕暮れ時に連れて来てくれれば良かったのに」
「それは、ね、あなたが出所してきた時のお楽しみにしようと想って。楽しみがいるでしょう? あなたはきっと実刑をくらうと想うから」
 蘭は静かに微笑んでいる。
 縁はそんな彼女を哀れむように見据えながら口を開いた。
「私はあなたの才能を認めている、と言ったわよね? だからこの事件を聞いた時に真っ先にあなたの顔が浮かんだわ。そう、あなたなら全て可能なのよ。彼を犯人に仕立てる事も、彼女を殺す事も」
「荒谷千尋はレイプされて殺されたのよ? 膣内にはあの男の精液もあった」
「それはね、あなたが女で、彼があなたを抱きたがっていた、それで解決できるわ」
「はあ?」
「コンドーム。これがあればOKでしょう? 彼は妻帯者ですもの。子どもが出来たら大変だから、って、中出しを従って渋る男にでもそういう理由でコンドームを被せることは出来る。それで行為が終わって、彼がシャワーでも浴びてる最中にコンドームの入り口を縛って、それを鞄にでも仕舞えば、彼の精液は入手できる。後は荒谷千尋を公園に呼び出して、殺して、膣内に注射で精液を注入すれば良い。違って?」
「縁さん。あなた、私の才能を認めてくれているんじゃないの? それってかなりの無理があるわ」
「そう。完全犯罪をしたいのなら、こんなにも穴だらけの犯罪はないわ。太ももには裂傷はないし、彼の陰毛も彼女の陰毛に絡み付いてはいない。精液はあれど、レイプされた形跡は無い。バイブでも使って掻き回した後に注射器で精液を注入するならまだしも、本当にね。そう、だからさ、あなたはそういう事。少しでも優秀な、真面目で勤勉な刑事がいれば、簡単にこんな事件は解決できるでしょう。そう、芸能界は魔物が済む世界。だからあなたを陥れたい他の魔物が居れば、それが調べに来た刑事に簡単に教えてくれて、犯罪が露見する。そう、あなたの狙いはそういう事。あなたがそれだけの犯罪を画策し、行った、それを世に知らしめたかったんだから」
「どうして?」
「荒谷千尋。どうして彼女が殺されなければならなかったか………。彼女が賞を取ったシナリオ、あなたが書いた物なんじゃなくて? あの男でも使って荒谷千尋が奪ったのかしら?」
 蘭はぱちぱちと手を叩く。
「さすがね、縁さん。もしも出所してきたら、そしたら今度は推理物のシナリオを書くから、主人公の探偵をやってくれるかしら?」
「ええ。ああ、でも、女形ね?」
「それはダメ。せっかくの美形なんだから、ばりばりのハードボイルドな探偵をやってもらいます」
「まぁー、それは残念ね」
 二人でくすくすと笑いあう。
「あのシナリオはね、私が学生時代に書いていた物なのよ。でもそのシナリオは会社帰りにあの公園を通っている時に暗闇で襲われて獲られてしまったの。しかもレイプされてね。私を襲った男があの男。そして私からシナリオを奪い取らせたのが千尋だったのよ。だからそれが許せなくって、ね。でもそれを言ったって、シナリオライターとして成功している彼女を私が羨んでいるようにしか想われない。だから、この計画をしてやったの」
「ええ。では、警察に行きましょうか? さっき左京さんから連絡があって、捜査一課が録音されていた通報電話を科学捜査犯に回したって。ヴォイスチェンジャーを使っても、声紋は変わらない、っていうのだってあなたなら計算済みなんでしょう?」
「ええ。私としてはそれで捕まる予定だったんだけど、どうしようか?」
「自首、してもらいたいんだけどね?」
「自首ですか? それは、予定が狂いますね。左京さんに捕まるというのは?」
「ダーメ。いいじゃない、皆がちゃんとあなたが天才だってわかってくれるから、だから自首しましょう」
 蘭は肩を竦める。
「キャストミス。縁さんは優しすぎるわ」
 縁はにこりと微笑んで、そしてエンジンをかけた。



【END】


 さつまいもケーキを作りました。超美味。(><

愛する人よ

2005年11月11日 | 短編
 僕が姉と出会ったのは、小学校4年の時だった。
 母が再婚した義父の連れ子だったのだ。
 父は優しかった。憧れていたキャッチボールやサッカー、肩車、そういう事をやってくれた。
 とても優しく、幸せな時間。
 夕方の橙色の光の中で、その光に飽和しきれないほどに感じていた寂しさを、もう僕は感じることは無かった。
 とても温かで、幸せで、満ち足りた時間。
 怖かった事は、そうやって義父に優しくしてもらう事で、義姉に嫌われてしまわないかという事。
 何で、そう想ったのだろう?
 独りの悲しさを知っているから、
 独りの悲しさをずっと感じていて、でも新しくできた家族にそれを溶かしてもらったから、 だからもう悲しくなくって、
 でもそれは僕だけの幸せで、
 それは彼女の寂しさの犠牲に成り立っている事に気づいていたから、
 だからそう恐れたのかもしれない。
 父親を失った姉の想いは、結婚したいと母に告げられた時に感じた僕の想いと同じだから。




 想えばこの時から僕は同じ想いを抱く彼女に惹かれていたのかもしれない。
 ―――愛しているんだ、彼女を。
 子どもは、子どもなりに。




 初めて会った時、姉は中学2年生だった。
 黒い長髪。白い肌。大きな、力強い輝きを宿した瞳。薄い形のいい唇。
 小学生4年生の僕は、でも初めて会った時からきっと彼女に恋していたから、だから彼女と接する時はとても緊張して恥ずかしくって、そして幸せだった。
 でも彼女は僕を新しく出来た血の繋がらない弟、としか、見てはくれていない。じゃなければ嫌がる僕と一緒にお風呂に入ったりとかしない。
 小さく膨らんだ胸や、淡い桜色の乳首、林に覆われた陰部に興味を示すのはまだ早すぎる。ただ、恥ずかしかっただけ。
 彼女はくすくすと笑っていた。
 とても優しかった。
 とても優しい姉をしてくれた。
 時には母親の役も彼女はしてくれたんだ。
 僕は幸せになれた。
 新しい家族ができて。
 でもそれは、僕だけ。
 彼女は提供する側で、提供される側じゃない。
 僕は彼女を愛していたから、だからそれに感じる………たったひとりの肉親である父親を僕と母親に取られてしまった彼女を、置いてけぼりにしたその罪悪感は、だから、心が痛いほどに僕は感じていた。
 そう、僕は心が、痛いんだ。




 姉はとても美しい人だった。
 美しく、聡明で、その瞳に宿る力強さも、光も、歳を重ねるごとにその輝きは増していった。
 一緒に居ると、胸が詰まる。
 彼女が好きだから。
 願わずにはいられないんだ。
 どうして僕らは血も繋がっていないのに、姉弟になってしまったんだろうって。
 こんなにも心は彼女を、求めているのに。



 好きなんだ、姉が。



 高校一年生になった。
 姉は大学生。
 姉はとても美しく、本当に。
 だけどその美しさにどこか悲しい物を感じるのはどうしてだろう?
 


 どうしてだろう?



 高校一年の夏。
 僕は熱を出した。
 両親は居なかった。
 セミが煩いほどに鳴いている。
 じりじりとした暑さと気だるさの中で、僕は僕を看病してくれる姉がその濡れたような寂しげな笑みを美しい美貌に貼り付けて、僕の唇に自分の唇を重ね合わせた。
 夢だと想った。
 熱にうかされた儚いうたかたの夢。
 押し込めた欲望。
「愛しているよ、姉さん」
 そう告げる。
 彼女は微笑んで、もう一度横髪を掻きあげながら唇を重ね合わせて、僕は、涙を流した。
 そのまま彼女を抱きしめて、ベッドに押し倒し、彼女の名前を呼ぶ。
 二人お互いの温もりを感じあうように抱きしめあって、唇を重ね、舌をかめ合わせながら僕は彼女の服のボタンを外し、服を脱がせ、下着をずらして、露になった乳首を口に含み、舌で転がした。
 耳元で奏でられた吐息とも喘ぎ声ともつかぬ声が僕のを硬くさせる。
 それをこすり付けると、彼女の僕を抱く腕は強くなり、舌を激しく絡め合わせながら右手で彼女の大きく形の良い乳房を揉みしだきながら、愛を感じあい、
 二人裸になって、
 僕は彼女の林の奥にあるそこに舌を這わせて彼女を感じさせる。
 指は優しく入れた。
 奥まで入れて、ゆっくりと動かすと、やがて朝露に花が濡れるように、彼女の華も濡れる。
 静かな部屋に響く彼女の濡れた音と、喘ぎ声に、あるいは恥ずかしながら、あるいは感じて、彼女は雪のように白い肌を鮮やかな桜色に紅潮させて、腰を浮かせたり、ベッドのシーツを掴み、乱れさせながら、喘いだ。
 涙目で僕を見つめながら彼女は僕の熱く固くなったあそこを触る。
 彼女の手に誘われるままに僕は彼女の顔へとそれを近づけ、彼女も顔を近づけて、僕のそれを口にくわえる。
 激しく、時にはゆっくりと、
 舌を動かし、
 舌で転がし、
 その彼女の舌使いに、口の動きに、我慢できずにぴくりと身体を震わせる。
 上目遣いで彼女は僕を見て、
 僕はもうそれ以上は我慢できずに彼女の口の中で…………



 綺麗に舐め取ってくれた彼女は微笑み、
 そのまま僕らは唇を重ねて、
 まだ硬いままのあれを、僕は彼女の林の奥にあるあそこに入れた。
 先端が彼女の中に入る。その感触に僕らは幸せを感じる。
 彼女はただそれだけで喘ぎ声をあげて、シーツを掴む手に力を込めて、
 僕は歪む彼女の顔を見つめながら奥まで入れて、腰を動かす。
 揺れ動く乳房を両手で包み込み、唇を重ね、彼女の腕が僕の首に絡みついて、僕らは座った状態で腰を動かして、彼女は僕を倒して、上に乗って、腰を動かして喘ぐ。
 上下に揺れる乳房を、感じる彼女の顔を見つめ、それからまた僕が上になって、入れたまま身体を動かして後ろから突いて。
 触れ合う肌と肌の音が部屋に響いて。
 また正常位に戻ると、彼女の顔を見ながらイッた。
 どくどくと彼女中で広がっていく温かみを感じながら、僕は彼女の胸の谷間に顔を埋めた。



 それが最初で、
 そしてそれからすぐに彼女は姿を消した。
 留学。
 肌を重ね合わせた事に何故か罪を感じた。
 壊したのだろうか、僕が彼女を想うその想いが。



 姉が居なくなっても変わらぬ日常。
 義父も母も幸せそうで笑いながら日々を過ごして、僕も変わらなくって。
 でも会いたかった。
 会いたかったけど、でも会うことが怖かった。
 僕は20歳となった。
 大人となった。
 本当に?
 姉はどうしているだろう?
 手紙だけのやり取り。
 どこか両親は姉の事を口にするのは、避けているようだった。
 バイトで貯めた金を使って、俺は姉を訪ねた。
 あと一年。そうすれば看護学校も卒業出来て、自立できる。
 自立したら、そうしたら会いに行こうと想っていた。
 だけどある日突然雨からメールが来たのだ。
 メールアドレスは、姉は家を出たその日に変えていたけど、俺は変えてはいなかった。
 姉からのメールには、今の彼女の居場所と、それから会いたい、という文章が添えられていた。
 虫の知らせ………
 俺はその日に彼女に会いに行った。
 アパートの一室に敷かれた布団。
 その布団に眠っている彼女。その傍らで泣いている男の子。その顔に感じたのは郷愁。
 その意味は、無意識に感じられた。
「俺の子だよね?」
 彼女は頷く。
 俺は不思議そうに俺を見るその子を抱きしめた。
 泣いてはいけない、そう想った。
 絶対に泣くものか。
 泣いてはいけない。
 泣く代わりに俺はその子を抱きしめて、
 そして彼女に微笑んだ。



 彼女は不治の病だった。
 それから俺たちは彼女の残された時間を家族として過ごした。
 そうして彼女は亡くなって、
 俺は父子二人で、息子と暮らしている。
 笑うようになってくれたその子への愛おしさ。
 とても大切で愛おしい息子。
 健やかに育ってくれるその事だけを望み、俺は息子を守り続けるのだろう。
 大好きな女性との間に出来た、二人の愛の証なのだから。



 【END】

ハーゲンワルツの森の魔女(前編)

2005年10月01日 | 短編

 館の玄関に紅いハンカチが吊るされているのはそこが娼館の目印。
 ひとりの少女を連れた男はその目印を見つけて下卑た笑みを浮かべた。
「恨むならおまえを俺様に売った親を恨みな」
 だけどそれはしょうがない事。家を継ぐ長男がいればそれでいい。次男三男は畑を耕すのに役に立つ。
 でも娘はいてもしょうがない。
 ハーゲンワルツの森の魔女の呪いによって荒れた大地を耕すのは女の手では無理。育つのは稗や粟ばかり。それだけで家族が生きていくのは無理。ならば女は女として生まれた喜びを悲劇と変えるしかなかった。
 初潮を迎えぬ娘たちですら売られるのは珍しくも無い。そういう市場は腐る程にあり、そして人買いどもはそういう売り先をよく熟知していた。
 恨むなら女として生まれたその身を恨めばいいのか?
 男ならば家族と共に居られた。無論、いつか長男以外は恐ろしき魔女が居るハーゲンワルツの森に捨てられてしまうが。
 ならば生きられるだけ女として生まれたのは幸運な事か。
 運が良ければ質の良い娼館に売られる。そこで初潮を迎えるまでは下働きをして、迎えたその後は店に出されるが、それでも生きてはいられる。生きてこそ。
 だけど最悪なのは幼女趣味の下郎に売られる事だ。その先にあるのはおぞましい欲望の果ての地獄ばかり。
 果たしてエステル・シュタインの売られる場所はどこだろうか?
 恨むのなら、彼女はハーゲンワルツの森の魔女を恨もう。
 救いの無い地獄の中で。
 眠り姫はただ眠っているだけで心優しき王子に愛された。
 だけど本当はそれは嘘。王子はただの死体愛好家。眠り姫は生きた死体だからこそ王子に愛でられた、それに過ぎない。
 所詮は女など、男の慰み物、飽くなき性欲を晴らすためだけの道具にすぎないのだ。女は何時だって男に従っている。
 父に従い、
 兄や弟に従い、
 そして亭主に従い、
 息子に従う。
 女とは男の慰み物。奴隷。
 ならば恨むなら、やはり女と生まれたこの身だろうか?
 やがてこの身体は初潮を迎え、女となる。そうなれば身も知らぬ男に金と引き換えにその身を弄ばれて、そうして誇りも人権も失って、篭の鳥となって生きていくのだ。男が喜ぶ喘ぎ声という唄を歌って。
 エステルは歯軋りをした。
 どうしてこんな仕打ちを受けねばならないのだろうか?
 女だからか、やはり。
 そしてエステルは思った。ひょっとしたらハーゲンワルツの森の魔女もだから悪しき魔女となったのかもしれない。
「ここの娼館は国で一番の娼館で、居るのは前王家に連なる貴族の姫君たちばかりだが、おまえは顔はとても美しいからきっと気にいられるだろう。感謝するのだな」
 感謝? 何にだ。
 エステルは絶望と共に娼館の扉をくぐった。
 きっと前は高位の貴族の館であったのだろう。造りは上等で中は広かった。
 そして館の奥へと進むと、ちょうど階段からとても美しい女性が降りてきた。
 その女はエステルを見て、甘やかに微笑んだ。
「かわいい娘ね」
「新しい娼婦でございますよ、姫様」
「そう」
 姫は肩にかかる髪を払いながら小首を傾げる。
「その娘は幾らなのかしら?」
「はあ?」
「その娘は幾らかと訊いているの」
「貴女様がこの娘を買うと言うのですか?」
「ええ。おかしい?」
「それは…」
 人買の男は苦笑を浮かべる。
 その姫の後ろからまた新たな男が現れ出た。
「姫の気まぐれは知っているだろう、おまえも」
 そう言った男を見て、人買の男は震えた声を出す。
「ティエン将軍」
 エステルは息を呑んだ。
 ティエン将軍。それはこのアスガルド王国3将軍のひとりで、若いが、とても残虐な人だと聞いている。
 その噂通りに彼は獰猛に笑った。
「どうだろうか、姫よ。あの娘を使って賭けをせぬか?」
「賭け、と言いますと?」
「俺とお前で賭け事をし、俺が勝てば今日こそおまえに俺の相手をしてもらう。しかしお前が勝てば、あの娘は俺の名にかけて自由にしてやろう」
 ティエン将軍は顎をしゃくった。
 かつてはダンスホールであったその場所はポーカーの賭博場となっていた。
 テーブルに姫とティエン将軍がついて、そしてポーカーを始める。
 エステルはポーカーのルールなど知らぬが何やらティエン将軍の肩に乗るミニモンキーの動きがどうにも気になった。
 そしてそのポーカーの勝負は………
「ふむ。俺の負けか」
 ティエン将軍はしかし豪快な笑い声を上げ、姫は優雅に微笑んだ。
 エステルの隣に居る娼婦がこっそりと聞かせてくれた。
 姫は本当にクーデータ―によって失脚した前国王の娘であり、そして幼馴染みであるティエン将軍は毎日姫にポーカー勝負を仕掛けて、負けているのだと。そうやって今日も自分は姫を抱けなかった、そう口にするのだと。そうして彼は姫の肌を守っているのだと。ティエン将軍は姫を幼き頃から愛していたのだ。
 エステルはティエン将軍を見つめた。もう彼女には彼の獰猛な笑みが怖くは無かった。
「おい」
 ティエン将軍は人買を呼んだ。
 そして彼は人買にエステルの代金を払った。
 金貨十枚だった。
「あなた、名前は?」
 姫はとても綺麗な人だった。
 その地位を奪われても彼女は姫だったのだ。姫として生まれてきた彼女は、やはり死ぬまで姫なのだ。
 とても美しく、そして良い匂いがした。
「エステルです」
「そう、エステルと言うの」
 姫はエステルの手を掴んだ。
 そして彼女を自分の部屋へと連れて行く。
 その部屋にあるのは一つの鳥篭であった。
 その鳥篭の中には蒼い鳥が一羽、いたが、しかしそれは身動きしない。
「………剥製?」
 エステルが呟く。
「ええ、そう。かつて私がお父様に頼んだの。とても大好きだった鳥。この鳥は大切な友達だから、蘇らせて、と。そうしたら父上は剥製にして、私はこの鳥に興味を失った」
「………」
「だけど城からこれを持ってきたのはどうしてでしょうね?」
 姫は鳥篭を手にすると、エステルに差し出した。
「お願いがあるの。この子を、安らかに眠らせてあげて。本当は私がせねばならないのでしょうが、私は篭の鳥だから」
「…はい、姫様」
「ありがとう」
 姫は微笑み、それからエステルの唇に自分の唇をあてた。
「どうかあなたにハーゲンワルツの森の魔女のご加護がありますように」
 エステルが両目を見開くが、姫はその祈りの意味を教えてはくれなかった。


 ハーゲンワルツの森の魔女。
 それは悪しき魔女、そのはずであった。


 ― 続く ―


 しんちゃん、今日の映画が一番好きです。^^ その次が大阪万博のような奴のお話? 大人が子どもになる奴。
 あー、でも最近、カップルが両方とも死ぬか、魔界に帰るか、どちらかが死ぬかで、いい加減ハッピーエンドが見たいです。
 でも【蛍火の杜へ】のラストは本当に綺麗だと想いました。このお話が一番好きかなー。

 ってかそうそう、レントンも明日、夢が終るんですよね。(--;
 ホランドたちよりもあの夫婦の方が絶対に良いのに。
 前回の年頃の息子を持つのはいい、っていうあの夫婦の言葉はじーんと来ただけに、未来においてきっとレントンはこの夫婦とニルバーシュに乗って戦うんだろうなー、と想うと悲しいです。(--;

 うぉ。何か明るい物語が見たい!!! アダムスファミリーでも借りてくるか。

ベッド探偵

2005年09月30日 | 短編
 コンコン、と病室の扉をノックした。
「はい。どうぞ」
 という彼女の声。
 俺は病室の扉を開けて、眼を半眼にする。
「ん?」
 ん? じゃなく………
 俺は回れ右をした。
「服を着て」
 確かに俺は病室の扉をノックしたはずだった。
 それどころか彼女は病室の窓から俺が来た事を知っていたはず。頭の良い彼女なら俺が来るタイミングも………
「はぁー」
「何よ、その溜息は?」
「いいから服を着ろって」
 彼女はベッドの上で下着姿で着替えをしていた。
 ちゃんとノックをしたのだからそんな恰好で迎えられるいわれは無い。
「何を今更。あたしがまだそれでも元気だった頃は一緒にお風呂にも入ったじゃない?」
「ああ、ガキの頃にね」
「あら、大人になったの?」
 笑うような声。
「おい」
 振り返ると彼女はちゃんと服を着ていた。
「意外と大きかったでしょう?」
「知らねーよ」
「もう一度見せようか?」
「いや、結構」
「いけず」
「押し倒したくなる」
 ちょっとした反抗にそう言ってやると彼女はふふんとほくそ笑んだ。
『押し倒したくなる』『押し倒したくなる』『押し倒したくなる』
「(すぅー。)きゃぁー。襲われるぅー(ハートマーク)」
「………」
 俺は唖然とする。それからベッドの隣の椅子に腰を下ろした。本当になんだかもう疲れた。
「いい冥土の土産ができたわ」
 俺はぼそりと呟いた彼女を睨んだ。彼女は時折こうやって冗談とも本気ともつかぬ事を言う。
「不謹慎。ここは病院だぞ。それに言霊っていう言葉だってあるんだ。冗談でも言うな」
 俺はつい本気でキツイ口調で言ってしまった。言ってしまってから後悔する。本当に辛いのは彼女だ。
「馬鹿だなー。そのままそれを理由に嫌われようと想ったのに」
「嫌わない」
「嫌ってよ」
「絶対に嫌わない。嫌わずにお前の事を想い続けて、それで寿命で死んでやるって、決めているんだ」
 彼女は微笑んだ。それはほんの少しでも指先で触れたら壊れてしまいそうなそんな表情。
 だから俺は椅子から腰を浮かせて、彼女のとても温かい唇に、唇を重ね合わせた。
「押し倒さないの?」
「誰が」
「だってここ病院。男が大好きなシチュエーションじゃない?」
「………阿呆」
「ああ、そうか。ナース服を忘れていたわね。今度借りておくわ」
「………馬鹿」
「はぁー。で、その紙袋は何?」
 彼女は俺が持ってきた紙袋を指差す。
「お袋が作ったゼリー。保冷剤を大量に一緒に詰め込んでおいたから、きっとちょうどよいぐらいに冷たい」
「まー、素適♪ 食べてもいい?」
「いいけど、大丈夫か?」
「寧ろ太れ、と医者には言われているわ」
「じゃなくって検査」
「ああ、大丈夫。ちょうど終った所だったから。それで着替えていたらあなたに覗かれたのよ。うぅ。嫁入り前の素肌だったのに」
「あ~の~な~」
 俺はちゃんとノックをした!
 だけど彼女はそんな事はお構い無しにベッドから身を乗り出して、口を開いている。まるで雛鳥のように。
 ……………頭痛がしてきた。
「何だよ、それ?」
「食べさせて♪」
「手があるだろう?」
「疲れちゃった、検査で。だから食べさせて。心も、傷ついたしね………」
「はぁー」
 良い様に玩具にされている。
「甘えているのよ」
「読むなよ、人の心」
「じゃあ、出すなよ、顔に」
 彼女はにぃっと悪戯っ子の表情で笑って、俺は両手を上げて、彼女の口にスプーンですくったゼリーを運んだ。
 彼女は不治の病だ。
 もうずっと入院していて、色んな合併症を起こして身体をボロボロにしている。きっとこうしている間も苦しくって痛くってしょうがないのに、それでも彼女は笑っていた。俺が泣いてしまわないように。
「ところでさ、叔父様、また面白い事件を抱えているようね」
「泣くぞ、親父が。頭抱え込んでいるんだから」
「だったら親孝行にあたしにその事件の事、話してみない?」
 彼女は眼をキラーンと輝かせた。
 俺は溜息をついて彼女に事件の概要を教える。
 彼女は優秀なベッド探偵なのだ。安楽椅子に座って、事件の話を聞くだけ犯人を言い当てる小説の主人公のような。
 それは密室事件だった。
 とある旧家の屋敷で起こった殺人事件で、屋敷の離れでその家の当主が首の頚動脈を鋭い刃物で切られて殺された。
 だがその離れは完全な密室で、それを証言しているのは警察官だった。
「検死医の話では熟睡中にやられたらしい。こう、刃物を斜めに首に当てて一気に引いた、って。その凶器も未だに見つかってはいないし、それに密室の謎も全く解けないらしい。この離れの施錠は完璧で、本当に人は中から鍵をかけられたら入れないらしいから」
 俺がそう言うと彼女は小首を傾げた。さらりと彼女の前髪が揺れる。
「この世に完全、という言葉が近々あたしが死ぬ、という事実の他にあると想う?」
 俺は思わず顔をしかめたが、彼女はそれを無視した。
「いいえ、あるはずがないわ。完全、だなんてものはね人の妄想なのよ。思い込みが人の判断力、洞察力を鈍らせて、真実から目を背けさせる。ねえ、その離れの施錠が完璧だと誰もが言っているの?」
「ああ、有名な設計士が作ったらしい。完璧だって」
「間取りのようなモノはわかる?」
 俺は肩を竦めて鞄からその離れの設計図を取り出した。親父の所へ着替えを持って行った時に親父の部下で、兄のような感じの友人である刑事に一枚もらったのだ。
「素晴らしい」
 彼女は胸の前で両手を合わせて微笑んだ。
 そして彼女は、本当にわずか数秒それを見ただけで鼻を鳴らした。
「ほら、やっぱり目をそらされている。全然密室ではないじゃない」
 その彼女の言葉を聞いて俺は絶句してしまう。密室ではない? それはどういう事だ。
 彼女は幼い頃から病気で、ずっと入退院を繰り返していて、そういう経緯が彼女に人の欺瞞を見透かせる洞察力を与えたのは知っていたけど、でも………
「ここを見て?」
 彼女の指が指した場所には殺された当主が飼っていた猫のための出入り口があった。
 きっと簡単に押せば扉が上がる、そういうものだろう。
「だけどちょっと待てよ。猫の出入り口だぜ? 人が通れる訳………」
「馬鹿ねー。人が入る必要は無いじゃない。これを見る限りではここは座敷作りでしょう? だったら畳の上にお布団を敷いて寝ていた、そうじゃない?」
「ああ、うん」
「だったら簡単よ。とても長い棒に紐でナイフか包丁を括り付けて、それで殺せばいいのよ」
 彼女はウインクしてそう言った。
 それから彼女は俺の鞄を指差す。
「携帯電話で叔父様に教えてあげれば?」
「ああ、うん」
 そしてその彼女の推理に従って警察は高枝切りバサミが凶器である事を突きとめて、そして被害者と不倫関係にあった家政婦が犯人である事を調べ上げ、逮捕した。


 コンコン、とノックをする。
「はい」
 俺は病室の扉を開ける。
 するとベッドの上の彼女はやんわりと微笑んだ。
「残念だったね」
「………何が?」
「今日はあたしの着替えを覗けなくって」
「あ~の~な~」
「あはははは」
 俺は溜息を吐いて、それから笑う彼女の唇を唇で塞いだ。
「いい。初夜にじっくりと素っ裸にしておがませてもらうから。だからその日を楽しみにこっちは勉強して、就職して、おまえを迎えに行くよ」
「はいはい」
 そう言う彼女の顔は何故か寂しげだった。
 だから俺はもう一度彼女にキスをした。
 上手い言葉は伝えられそうに無かったし、
 それは自己満足で、彼女を困らせるしかないような気がしたから、
 だからせめて俺は自分の温もりを彼女に重ねて、彼女が独りじゃないって伝えたかったんだ。
「ありがとう」
「ん」
 病室の窓からカーテンを揺らして入ってくる初夏の風がとても心地良かった。



  ― END ―


 ハーゲンワルツの森の魔女、フリーズして、また新に立ち上げたら変な漢字と数字と、アルファベット、記号の羅列でした。(-_-;
 ・・・。
 あー、もう本当に今週は厄だ。

 でもこの二人、書くの好きなんですよね。^^
 逆セクハラに負けずに頑張れ、男の子。


2005年09月27日 | 短編
 そこは暗い場所。
 闇の深淵の奥深く、沈黙に包まれた、絶対に心が向かわない場所。
 ―――そう、彼女がそこを訪れた、そういう理由の時以外は。


 きぃーっと鳴った蝶番の音が沈黙の闇にたゆたう。
 その音色が悲しみに塗れたすすり泣きのように聞こえたのは無理も無いだろう。その光景を見てしまえば。
 その場所に、もう見たくは無い、そういう感情がありありと察せられるほどに無造作に押し込められていたのはガラクタ。
 そのガラクタの山の中から彼女は一体の人形を見つけ出す。
 薄汚れたバレリーナの人形。
 彼女はその人形にキスをして、微笑んだ。
 人形の瞼がぴくりと震えて、それからゆっくりと開く。
「おはよう」
「………あなたは誰?」
 人形は少女に対してとても抑揚の無い声でそう聞いた。
 少女は優しく微笑みながら手の甲で彼女の頬を拭く。
「意志。もしくは希望。だからあなたを迎えに来たの」
 人形の顔は変わらない。
 だけど人形は仕草でそれへの答えを示した。
 瞼を再び閉じる。
「どうして? 意志であり、希望であるあたしがあなたを迎えに来たのよ」
 …………。
 人形はそっぽを向き、それから口を開く。
「ここはどこだか言える?」
「潰えた場所」
「そう、潰えた場所、よ。ここには潰えた物が閉じ込められる場所。見たくないから。苦しいから。哀しいから。そうやって切り捨てられた感情の眠る場所。でも一番苦しくって、哀しかったのはあたしたちだわ」
「そうだね。ごめんね。でもあたしはあなたを迎えに来た。それがどういう意味だかわかって?」
「わからない」
「潰えた夢は、でも数多ある可能性の中からまた道を見つけ出し、そこへと繋がったの。歯車はかみ合ったのよ。その歯車のひとつがあなた。あなたという歯車が回り出す事で、かつて折れた心は不純物をその身に混ぜながらも、また新たな想いとして回りだし、そしてそれは姿となって、自分以外の可能性の希望となり、道標となって、光となる。あなたが必要なの」
「………勝手だわ」
「そう想う? この場所は虫の腹の中よ」
「虫の腹の中?」
「ええ。切り捨てた感情は、夢はだけど虫の腹の中に入って、そしてそれはいつだって動き回る。苦しい時、哀しい時、過去を想う時に虫は動き出す。常に虫は動き、その虫の動きが人を惑わす。でもそれは力となるの。忘れられない感情。忘れたくない感情。責めないで。見た夢の場所を人が離れるのは、それは成長。心はいつだって色んな栄養を取り込んで、その都度に色を変えるから、だから想いは薄れるし、まったく違ったものへと囚われる。それは逃げでも、恥ずべき事でも無い。寧ろ人として当然の事。成長なのだから。そうでしょう?」
「………ここでそれを言うのは酷だわ」
「いいえ、ここだからこそ。あなたたちはあたしが成長するために必要だった。あなたたちがいたからこそ、あたし、意志は成長ができた。そしてあの時は起きた悲劇にあなたをここに閉じ込めてしまったけど、でもいつも虫は動いていて、そしてだから心はいつだって求めていた、新たなる心の色。かつて見た夢に繋がる場所。夢の続き。あの時はダメだった。でも人には無駄は無い。純粋な金属はだけど脆い。それは夢の喩え。不純物、挫折や苦しみ、後悔、それを混ぜた金属はだけど強い。強さを持って羽ばたくはあたし、希望なり。あなたは潰えた夢。でもあたしは意志であり、希望。意志が希望の色にその身を染めたのは、あなたをここへと閉じ込めてからの時間が無駄ではなかったから。あなたにキスをしたのは注ぎ込んだから。意志を希望を。目覚めて。強さを持って。過去の挫折や後悔、悲しみがあるからこそ、その夢は何よりも強く、広き空へと羽ばたいてみせる」



 羽ばたけ、夢よ。
 その哀しき過去を糧に。
 さすれば翼はどこまでもその空を飛んでいこう。





 あたしにはかつて夢があった。
 バレリーナになる事。
 でもアキレス腱を切って、その夢は潰えて、あたしはその夢を心の奥底に押し込んでしまったけど、でもいつも心はそれに飢えていた。何かがある度に心の中を虫が動き回っていたのだ。
 忘れられない夢。
 動けないあたしの心。
 どれほどに夢を諦めて、時間が経っただろう。
 だけど心の時間はあの時から流れてなどいない。
 見つけたかった、あたしの夢が繋がる場所。
 そして自分はもうバレリーナとして舞台に立つ夢は潰えたけど、バレリーナの先生として、たくさんの夢と可能性を育てる道を見つけて、かつての夢を糧に努力して、その道を歩き出した。


【END】


いつだって道は繋がっている。
過去に潰えた道。今歩いている道。
だからその悲しみ、弱さ、過ごした時間に無駄は無く、
故にそれを知る心は、汚れ無き心よりも遥かに強い。
純粋な鉄で打たれた刀よりも、混ざりものの鉄で打たれた刀の方が強いように。
知るから、こそ。

知るからこそ。


故にその辛き想いを抱きし翼を羽ばたかせろ。
どこへまでもその翼は飛んでいけるから。






シュガーポット

2005年09月01日 | 短編
『シュガーポット』

 どうしよう、このかわいいの?
 私は小首を傾げる。
 だってだって、シュガーポットの上に腰掛けて、角砂糖を食べているこの妖精がとてもかわいいんだもの。
 煎れた紅茶に入れる角砂糖が欲しいんだけど、もう今回は砂糖は無しで飲んじゃう。
 私は紅茶を飲みながら彼女を見つめる。とても小ちゃなかわいい妖精。ほっぺたもぷにぷに。
 どうしよう? すごく飼いたい………否、友達になりたい!
 でも人間の言葉、しかも日本語、通じるのかな? 日本に居るんだから通じるよね? あ、でも妖精界の言葉じゃないと無理? でも私には無理。だけどしゃべりたい!
「あー、えっと、その、美味しい?」
 私がそう訊くと、彼女はこくりと頷いた。
 それから両手についた砂糖を舐めている。本当にすごくかわいい。携帯で写真に撮っていいかな?
 私は本気で悩む。
 そしたら彼女はシュガーポットから立ち上がった。
「あ、わ、ちょっと、待って。もっと、もっと美味しいお砂糖、あるよ?」
 思わず言ってしまった言葉。
 彼女は大きなどんぐり眼をさらに見開いて、口を大きく開ける。
「ほんとぉー?」
 まるで硝子と硝子を打ち合わせた時かのような綺麗な声。私の胸は思わず高鳴る、この妖精の愛らしさに。
「あの、えっと、ちょっとその砂糖を買いに行ってくるから、待っていてくれる? あの、すごくすごく美味しいから」
 私は拳を握りながら力説する。どうしよう、一方でそう想いながら。
 彼女はこくこくと頷いた。
「えっと、じゃあ、そこのシュガーポットの中の砂糖、食べちゃっていいから、だから待っててね」
 私は言って、部屋を出た。最後に振り返った時には妖精さんはシュガーポットの中の角砂糖を見ながら涎を流していた。



 でもどうしよう?
 美味しい砂糖。
 高級な砂糖?
 でも妖精さんなんだから高級な砂糖の味を覚えたら、お金持ちの家に行ってしまうかも。自由に行けるはず。そしたら一般中流階級のうちには来てはくれなくなる!
 じゃあ、どうすればいい?
 うちだけ。私だけの砂糖? どんな砂糖?
 私は道の途中で止まって、考えた。腕組みして真剣に悩む。
 そしたらふと視界の端に映ったうちの両親がやっているケーキ屋さんのデコレーションケーキ。砂糖の人形。
 私はぱちん、と胸の前で手を叩いて、これだと想ったの。
 お店に入って、それからおどろく両親にお願いをして、砂糖の人形の作り方教わる。とりあえず簡単な砂糖のお人形。でも時間がかかりすぎるから、今は無理! 妖精さんが帰っちゃう。
 だから私はお店のデコレーション用の砂糖の人形を一個もらって、急いで帰ったの。そしたら妖精さんはじゅるりと涎を流しながらもまだ私を待ってくれていて、そして私があげた砂糖の人形をとても嬉しそうに食べてくれたの。
「気にいってくれた?」
 妖精さんはこくこくと頷く。
「あのね、私とお友達になってくれたらそしたらもっとあげるよ」
 妖精さんはこくこくと頷いてくれて、そして私は胸の前で両手を組んで、笑みを浮かべた。
 とりあえず明日から両親に砂糖の人形の作り方を習おう。
 こうして私はシュガーポット、というかわいい妖精さんと友達になった。
 


 シュガーポット。
 シュガーポットの上に座って、角砂糖を食べる妖精の事だそうです。^^
 本当にかわいらしい妖精ですね。^^
 教えてくださり、ありがとうございました。^^


 テレビでやっていた、ストップひばり君、面白そう。^^ 探してみようかな?
 図書館で借りてきたラッシュライフが面白いです。^^

演劇の終わり

2005年08月23日 | 短編


「好きだよ」
 ―――嘘。家に帰れば奥さんにも同じ言葉を言うのでしょう?
「君だけを愛している」
 ―――あたしの頭を撫で、あたしの身体を愛でたその手で、自分の子どもを平気で抱きしめているのでしょう?
「あたしだって、負けていないわ。あなたを愛している。あなたがあたしを想う以上にね。この想い、奥さんにも負けていないわ」
 ―――そして一番の嘘吐きはこのあたし。
 あたしは彼にベッドに押し倒されて、上着を脱がされ、下着のホックを外されて、今夜も彼に身体を愛でられる。
 喘ぎ声は本当は失笑。
 感じた事なんて無いわ。だけど男は馬鹿だから、ちょっと声を出したり、恥かしそうに顔や目をそらしてあげただけで喜んで、興奮する。
 そんなあたしの演技を撮るハンディーカムビデオだけがあたしの素顔を撮っているはず。そう、感じて、恥かしがって、そらしたその顔の先にビデオがあって、あたしはそのビデオに向かって、舌を出す。


 ノイズのように響くシャワーの音。
 熱い湯があたしの身体を撫でていく。
 シャワーの愛撫の方がこれまで寝てきたどの男よりもあたしを感じさせた。
 浴室から出て、バスタオルで髪と身体を拭いて、濡れた頭にタオルを巻く。うなじを伝う雫は流れるに任せた。
 部屋にはかすかに彼の吸っていた煙草の匂いと、精の匂いがした。
 隠してあったハンディーカムビデオのメモリースティックを机の引き出しから出した封筒の中に入れて、封をした。
 あて先住所は先ほどまでこの部屋にいた男の家庭。受取人は娘。
 手から零れ落ちた封筒は乾いた音を奏でて、あたしはベッドの上に倒れこむように寝転ぶ。
 これは、復讐なのだ。両親への。


 あたしは両親の愛情を感じた事は無かった。
 彼は温和な父親を、彼女は優しい母親を演じていた。
 父親は外資系企業の有能なサラリーマン。母親はその貞淑な妻。
 傍から見ればあたしという人間は恵まれた家のお嬢様だった。
 だけどそれは演技だったのだ。
 彼らが周りに見せていたのは幸せな家族、理想の家族という演劇。
 あたしはそれを理解し、そして彼らに見捨てられぬように一生懸命演技をし、そうしてあたしは壊れた。
 ある日、あたしは気付いたのだ。
 幼い頃から演技し続けてきた自分が何の感情も知らぬ事を。
 どうすればいいかわからなかった、人を愛する事、笑う事、信じる事。
 だからあたしは………決めた。
 壊そうって。
 あたしみたいな子を作らないように、幸せな家族ごっこをしている家庭を。
 ううん、嘘。
 本当はあたしはあたしが可哀想って、知っているから、自分が悲しいから、だから皆不幸にしたくって、それで壊しているんだ、おそらくあたしの家とは違って、そのままずっと幸せな家族ごっこをしていくはずだった、その演劇を。


 そう、皆、壊してやるんだ、他の幸せな家庭、全部。何も知らずに自分が愛されていると信じきっている子どもの心、妻の幸せ、あたしが無くして、得られなくって、欲しかったモノ、全部・・・・。


 ざまあみろぉ。



「だから殺した? 本当に君を愛してくれた人を? 幸せになるのが怖くって?」
 懺悔室の向こうの神父さまがそう言ったので、あたしは頷いた。
「あたしを彼は愛してくれた。でもあたしは、あたしはあたしがかわいそうだから、全部壊してきたのに、なのにあたしは愛されて…。だからあたしはあたしが今まで壊してきたように…あたしの、幸せを、壊して…」
 最後に神父様にあたしを警察に突き出しますか? と、訊いたら、彼はしないと言った。
 あたしは懺悔室を出て、そして警察に向かった。
 何もかも偽物だったあたしの人生の中で唯一手に入れた彼の愛。
 壊した愛。
 失った愛。
 あたしは愛される事を知って、でも愛を無くした事が悲しくって、だから教会に行った。神父様は言ってくれた。こんなあたしでも神様は愛してくれる、と。
 神の愛を胸にあたしは自首をする。そうすればあたしは彼の愛を取り戻せるから。



 ――――END



 モンスターの最終回って、実はよく意味がわからないんですよね。(^^;
 でもあの終わりのシーンは好きですけど。
 そしてトゥルー・コーリング、ビデオに撮ってて、モンスターが終わって、どうなってるかな? と想って、そこにチャンネルを合わせたら、犯人を見てしまった。。。。(--;
 さ、もう寝よう。(--;

call my name  私の名前を呼んでください

2005年08月14日 | 短編
 ねえ、人魚姫。
 あなたは自慢だった美しい声を失って、王子様に真実も自分の想いも伝えきれずに泡となって消えて、辛くは無かったの?
 私はダメ。
 私はそんなのは耐えられない。
 だから私は連れて行くの。
 恋しい人を、連れて行くの。
 ―――好きだから。
 好きな人には何をしたって、許されると私は思うから。
 だって好きなんですもの………。
 私はあなた事が好き。
 好きだから、あなたを私は連れて行く。
 私が今もあの時からずっといる、深い深い暗く冷たい海の底へ。



 ―――――call my name  私の名前を呼んでください………



 別にそれは特別な事なんかじゃないと思うんです。
 ちょっと前にあばずれで有名な女性歌手(私達の母親の代では少しぐらい人気があるような感じだけど。っていうか私だったら絶対に父親の方へ行っている。私ならいい年をしたおばさんの癖にあんな若作りして、未だにお盛んなあばずれ女が母親だなんて嫌だもの。最近では血も争えなくって娘も同じような事をしているようで…。(汗))がびぃびぃっときて、結婚したとかどうとか言っていたけど、そういうのって実は違うと思う。
 一目惚れっていうのは前もって自分の中にされていた準備にそってするもの。
 私の場合は背が高くって、髪が黒で、短くって、じゃらじゃらした、見た目だけの軽い馬鹿そうな今時の若い男じゃなくって、芸術系の青年だけど、実はスポーツもできるんです、っていうような感じの硬派で爽やかな人が良くって、そういう人が私の好みで、それは私の中に明確なビジョンとしてあって、そして私はそれにぴったりとくる人を見つけたんです。
 私達は高校の部活の合宿で来ていて、それで部活の練習で浜辺で走っていたら、ちょっとドジをして私は右足を捻挫してしまって、そしたら堤防に座って絵を描いていた男の人がすぐに飛んで来てくれて、それで私の足の手当てをすると共にひょい、って軽軽しく私の身体をお姫様抱っこしてくれて、とにかくそういうのがすごく良くって、それだけで私が彼に恋をする理由には充分で、はい。
 でもだからって私があの人に対してどうこうできる訳が無くって、本当に私は、
「失敗したな~」
 私は合宿の場である旅館の縁側に座ってへこたれていた。
「なに黄昏てるのよ?」
「叶う事の無い恋に」
 両手で抱え込んでいた膝に埋めていた顔をあげて、私は友達に答えた。
「ああ、あの美大生? あれは確かにあんたの好みにぴったりだったよね」
「でしょう? でも逢えない。聞いておくんだった、住所とか、なんとか」
「ああでもさ、あの人、絵を描いてるんでしょう? だったら明日も居るんじゃない、あそこ?」
「えぇ~。でも昨日までは居なかったんだよ?」
「だからさ、昨日までは違う場所で描いてて、それで今日からはそこって。その可能性あると思うよ?」
「あー、うん」
 こくりと頷く煮え切らない私の背中を彼女は叩いた。
「もう。しゃっきりとしなさい。しゃっきりと。まずは明日のためにその1.お風呂に入って、からだをしっかりと洗って、綺麗な下着を着ましょう」
「んな。ななななな何を?」
「だってそのまま一夜って事もあるじゃない。ん? 夏なんだし! 海なんだし!!! かぁー、羨ましい。あんたの処女はあたしが狙っていたのに!」
「こ、殺すよ?」
「冗談よ。ああ、ちなみにお勉強するんだったら、あたしが持ってきた本を貸してあげる。ビデオはお金を入れても動かないのよね」
「って、どうして知ってるのよ?」
「あら、そういうのも旅のお楽しみの一つじゃない♪」
「ばーか」
 私たちはくすくすと笑いあう。
「にしても、これって運命?」
「はい?」
「や、だってここを今年の合宿の場所に選んだのってあんたじゃない。だから偶然という名の必然、運命って? あんたの選んだ場所でそういう人に出会えるなんて」



 ああ、そうか。彼女は知らない。
 私がここを選んだ理由を。
 ううん、彼女だけじゃなくって、他の皆も。
 この海に遊びに来ている人たちも。
 知っているのは私のような関係者と、そして、憎たらしいここの地元の人たちだけ。
 だから私は絶対に忘れないんだ、ここで起こった事を。
 絶対に。



「どうした?」
「ううん。それよりもお風呂行こう」
「ん」
 私は笑いながら縁側から立ち上がった。


 続く。
(少しずつ書き足していきます。)


 万博のお土産に色んなパビリオンの冊子をもらいました。活字中毒の私は現場に行かずともそれだけで満足だったりします。^^
 そしてやっぱり民俗学とかやりたいな~と。^^
 ちなみに私は愛知県民の癖に万博に行く気ゼロで、一時間足らずで行ける名古屋城にも行った事が無いです。名城公園は昇段試験とかで何度も行ってたんですが。



 なんか、うちのあちこちに白いあざらしが増殖中です。妹が何だか集め出した。
 そしてその白あざらし、しろたんにちゃっかりと癒されていたりします。顔、かわいいですよね。(笑い
 モリゾー、キッコロのアニメや、最近見えなくなった皇帝ペンギンの赤ちゃんの映像にもすごく癒されますが。
 本当にあの皇帝ペンギンの赤ちゃんのCM、かわいいです。