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第1話(1)

 フランス共和国の日々(1)

 朝靄が立ちこめている。
まだ薄暗い中、ギイ・ジュベールは馬を引き立て、川縁に降りていく。

 ここはフランス、ノルマンディ地方。
9月、あたりはもう秋の気配が漂い、肌寒い。

 ギイは身震いをして馬をせかせ、水を飲ませる。
家に戻り、馬小屋の掃除をし、馬に飼葉を与え、ブラッシングする。

 朝の一仕事を終え、土間でチーズ、堅パン、牛乳の朝食をとる。
家族は5人、生粋の農夫の父親、お祈りを欠かさない母親、志願して国民衛兵になり、今は家に居ない兄ピエール、3歳下の妹マリーだ。

 「ギイ、裏の荒地の開墾、急いでくれや。」
「霜が降りる前に、リンゴの苗木を植え付けせにゃならんからな。」

 馬に鋤を取り付け、地面を掘り起こす。
石の多い、固い痩せ地なので、中々はかどらない。
馬の首筋に汗が噴き出す。
根を張った木株の掘り起こしが、また一仕事だ。


 一休みして、水筒の水を飲む。
ボカージュの向こうに畑が見える。

 ジュベール一家は小麦、トウモロコシや野菜を作っているが、税金を払えば、自分たちがやっと生活していくので精一杯だ。
今、開墾している土地でリンゴの収穫ができるようになれば、生活も少しは楽になるはずだ。


 長い労働の一日が終わり、ランプのそばで食事をする。
一日2食だ。
ジャガイモとキャベツ、たまに豚肉の入ったスープと堅パン、牛乳だ。

 父親は大瓶からワインをコップに注ぎ、一杯やる。
きまって革命礼賛の話になる。

 「革命の前は、僧侶や領主に搾り取られて、鼻血も出なかった。」
「しかし、十年前の土地改革でわしらは自分の土地を手に入れることができたんじゃ。」
「裏の土地は国外に逃げ出した貴族のものだったが、絶対に手放さん。」

 母親は黙って十字を切り、繕い物を始める。
マリーは読み書きの練習を、ギイは作業具の修理をする。

     
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