戦争中もIJPCのプラント建設に関し、日本とイランの間で何度も交渉が行われた。
日本側は精算を、イラン側は建設再開を、繰り返し主張した。
83年2月、戦火が一時的に下火になったことから、日本側は工事再開に同意し、再開の予備調査を始めた。
運悪く、ちょうど担当工事が終わったばかりの初田は、調査隊の1人に選ばれた。
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4年ぶりのアフワーズは、すっかり様変わりしていた。
空港では軍用機が忙しく離発着し、街中には砲爆撃の跡が残っている。
人々の表情は険しい。
アフワーズからバンダル・ホメイニ(旧名バンダル・シャープル)に至る道路沿いには、多くの赤茶けた戦車や軍用車両の残骸が砂をかぶっている。
“これは大変なところに来てしまったな。生きては帰れないかもしれない。”
初田は生まれて初めて感ずる“戦争のにおい”に圧倒されてしまった。
バンダル・ホメイニのサイトでは、イラク機による爆撃の跡がそこかしこに見られる。
いくつかのタワーは倒壊し、ペシャンコになった構造物もある。
「やれやれ、部分的に作り直すのは、新しく作るより手間と時間がかかるぞ。」
早速、手分けして被害状況の調査を始める。
対岸のバンダル・ホメイニ港は軍需物資や生活物資の重要な荷揚げ港になっている。
空襲警報が鳴る。
びっくりして見上げるが、雲1つない真っ青な空に敵機は見られない。
陸側からF-4ファントムが2機、衝撃波を残しながら海の方に飛んで行く。
突然、港内に水柱が上がる。
一呼吸置いて“ドン!”という腹に響く音。
「最初の頃は、敵機が飛んできて爆弾やロケット弾を落としていきましたが、この頃はこちらの防空体制が強力になったので、敵さん、遠くからミサイルを撃って、すぐ逃げて行きますよ。」
NPC(IJPCのイラン側会社)の技師が説明する。
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