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第1話(2)

 Sボート戦隊(2)

 独ソ戦が始まって1年以上過ぎた。
最初、数週間で終わると言われていた戦いは、ますます激しくなってきている。

 学友達も次々召集され始めた。
ヒトラー・ユーゲントの海洋団で一緒にヨットを走らせたレンセンにも、召集令状が来た。

 夜、寮の一室でささやかな壮行会が開かれた。

 「我らが友、レンセン君の出征を祝って乾杯!」
「1年後には、またここに戻ってくる。土産話を持ってな。」
「勝利を!」
威勢のよいかけ声とは裏腹に、会話は弾まなかった。


 深夜、内庭でレンセンと話をする。
「東部戦線に回されたら、生きては帰れないだろう。」
「我がドイツ軍は不敗だ、クリスマスまでにはロシアを叩きのめすさ。」

 「フランスとの戦いには正当性があったが、ソ連との戦いは間違いだよ。」
「しっ、寮内にもナチ党のシンパがいるんだ。言葉に気をつけろ。」

 遠くにサイレンの音が聞こえだした。
「元気でな。」
「あゝ、またここで会おう。」

 ハンスはその夜、なかなか寝付けなかった。
“自分もいずれは召集される。”
“国民の義務として出征するのにやぶさかでないが、風の便りに伝わってくる、雪と泥の東部戦線には行きたくない。”

 ハンスの父は、ハンブルクで造船技師として働いている。
その父の、前の大戦での戦場体験の話も、重くのしかかる。

 “よし、今のうちに海軍に志願しよう。”
“Uボートに乗ることになるかもしれないが、その時は‐死なば諸共‐で、諦めがつく。”

     
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