島の基地コントロールセンターで、IJPCサイトでのカウンターパートナーだったラシカリに、ばったり出会った。
「やあ、元気そうだね。」
「ハッサンもお元気そうで。プラントの工事再開の関係でこちらへ?」
ラシカリはすっかり日焼けをし、精悍な顔つきになっていた。
今はイラン海軍の中尉として、島周辺を哨戒するミサイル艇の副長をしている、という。
幹部学校での教育、訓練の後、ここに配属された、とのこと。
以下、彼の語る“ラシカリ中尉奮戦記”である。
-------------------------------------------------
我が祖国、ペルシャを侵略したフセイン・イラクを粉砕する役目がいよいよ回ってきた。
配属されたのは、プーシェルに基地を置くミサイル艇だ。
艦対艦ミサイルを2基装備し、33ノットの高速が出せる新鋭艦だ。
しかし、それを動かす人間のレベルは、がっかりする状態だった。
艇長は予備役から引っ張り出されたロートルだ。
下士官、兵の技量も未熟で、やっと艇を動かせる程度だった。
「艇内にあった装備のマニュアルを不眠不休で読んで、下士官、兵と協力して任務に就けるようにしました。」
「JSPCでの経験が役に立ちました。」
何とか様な状態になった頃、カーグ島海域の哨戒任務が下った。
ミサイル艇は、島の西海域をパトロールする。
イラク海軍は無きに等しいので、イラク空軍機の警戒だ。
防御兵器として、レーダー連動の高角砲と機関砲を持っているが、ミサイルに対しては無力だろう。
レーダーに写る輝点(ドット)の情報を、その都度本土の情報センターに送る。
ある日のパトロールの最中だった。
西方から高速で、まっすぐ島の方向に近づく2つのドット。
「あやしいな。」
警戒していると、ドットから小さな点が離れた。
「ミサイル発射だ。島に連絡しろ!」
ミサイルは海面上を低空で飛ぶので、追跡は困難だ。
エグゾゼ・ミサイルはマッハ0.95、40キロを約2分で飛ぶ。
一瞬の気の緩みが命取りになる。
そのミサイルは、カーグ島沖のタンカーを狙ったものだった。
参考図:「ミサイル艇」、イランBing画像
最新の画像もっと見る
最近の「ペルシャ湾波高し」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- クリミアの歴史(7)
- 「オリエント急行」バルカンを行く(9)
- ウイルスって何だろう(6)
- 不死身の通信ネットワークを構築せよ!(6)
- ヒトラーのいない第二次世界大戦(7)
- 不思議な病気(8)
- 秀吉の野望と挫折(9)
- 生命の源「アミノ酸」(6)
- 「ドイツ民主共和国」の消滅(8)
- ナイルの水争い(8)
- ドン・カザーク(19)
- 貧者の空軍(9)
- 地震って何?(7)
- 遥かなる海へ(16)
- 北軍兵士の見た「風と共に去りぬ」(12)
- 脳内麻薬を捜せ!(9)
- 19世紀パリの光と影(9)
- 若宮丸の航跡(9)
- 原爆スパイ(8)
- 「北京の55日」番外編(8)
- 「地球外生命」はいるか?(5)
- 「林彪事件」の謎(8)
- 金(きん)(8)
- 国歌いろいろ(6)
- 悪党(鎌倉末期)(6)
- 老化を防げ!(5)
- 森の中に消えゆくトラ(4)
- テスラー成功と挫折(0)
- 国境とは?(25)
- 日記(0)
- 大西洋(696)
- ソマリアの青い海(20)
- 吹雪のバルト海(24)
- ペルシャ湾波高し(24)
- ロック・オン(20)
- ワレ「雪風」ト共ニ(20)
- 騎兵隊、前へ!(26)
- 惑星の動きを探れ!(19)
- 東方見聞録序章(25)
- 元素を捜せ!(25)
- レアメタルは戦略物質だ!(6)
- 種はどこから?(17)
- 智の都、アレクサンドリア(20)
- 文化大革命の嵐(22)
- 世界は微生物で満ちている!(19)
- 連合艦隊の誕生(17)
- 鉄砲見参!(18)
- 成功は失敗の始まり(17)
- 黒船の影(19)
- 石油の一滴は血の一滴(15)
- 前門の虎、後門の狼(8)
- 月をめざして(18)
- 水の不思議と太陽の恵み(17)
- がんの正体をあばけ!(10)
- 旅行(0)
- グルメ(0)
バックナンバー
人気記事