ラシカリ中尉の話は続く。
その日は早朝のパトロールだった。
海は穏やかだが、朝からの強烈な日差しが照りつけている。
9時頃、レーダースクリーン上にドットが現れた。
約100キロ西方だ。
まっすぐこちらにやってくる。
スピードから、敵のミラージュF1と思われる。
「敵からレーダー照射(lock on)されました!」
レーダー兵が叫ぶ。
「戦闘用意!」
艇長の指令を待たずに、命令を下す。
我が艇から40キロのところで、敵はミサイルを発射した。
「あと2分で着弾します!」
砲兵はいつでも発射できる態勢だ。
心臓が早鐘のように鳴る。
敵機からのレーダー照射が消えた。
ミサイル自身のレーダーがONされたのだ。
“あと十数秒だ!”
「チャフ発射!」
レーダー波を妨害するチャフの雲が発射される。
機関砲弾が、あらぬ方向に撃ち出される。
ミサイルの青色の排気光が海面上を少し上下に動きながら、突っ込んできた。
近くの柱にしがみつく。
“ドスン!”
時間が止まる。
大爆発は ------------ 起きない。
“よかった、不発だった。”
しかし、ミサイル本体は船体を切り裂いた。
破片と一緒に飛び散ったミサイルの燃料が激しく燃えている。
着弾点の近くに居た砲兵は四散していた。
“ジハード(聖戦)で死んだんだ、天国に行けるぞ。”
炎が大きくなる。
「消火急げ!ミサイルや弾薬は海に捨てろ!」
ポンプで海水をくみ上げ、延焼を防ぐ。
化学消化剤も投入し、火災は下火になった。
そして3時間後、無事カーグ島に帰投できた。
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ラシカリは顔をほてらせ、話を終えた。
「厳しい初陣だったね。」
「フセインを吊すまでは戦いますよ。」
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