ロシア南部におけるソ連軍冬季大攻勢は、マンシュタイン元帥の巧みな反撃により、頓挫した。
ドイツ軍はハリコフ、ミウス川の線まで、ソ連軍を押し戻した。
しかしカフカスでは、ドイツ軍はノヴォシ-スク橋頭堡に押し込められてしまった。
橋頭堡を海上から封鎖すべく、ソ連黒海艦隊が出撃してきた。
これに対応すべく、Sボート戦隊はクリミア・ケルチ半島の根元のイワン・ババ基地に進出した。
基地は岩山を背後に控えた、殺風景な小さな港のある基地だった。
早速、出撃準備に入る。
燃料、弾薬、水・食料、補修材、消化剤、医薬品などを積み込む。
機関、魚雷、火砲、通信機などの調整も欠かせない。
ハンスが通信長として乗るS49の艇長は、ゲルハルト中尉だ。
クラスマン副長と共に、イギリス海峡での実戦経験を持つ。
「ハンス、空軍からの情報が陸上局を通じてあるかもしれない。常にチェックしろ。」
日没後、5隻のSボートはパトロールに出た。
かすかな星明かりの中、前を進む艇の赤と緑の船尾灯を頼りに、単縦陣で進む。
カフカスの黒々とした山並みが近づいてきた。
「機関停止!」
うねりに乗って艇体が上下する。
舷側を叩く波の音だけが聞こえる。
何も発見できない。
「レーダーがあれば助かるのですが。」
「大型艦やUボート優先なのさ。我々はいつもワリを食う。」
結局、敵と遭遇することなく、明け方帰投した。
昼間、野菜、果物を求めて近くの町に出かける。
町には前年の戦闘の跡が生々しく残っており、がれきの山がそこかしこに見える。
少ない住民の目は、敵意に満ちていた。
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