アメリカ軍はニュージョージア島対岸のレンドバ島に重砲陣地をつくり、ムンダの日本軍陣地への砲撃を開始した。この一日中続く重砲撃は、艦砲射撃や爆撃以上に、日本軍を弱らせた。
コロンバンガラ島の軍司令部は、この155mm榴弾砲20門から成る重砲陣地を破壊すべく、レンドバ島への逆上陸を企画した。しかし、大規模攻撃はリスクが大きすぎたため中止され、かわって少人数による特別攻撃隊が編成され、その輸送命令が魚雷艇隊に下った。
2隻の魚雷艇に、少尉に率いられた15名の海軍陸戦隊員が乗り込み、1隻が護衛についた。陸戦隊員は皆、体格がよく、強そうな顔をしているが、緊張は隠せない。
雲の多い暗夜の中を慎重に進んだ。行程の中ほどに来たとき、カタリナ飛行艇が上空の雲間に現れた。白い航跡を見つけられたら、1巻の終わりだ。速度を緩める。
哨戒中の駆潜艇か砲艦とおぼしき艦影が現れては消える。皆ピクリとも動かず、前方を見つめる。4時間かけ、目的の島に近づいた。左舷方向の岬の先がほんのり明るい。敵の停泊地だ。
久保田艇長と少尉が懐中電灯で海図を調べている。
「曹長、この地点で降ろしてくれ。」
「そこは岩礁が多く、近づけそうもありません。あの入江でどうでしょう。」
「敵陣地まで10キロはあるな。しかたがない。」
敵の気配はない。ゴムボートが下ろされて、特攻隊員が乗り込む。各自が最新式の自動短銃を装備している。重そうな爆薬を背負った兵も見られる。
「ご武運を、少尉殿。明日、0:00に迎えに来ます。」
魚雷艇隊は島沿いに10キロほど南下し、マングローブの林に身を潜めた。
〔参考文献:種子島洋二著「ソロモン海「セ」号作戦」、光人社NF文庫〕
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