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第6話(5)

アンツィオ橋頭堡(5)

  敵の監視ポストは見えない。慎重に地雷を探りながら、道に近づく。
「ヒュ」
かすかに車両群が走行する音が、地面を伝わってくる。
「退避!」

 コーナーを曲がったところから、オレンジ色のほのかな光の列が近づいてくる。
ゴーという音と共に、先頭の装甲車が通過する。
後にトラック列が続く。
皆、片方のヘッドライトは完全に覆っており、もう一方のスリット状のヘッドライトの光で走行している。連合軍の空襲を恐れてのことだ。これなら、オートバイの隊列と見間違えやすい。

 道路を1人ずつ越え、オリーブ林に潜り込む。

 あたりが明るくなる。 穏やかな風景だ。
アンツィオ方面から響く砲声と、上空を我がもの顔で飛び回る連合軍のヤーボが戦争を思い出させてくれる。

 太陽が沈むと、行動開始だ。
くねくねとした山道をあえぎながら2時間ほど登り、目的地の尾根に着く。
大尉が観測点を2ヶ所設置する。
アンツィオ方面がぼんやり赤くなっている。丘陵地帯は真っ暗だ。

 真夜中に、アンツィオ港に上陸用舟艇が補給物資を揚陸する予定とのことだ。
ゴトーは尾根を降りたところで、見張りにつく。1時間ほど経過した。

 ドン! 腹に響く砲声。 3分ほどして ドン!
5発撃ったところで静かになった、と思ったら味方の偵察機が飛んできた。

 「引き上げだ!」
一気に道路まで降りる。

 1人ずつ道路を駆け抜けたが、観測班の1人がつまずいて倒れた。
タタタタタ!  とたんに暗闇から銃弾が飛んできた。
倒れた兵士は、起き上がって2、3歩行った所でバタリと倒れた。
後2人残っている。

 「軍曹、引き上げよう。情報の方が大事だ!」
「だめです。2人が捕まったら、拷問され、上陸地点がバレますよ。」
「モリモト!援護する。後方から道路を越えてこい!」
チカチカする発光点に向って、全力で射撃する。

 観測班の1人と一緒に、モリモトが足を引きずりながら来た。
血止めをして、肩をかす。銃弾が追いかけてくる。
湿原にたどり着いた所で、重々しい重機関銃の響きが加わった。
ド、ド、ド、ド 敵の装甲車だ。

 後は道案内のイタリア人を頼るしかない。あちこちで照明弾が上がる。
夜明けの30分前、上陸地点の岩場に着いた。

迎えの艇に乗り込む。
「助かった!」
「もう、ハリウッド映画出演はこりごりだよ。」

     
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