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第4話(4)

テト攻勢(4)

 秋山は、河川機動軍(Mobile Riverine Force)の兵站部のあるドンタンで補給品を受領するため、ブラドッグと一緒に出かけた。
ドン、ドン
砲声が響く。
所々に黒煙が上がっている。ガンシップが飛び回っている。

 途中の広々とした稲田で、海兵隊の装甲車群が掃討作戦をしていた。
遠くの森に向け、稲田の中を数台の装甲車が突っ走る。
刈り入れ前の稲田は、キャタピラにより、何条もの幅広い泥道に切り咲かれていた。

 稲田の中では数人の農婦が、通り過ぎる装甲車のそばで、装甲車のほうを見向きもせず、作業している。
逃げないことが自分の身を守ることだ、とわかっているのだ。
「ひどいもんだな。」
「故郷のアイオワの麦畑でこんな情景を見たら、銃を取るよ。」

 ドンタンで補給品を受け取った後、基地そばの街に出た。
子供たちが集まってくる。
チョコレート、キャンディ!」

 マーケットに出た。多量の果物、野菜。魚、米、豚などの食料品や雑貨が、所狭し、と並んでいる。
アメリカ製のものも混じる。たぶん、横流し品だろう。
薄暗い店の奥に、軍需品が並んでいる。
なんと、中国製のAK-47ライフルやアメリカ製の手榴弾もあった。

 目つきの鋭い、腕に刺青をした14,5才の少年が寄ってくる。
SEX、1 shot 5 dollars、OK?

 広場で、だらしない格好をした政府軍の兵士たちが座り込んで、バクチをしている。

 帰り道で、秋山は沈んだ気持ちになった。
“自分の国を命がけで守ろうとしない奴等のために、なぜ俺たちが血を流さねばならないんだ。”

     
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