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第4話(2)

逃避行(2)

 東プロイセンは引き裂かれつつあった。
西からのソ連軍第3白ロシア方面軍は、ドイツ軍の堅固な要塞地帯を突破して、州都ケーニヒスベルクに迫っていた。
南からの第2白ロシア方面軍の右翼はバルト海に達し、ドイツ中央軍集団を孤立させてしまった。左翼はポーランドを横切り、ドイツ本土に迫った。

 事ここに到って、ようやくドイツ軍令部は、東プロイセン地域からの軍隊および民間人の撤収を決定した。
1月23日、デーニッツ海軍最高司令官は「ハンニバル作戦」を発動した。
50万人のドイツ軍関係者、傷病兵と150万人の民間人が対象の大撤収作戦だ。

 佐慈らは南からソ連軍に追い上げられながら、ダンツィヒへと急いだ。
1日40キロのペースで歩く。
足がはれて、夜寝るときも長靴を脱げない。

 カールは熱を出して苦しそうだ。
「ここで落伍したら、確実に死ぬぞ!」
「ダンツィヒでは、温かいスープとお湯のシャワーが待っている。」
「それと美人の看護婦が、な!」

 ダンツィヒに近づくにつれ、避難民と移動する部隊で、道路は大変な混雑だ。
そして、ソ連機が死を振りまく。
佐慈らは陣地を脱出してから4日目に、ダンツィヒに到着した。

 ダンツィヒは超満員の状態だった。
屋外にも人があふれている。
やっと捜し出した撤収作戦本部には、乗船許可を求める長い人の列ができていた。

 空襲警報のサイレンが鳴り響く。
人々はクモの子を散らすように逃げる。
佐慈らは道路際に掘られた退避壕に走りこむ。

 ドンドンドン
空一面に高射砲の弾幕が広がる。
破裂ドカして落下してきた高射砲弾の破片が石畳を打つ。
ドカドカ
爆撃機は港を狙っているようだ。
   
     
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