再び北上しはじめて１分後、敵艦隊は、今度は右舷方向に向け、激しい砲撃を開始した。
「やあ、味方の攻撃だ！」
久保田艇長はブリッジから身をのりだし、前方を覗った。
閃光と爆発音、曳光弾の帯で、艦隊周辺は包まれている。
突然、ひときわ高い水柱が艦隊の中に生じた。腹にこたえる爆発音が続く。
「命中！」
敵艦は火災を起こしたが、そのまま走り去った。
あとの海上には、小さな火が３つ見える。
「敵が引き返してこないうちに、味方に合流しよう。」
戦闘海面に着いたとき、味方の魚雷艇２隻はすでに沈んでいた。もう１隻も被弾して、かなりやられている。
「こりゃあ、ひでえ。」
艇内はめちゃ、めちゃで、３人の乗組員はズタズタに引き裂かれ、血の海に沈んでいる。
海上に浮かぶ漂流者を救助し、大破した艇を曳航して、帰途に着く。
次の日、8月6日の夜、増援兵と補給品を積んだ日本の第４駆逐艦隊４隻と、それを阻止しようとしたアメリカ軍の駆逐艦隊６隻の間に、ベラ湾海戦が発生した。日本艦隊は先手を打たれた上、敵の巧みな戦術のため、完敗した。駆逐艦３隻を沈められ、陸兵１千名も海没した。
