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第5話(1)

水路の戦い(1)

 テト攻勢は、解放戦線と北ベトナムにとり、戦術的には失敗だったが、戦略的には大成功だった。
アメリカ国民に政府への不信が芽生え、厭戦意識が高まり、反戦運動へと発展していく。

 この大攻勢により、メコンデルタでも、敵に打撃を与えるには河岸だけでなく、ベトコン支配地域に侵入して索敵、撃滅する必要が生じた。
SEAL(海軍特殊部隊、あざらし)が水路から侵入、敵を捕捉し、陣地を破壊する作戦だ。

 秋山らのPBR隊も、この作戦に投入された。
砲艦らの支援艇は、水深の浅い水路には入れない。
艇隊は各艇に6人のSEAL隊員を乗せる。

 午前の満潮時、ベトコン支配地域のタンタン島の水路についた。
水路幅は数十mある。
太陽が背中を焼く。
河岸はマングローブやヤシなど、濃い緑の熱帯雨林に覆われている。

 トットットットッというエンジン音だけが響く。
秋山はヘルメットを締め、機銃の安全装置をはずした。

 半ば焼け落ちた村が現れる。
先頭の艇が敵を発見したらしく、銃撃を始めた。
村を包囲する形で、艇隊は2つに分かれ、河岸に突っ込む。

 SEAL隊員が水中に飛び込み、身を低くして陸地に進む。
“タッタッタッタッ” 敵の銃撃だ。
ヤシ林に敵の発射光が光る。
「あのヤシ林だ!」

 艇隊は全力で火力をヤシ林に集中した。
発射音で耳が痛くなる。
ガンシップが数十mまで降下し、機銃弾、ロケット弾を叩き込む。
ヤシ林は黒煙を上げ、燃え出した。
チラチラと逃げる敵の姿が見える。

 敵を掃討したSEAL隊員達が、泥だらけになって帰ってきた。
2人負傷している。
ブービィ・トラップ(仕掛け爆弾や仕掛け穴)にやられた、とのことだ。

 艇隊は本流に戻り、足の踏み場も無いほど散らばった、薬莢を捨てた。
     
     
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