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第5話(2)

撤退(2)

 深夜、問題の入江に近づく。暗闇に動きがある。

 「前方木陰に魚雷艇らしきもの。」
補助エンジンで近づく。
突然、入江が騒がしくなり、敵がエンジンを始動する。ドッドッドッドッ‐‐‐。

 主エンジンに切り替え、急速に接近する。
照明弾をあげる-いつもの逆だ。
2隻の敵艇が、影絵のように浮かび上がる。

 各艇の機関砲が一斉に火を噴き、敵魚雷艇のグレーの船体に突き刺さる。
敵艇はオレンジ色の火の玉に包まれ、燃え出した。
もう1隻は激しく応射しながら、離脱した。

 1隻を見張りに残し、403号艇ともう1隻は陸地に近づき、暗闇に向ってさぐり射ちを始めた。タタッ、タタッ、タタッ‐‐‐。曳光弾が密林に吸い込まれる。

 ドドドドッ、突然、敵の機銃音に背中を叩かれる。
「敵だ!」
危急に気づいた敵の魚雷艇が、何隻か駆けつけてきたのだ。

 味方の、見張っていた1隻は集中射撃を受け、よたよたと逃げ出す。
「退避!」
陸地に乗り上げる危険を承知で、岸辺ぎりぎりで突っ走る。
不気味な銃弾のうなり声に追っかけられる。

 1隻は帰投しなかった。
 
     
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