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第1話(2)

シェイハン石油出荷基地(2)

 イランによるホルムズ海峡封鎖の可能性など、中東情勢は不安定なため、日本としても原油輸入先を中東以外に求める必要性が生じた。
カスピ海原油もそのうちの一つで、岡部の乗る“武蔵丸”も、今回初めてシェイハン石油出荷基地に航行してきたのだ。

 すぐに陸上の給油管との接続作業を始める。
作業は山ほどある。
バラスト水の排水準備、給油配管システムのチェック、防火装置のチェック、不具合装置の交換、補給物資の搭載、煩雑な出入港と給油の事務手続き-------。

 「岡部、陸からの給油連絡はまだないのか?」
「まだ、ありません。」
「予定時刻はすぎている。基地管理センターに至急連絡しろ!」

 小林船長は苛立っている。
船では予定通りの行動が至上命題なのだ。
乗務員は、行動開始の5分前にはスタンバイ(準備完了)するよう、常に叩き込まれている。

 基地センターに問い合わせても、“準備中”の返事だ。
そうこうしているうちに、後から着桟したタンカーに給油が始まった。

 「ふざけている。センターにねじ込んでくる。」
船長と一緒にタラップを降り、バースに接岸していたランチに乗り込み、陸に向かう。
立派な3階建ての建物の中に、給油のコントロールセンターがあった。

 険しい表情のセンター長が現れた。
こちらの来意を伝える。コーヒーが運ばれてきた。
船長が、日本にとり、当地の原油が大変重要な意味を持つこと、一刻も早く荷積みし、本国に持ち帰りたいことなどを説明、“粗品”を渡した。

 「トルコと日本は友好国です。ご希望に沿うようにしましょう。」
センター長は立ち上がり、初めて笑顔を見せ、船長と握手をした。

 もう太陽は中天に達し、青い海面はまぶしく光っていた。
「一件落着ですね、船長。」
「どこの国でも最初の挨拶が肝心さ。」

     
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