6.東交民巷包囲(2)
徐らは刀を振るって、突撃する。
突然、バリケードの隙間から銃火がひらめく。
周りの仲間がバタバタ倒れる。
“俺達には神様がついているのに!”
思わず、伏せてしまう。
「殺(シャ)、殺(シャ)!」
雄叫びをあげ、第二波が倒れた仲間を踏み越え、突撃する。
一斉射撃が起こり、仲間が鎌でかられた麦のように倒れた。
さらに、第三波が突っ込むが、バリケードまで到達できない。
「引け、引け!」
籠城した区域を護る海兵隊員や義勇兵の指揮は、日本の
駐在武官、柴中佐がとっていた。
彼は、軽砲2、機関銃4、兵員らを適切に配置していた。
徐らは場所を変え攻撃を加えるも、犠牲ばかり増えるだけで、
進展はなかった。
ある時、夜襲により一区画を奪ったが、さらに強力な
バリケードを築かれてしまった。
「刀や槍では、どうしようもない。」
「清の官軍は援護射撃をするだけで、積極的に攻撃しないぞ。」
「俺たちはこの国のため、皇帝のために戦っているのに!」
実は、西太后や軍の幹部は、義和団の勢いがいつまでも持たない
と見越しており、あとの列強との交渉を考え、東交民巷への攻撃
を控えていたのだった。
地方の省も統制派が握っており、洋人への攻撃は抑えていた。
籠城戦も一か月がたち、徐達の士気は落ちていった。
包囲するだけで積極的な攻撃はせず、娘部隊の京劇に夢中に
なっていた。
参考図:「義和団民話集」、牧田英二他編集、東洋文庫、1987