gooブログはじめました!

第3話(1)

メコン・デルタ(1)

 シアトルから十数時間、ベトナムのタンソニュット空港に着いた。
強烈な日差し、乾季だというのに全体の空気がウエットだ。
空港は、秋山のような緊張顔の新兵、陽気な帰還兵、多数の軍関係者、市民で大変な混雑だ。

 海軍のトラックに乗り、河沿いに国道を走る。
河は満々と水をたたえ、滔々と流れている。
回りは一面の緑、水田と熱帯林だ。
市民のバスやバイク、3輪車が行きかう。
一見、平和な風景だ。

 突然、黒焦げの林が現れた。
爆弾や砲弾によるクレーターが、あたり一面にできている。
しばらく行くと、南ベトナム軍の哨所があった。
砂嚢で囲まれた中に装甲車を入れ、機関銃が周りを睨んでいる。
しかし、兵士に緊張感は見られない。

 トラックがスピードを緩める。
道路上に直径が4m、深さが1m位のクレーターが開いており、十数人の黒服を着、三角形の麦藁帽子をかぶったベトナムの婦女子が穴埋め作業をしている。
「ベトコンの地雷でできた穴さ。」
案内の水兵が教えてくれる。

 メコン河に面した町、ミトに着く。
メコン河は幅2キロもあろうか、褐色がかった水がゆったりと流れている。
ミトにはPBR部隊本部とPBR修理センターがあった。

 「アキヤマ・ジョージ、着任しました。」
「ごくろう、ジョー、Welcome」
指揮官のスミス大尉が握手してくれた。

 「君は第7隊のNo.12艇、カーター中尉の艇だ。」
兵站部で衣服などを受領した後、河岸に出る。
数十隻の哨戒艇、砲艦、支援艇が桟橋に並んでいる。
兵が忙しく動き回り、前線基地らしいあわただしさだ。

 目的の艇を見つける。
艇長のカーター中尉は、何かでいらだっていた。
秋山をじろりと睨みつけ、
「10分後に哨戒任務に出る。戦闘服に着替え、戻って来い!」

     
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「大西洋」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事