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第1話(1)

 われらが海、地中海(1)

 「フィロン、お前も、もう18才だ。皆を監督し、ローマに穀物を届けてくれ。」

 ここはローマ帝国の属州、エジプト第一の貿易都市、アレクサンドリアだ。
父は、ここで手広く貿易業を営んでいる。

 ナイル・デルタから小麦やパピルスを集め、イタリアや地中海各地に輸出するのだ。
また葡萄酒やオリーブ油、毛皮、レバノン杉などを輸入している。
遠く東洋から運ばれてくる物品も扱う。

 今回父から言われたのは、税として収集した小麦を船に乗せ、ローマまで輸送する仕事だ。
属州総督府の役人が来て、船に積み込む小麦の量を調べる。

 輸送書類をもらい、小麦袋を船に積み込む。

 船は長さ20メートル程だ。
400個の袋が次々と奴隷の背中に乗せられ、船倉にはいる。
みるみる船が沈み、喫水が深くなる。


 地中海は10月から4月にかけては荒れる日が多く、航海は春から夏にかけてとなる。
「ローマがどんなところか見てこい。」
父が波止場まで来てくれた。

 30隻ほどが船団を組み、アレクサンドリアを出港する。

 船は中央部のマストに大きな横帆を持つ。
船乗りは6本のロープを器用に操り、港口を抜ける。

 左側から巨大なファロス大灯台がのしかかってくる。

 港を出ると、急に船が揺れだした。
しかし初めての航海による興奮と、帝国の都ローマへの期待で、私の胸は弾んだ。

  参考図:「アレクサンドリアの興亡」、ポラード&リード、主婦の友社、2009
     
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