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第2話(3)

 現地残留(3)

 3日後、北村らは針金で後ろ手に縛られ、トラックに乗せられた。
街中のインドネシア人達が、無表情に見つめている。
“冗談じゃあない、無実の罪で殺されてたまるか!”

 トラックは郊外の森にさしかかった。

 ”ガガッ”
トラックが前のめりに横倒しになる。
水たまりの穴に車輪を突っ込んだらしい。

 北村らも警護の兵士も放り出された。
無我夢中で近くの森を目指し、転がるように逃げる。
パン、パン
銃声が追いかけてくる。
前を走る男が、後ろから突き飛ばされたように倒れた。

 森の藪の中をめくらめっぽう走る。
息が切れたところで、茂みの中に身を潜めた。
遠くで叫ぶ声が聞こえる。

 ”インド兵だ、深追いはしてこないだろう。”
よろよろと立ち上がる。
手足が猛烈に痛い。

 1時間ほど、人目を避けながら、ジャカルタ方面に向かって歩いた。

 のどの渇きに耐えかね、小川で水を飲んでいるとき、村人に捕まってしまった。
村長らしき男の前に連れて行かれる。

 「ジェプン(日本人)」
「ダッチ(オランダ人)」
「バンタン!(助けて)」

 イギリス軍に引き渡そうか、迷っているのだろう。
頭をフル回転させ、必死に叫んだ。
「ルカナ、ルカナ、カワン(ルカナ中佐、友達)」

 浅黒い男の顔が緩んだ。
周りの男達に何か言うと、薄暗い家の中に入っていった。
手首の針金が切られ、水を与えられた。
ホッとしたと同時に、自分の人生が180度ひっくり返ったことを感じた。

     
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