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第2話(4)

空襲(4)

 佐慈のいた建物から100mほど離れた地区がやられた。
あたりは、爆弾でできたクレーターで月面のようだ。
建物は崩れ落ち、瓦礫の山だ。

人々は、手作業で瓦礫の片づけを始めた。佐慈も手伝う。
瓦礫に中から、遺体を運び出す。
遺体は道路際に並べられているが、破損がひどい。炭化しているものも多い。

 ベルリン大空襲は4ヶ月続いた。
500機以上の大編隊が15回も襲い、4万トンの爆弾を投下した。

 避難場所の地下室に集まる住民とも顔見知りになった。
若い男は兵隊、若い女は軍務、子供は疎開しているので、老人と婦人が多い。
「イギリス人は律儀だ。ロンドンに落としたプレゼント(爆弾)の何倍ものお返しをベルリンにしてくれる。」
「そのうち、“総統の新兵器”で形勢逆転するさ。」

 「昨日のリンデン街では、コーヒー豆の特配があったそうだ。」
「こう寒くてはコーヒーよりバターがほしい。ベルトの穴が1つ縮まったよ。」
「ゲーリングのベルトが縮まらない限り、特配はないよ。」
黒パン、牛乳、煙草、塩付け肉、砂糖、塩すべて配給だ。
クーポン券がないと生きていけない。

 ある日、ツォー駅と動物園との間にある対空砲塔を見に行った。
それは、60m四方の基礎の上に、高さが25mもある塔がそびえる大要塞だった。
厚さが2mの外壁で覆われており、内部には物質貯蔵庫や市民用のシェルターもある。
屋上には、105ミリ重高射砲4門の他に20ミリ対空機関砲、探照灯、レーダーが備えられていた。

 屋上からベルリン市街を見渡す。
そこここには廃墟が広がっている。午後3時というのに、薄暗い。
昨夜の爆撃の余韻の煙も重なって、ベルリンは灰色の薄汚れた街になっていた。
     
     
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