村にドイツ保安隊の将校が通訳を連れ、乗り込んできた。
全村民が兵士により、広場に集められる。
将校は尊大な態度で、皆を睨む。
「今から名を呼ばれたものは、即刻、手荷物をまとめ、ここに戻ってこい!」
将校はメモを読み上げ始めた。
名前を挙げられたものは、村長、司祭、村の有力者、教師、元軍人、学生、ユダヤ人達だった。
ソフィアの父の名も入っていた。
父は、20年前のソ連との戦争で勲章をもらっていた。
「さっさとトラックに乗るんだ!」
兵士にせき立てられ、名を呼ばれた男女がトラックの荷台に押し込まれる。
「お父さん!」
父はちらっと娘を見てほほえんだが、たちまち大勢の人に押され、トラックの中に消えた。
トラックは走り去り、連れ去られた人達が、再び村に戻ることはなかった。
ヒトラーがポーランド国家だけではなく、ポーランド人を徐々に消し去ろうとしていることが、明らかになる。
冷たい風が吹き始めた頃、教会の壁に通達が張り出された。
“本村から10月末日までに、小麦10トン、ジャガイモ1トンを総督府管理事務所に供出すること。義務を果たさない場合は、サボタージュとみなす。”
供出の代価として送られてきたのは、アルコール度の極めて高い安酒だった。
自然発生的にサボタージュ、破壊活動、テロが起こった。
ソフィアの村の近くの街道で、ドイツ軍のトラックが落とし穴にはまり、横転した。
ドイツ軍の小隊がやってきて、村民を広場にかり集める。
「この破壊工作を行った者を報告せよ。報告がない場合は人質を処刑する。」
無差別に3人の村民が捕まえられる。
夕方、村の広場にある立木に、人質3人の身体がぶら下がっていた。
参考図:「ワルシャワの反乱」、サンケイ出版、1973
最新の画像もっと見る
最近の「国境とは?」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- クリミアの歴史(7)
- 「オリエント急行」バルカンを行く(9)
- ウイルスって何だろう(6)
- 不死身の通信ネットワークを構築せよ!(6)
- ヒトラーのいない第二次世界大戦(7)
- 不思議な病気(8)
- 秀吉の野望と挫折(9)
- 生命の源「アミノ酸」(6)
- 「ドイツ民主共和国」の消滅(8)
- ナイルの水争い(8)
- ドン・カザーク(19)
- 貧者の空軍(9)
- 地震って何?(7)
- 遥かなる海へ(16)
- 北軍兵士の見た「風と共に去りぬ」(12)
- 脳内麻薬を捜せ!(9)
- 19世紀パリの光と影(9)
- 若宮丸の航跡(9)
- 原爆スパイ(8)
- 「北京の55日」番外編(8)
- 「地球外生命」はいるか?(5)
- 「林彪事件」の謎(8)
- 金(きん)(8)
- 国歌いろいろ(6)
- 悪党(鎌倉末期)(6)
- 老化を防げ!(5)
- 森の中に消えゆくトラ(4)
- テスラー成功と挫折(0)
- 国境とは?(25)
- 日記(0)
- 大西洋(696)
- ソマリアの青い海(20)
- 吹雪のバルト海(24)
- ペルシャ湾波高し(24)
- ロック・オン(20)
- ワレ「雪風」ト共ニ(20)
- 騎兵隊、前へ!(26)
- 惑星の動きを探れ!(19)
- 東方見聞録序章(25)
- 元素を捜せ!(25)
- レアメタルは戦略物質だ!(6)
- 種はどこから?(17)
- 智の都、アレクサンドリア(20)
- 文化大革命の嵐(22)
- 世界は微生物で満ちている!(19)
- 連合艦隊の誕生(17)
- 鉄砲見参!(18)
- 成功は失敗の始まり(17)
- 黒船の影(19)
- 石油の一滴は血の一滴(15)
- 前門の虎、後門の狼(8)
- 月をめざして(18)
- 水の不思議と太陽の恵み(17)
- がんの正体をあばけ!(10)
- 旅行(0)
- グルメ(0)
バックナンバー
人気記事