[ ギュンター兵長の話 その3 ]
我が分隊は、半ば崩れたトーチカを木材や砂嚢で補強し、応急陣地に仕立てた。
敵陣地は意外と静かだ。
「このまま、放っておいてくれると良いんだが。」
「そうはいかないよ。」
5月5日朝、とうとうソ連軍のセヴァストポリ攻略戦が開始された。
すさまじい砲撃だった。
黄色い閃光と爆発が連続して起こり、爆煙と鉄や火の混じった土を舞上げた。
大地が振動し、我々は穴に身体を縮めて入り、土にしがみついていた。
あたりは乳白色になり、何も見えない。
弾幕が後方に移動していった。
「敵が来るぞ。銃座を立て直せ!」
私は、機関銃の銃床を肩に当て、引き金に指を掛け、前方を見つめた。
何回も経験しているのに、身体が小刻みに震える。
300メートルほど離れた鉄条網のあたりに人影が動く。
引き金を引く。
リズミカルな振動が身体に伝わり、不思議と落ち着く。
曳光弾が無数に飛び交い、爆発音が辺り一面に起こる。
敵は一旦後退した。
給弾手のピーターセンは大きく目を見開き、放心状態だ。
「手を貸せ!」
トーチカ内の戦死者を外に運び出し、負傷者を後方に移す。
弾薬、手榴弾を運び込む。
攻撃はすぐに再開された。
トーチカ前面に爆発が起こり、コンクリートの破片が飛び散った。
「まずい、戦車砲だ!」
トーチカ内の壁に身を寄せる。
ドカン!!
目の前が真っ赤になり、大量の土やコンクリートが降りかかってきた。
立ち上がろうとしたとき、頭部に衝撃を受け、気を失ってしまった。
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