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第3話(4)

攻撃(4)

 円形防衛隊形をとる。
急造の掩蔽濠を掘り、戦車を入れる。

 西岸台地の方向一面に、黒煙がカーテンのように広がっている。
西岸攻撃隊が勇戦しているのだろう。
台地から飛来する重砲撃は、幾分弱まった。

 味方の軽爆撃機の編隊が飛んできた。
台地上にひときわ高く、黒煙があがる。
芥子粒のような戦闘機による空中戦も始まった。

 「敵車両群、接近!」
戦車、装甲車と速射砲チームが歩兵を伴って現れた。

 ドン、ドドン
砲撃の援護下、いくつかのグループに分かれ、迫ってくる。
しかし、700~800m以内には近づかず、探り撃ちを繰り返す。

 「敵は及び腰だ、前進!」
味方の戦車十数両が一斉に土手を乗り越え、躍進射をしながら、突っ込む。
半ばまで進んだところで、敵は後退し始めた。
「追撃やめ!元に戻れ。」

 日が落ち、再び夜襲決行となる。
最初の夜襲の時のような高揚感はない。
これが最後の戦いだ、と自分に言い聞かせる。
今度は速射砲を牽引し、歩兵も車載した。

 敵陣前で速射砲を切り離し、歩兵を下ろす。
「島田、加藤、山本小隊は敵を誘い出せ。」

 黒々とした敵陣に近づく。口の中はカラカラだ。
照明弾が上がり、堰を切ったように敵砲火が降り注ぐ。
すばやく退避し、別の場所で機動を繰り返す。

 右前方から黒い点々が動き出した。
「右30度、敵戦車、全速後進!」
地面の凸凹に足を取られ、車体が激しく振動する。

 マークをつけた地点に走りこみ、味方速射砲の脇をすり抜ける。
ダン、ダン、ダン!
前方に敵戦車が数台、赤々と炎を吹き上げている。

 弱体化した敵陣を突破し、敵の渡河点まであと数キロと迫ったが、またもや敵の装甲部隊に阻まれてしまった。

参考図:「ノモンハン」、アルヴィン・クックス著
     
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