gooブログはじめました!

2-2

 石炭から石油をつくれ!(2)

 佐藤主任の話は続く。

 「オイルシェールから石油を採ることとは別に、石炭液化の開発も行っている。」
 鈴木は田口先生の講義を思い出した。

 「ベルギウス法による人造石油の生産ですか?」
「そうだ。しかしベルギウスは研究室での実験を行ったに過ぎない。」
「この方法による工業化には、多くの課題の解決が必要だ。」

 ベルギウス法:
  450℃、200気圧前後の高温高圧装置で、石炭に水素を加えると、石炭が液体になる。

 「我々はドイツの石炭液化工場を見学したり、攪拌装置を購入したりして、昨年、自前の石炭液化パイロットプラントをつくりあげた。」

 「何とか石炭の液化には成功した。」
「しかし、10日以上連続運転を続けると、反応装置が爆発する事故が立て続けに起きた。」
「反応を早めるために使用した触媒で、装置材質の金属に腐食が起こったためだった。」

 「今、他の触媒での試験を行っているところだ。」
「君には、早く、このプラントの内容を把握し、開発チームに加わってもらいたい。」

 鈴木の机の上には、プラントの設計図や今までの試験報告書が積み上げられた。


 1時過ぎ、同じグループの杉山研究員と昼食に行く。
研究棟を出たところにテニスコートがあり、その後の管理建屋の一階に食堂があった。

 「試験所というと大学の研究室のような所を想像していましたが、全然違いますね。」
「ああ、ここは産業に直結する開発を目指しているからね。博士でもヘルメットをかぶり、油まみれになっているよ。」
「本土の会社と違い、自由な空気があり、上下の風通しも良いんだ。」

 参考図:「満鉄中央試験所」、杉田望、徳間書店、1995
     
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「石油の一滴は血の一滴」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事