雲外蒼天~一期一会のんびりと~

山歩きや旅を趣味に、日々のんびりと。

南アルプス・北岳池山吊尾根No5

2011-03-28 23:55:39 | 山旅日記
3月5日
池山御池小屋→城峰→ボーコン沢ノ頭→八本歯ノコル→北岳→池山御池小屋

ボーコン沢ノ頭まで5時間半。すでにひと山登ったような気持ち。
しかし日本第二の高峰・北岳。
頂までの道のりはまだまだ長く険しい。



圧倒的な迫力の北岳を目の前に稜線を進む。
小さなアップダウンが続き、なかなかペースは上がらない。
北からの烈風に叩かれながら、一歩一歩前へ。



迫りくる北岳バットレスは圧巻!
左には間ノ岳が大きい。



膝下ほどまでのラッセルをこなすと八本歯ノ頭に着く。
ここからの急降下が「冬の北岳」の核心だ。



怖い箇所もあったが、雪に埋もれたフィックスロープや鎖を掘り起こしながら慎重に岩場の急斜面を下った。



八本歯ノコルからは頂を目指して苦しい急登。雪深くなお続く膝下のラッセル。
この頃には風も止み無風快晴、穏やかな最高の天気に。



しかし暑さの影響か、完全にバテてしまう。情けない。

もっと水分を持ってくればよかったと思ったが、今何を言っても単なる言い訳。

自分自身に気合いを入れ登るが、これ以上ないほど苦しかった。

動かしたものは北岳に対する想いだっただろうか。
「冬の北岳」雪深いこの時期に登ることが長い間大きな目標であった。



しばらくするとルートは稜線へ向け、トラバース気味になる。

しかし二人とも疲労が激しい。
Kさんの意見もあり、見た目行けそうな正面の岩稜帯を直登することに。



ところがしばらくすると岩場で厳しくなり、トラバース、そして短いながらも急な雪壁にぶち当たった。

下で苦戦しているKさんには下降を薦め、それに応じKさんは下降。夏道に沿って頂上へ。



自分は行ける、そうその時は思った。

危ういトラバースをこなし、前爪を蹴りこみ雪壁を登った。
短いながらも緊張した。

途中で左の草付に逃げ、下を振り返る。
遥か眼下、左股まで一直線に落ちていた・・・。

直登はやめ、ルートを見極めながら草付きをトラバース。
すぐにルンゼ状の雪面に行き当たり、これを直登する。



登りきると稜線に出た。中央アルプスを初め西側の山々が迎えてくれる。
そして左から夏道と合流した。



行く手には雪庇張り出る頂上稜線。
念願の山頂まであとわずか。
振り返るとKさんも登ってきた。



登りはじめること10時間。
日本第二の高峰・北岳の頂にようやく立つことができた。
いろいろと去来する想い。
言葉にならない感動が押し寄せ・・・、感無量だった。
山の頂でこんな気持ちになったのは初めてかもしれない。



360度の素晴らしい眺め。
北アルプスはもちろん、御嶽山の奥には石川の白山、そして遠く谷川岳や日光の山並みも望むことができた。



眼下には甲府盆地や伊那谷の街並み。
昨日、麓から仰ぎ見た冬の北岳。その頂から眺める街並み。
一歩一歩歩いてようやくここまでくることができた。

この達成感は何物にも代えられない。

~つづく~

[画像]
①北岳バットレス。
②池山吊尾根をいく。
③迫る白銀の北岳。
④ボリュームのある間ノ岳。八本歯ノ頭より。
⑤八本歯ノ頭から北岳への最後の登りを見上げる。
⑥八本歯ノコルへ急斜面を下る。
⑦八本歯ノコルからもなお続くラッセル。
⑧苦しい登り。正面の岩稜にこの後苦労する。
⑨トラバースと別れる岩稜の基部で。
登ってきた吊尾根を振り返る。
⑩草付きで一息。
辿ってきた池山吊尾根を眼下に。
八本歯ノ頭(中央)やボーコン沢ノ頭は遥か遠い(左奥)。
⑪稜線に飛び出ると中央アルプスが迎えてくれる。
⑫頂上稜線。
北岳山頂を見上げる。
⑬登り初めて10時間。日本第二の高峰・北岳(3193m)。
⑭仙丈ヶ岳の右奥には北アルプスがずらりと一望。
⑮鋭峰・甲斐駒ヶ岳。

南アルプス・北岳池山吊尾根No4

2011-03-27 17:21:11 | 山旅日記
3月5日
池山御池小屋→城峰→ボーコン沢ノ頭→八本歯ノコル→北岳→池山御池小屋

雪が多く苦労するのが予想ができたので、翌朝は3時過ぎに出発。
気温はマイナス14℃。
長い一日の始まり。



真っ暗闇の森を目印と記憶を頼りに登る。
ヘッデンで赤印をたどりながらゆっくりと。
やがて左の急斜面に取り付く。

急斜面を登りきると、見覚えのある小広場。右折し、尾根沿いに少し登ると城峰のピーク。
見上げる夜空にはきらめく満天の星。



タル沢のコルへ少しばかり下り、急斜面を雪にもがきながらいくとやがて夜が明けてきた。
朝焼けの富士山が迎えてくれる。



城峰を過ぎると一気に積雪が増えた。
太ももから腰まで沈む雪を交代でラッセルしながら進む。

甲斐駒ヶ岳や富士山、そして鳳凰三山の眺めの良い展望台を過ぎてもなお続く樹林帯のラッセル。
木陰の奥には南アルプスの白峰が見え隠れする。

なかなか進まないラッセル。
ただ時間だけがジリジリと過ぎてゆく・・・。





やがて森を抜ける。
ド迫力の白峰三山、間ノ岳と農鳥岳が間近に迫ります。
そして振り返れば富士山。
しかし未だ目指す北岳は見えない。



登りはじめて5時間半。
ボーコン沢ノ頭。
ようやく北岳がドーンと姿を現す。
ここまできたからこそ見れる圧倒的な迫力だ。



ボーコン沢ノ頭からの眺めは素晴らしい。遠くには北アルプスも一望。



360度の素晴らしい眺め。





北岳の頂上はまだ遥かに遠い。



~つづく~

[画像]
①樹林帯はひたすらラッセル。鳳凰展望台直下を行くKさん。
②夜明け。
③朝焼けに染まる霊峰・富士。
④ラッセルに苦労する。
⑤シラビソの森を抜けると白峰三山の巨峰が目に飛び込んくる。
⑥迫力ある農鳥岳。
⑦ボーコン沢ノ頭。
ようやく見えた南アルプス・北岳。
⑧甲斐駒ヶ岳。
⑨白銀の北アルプスが連なる。
⑩間ノ岳(右)と農鳥岳。
⑪北からの強風を避け一息。
富士山も素晴らしい。
⑫北岳バットレスをバックに。

南アルプス・北岳池山吊尾根No3

2011-03-25 16:48:23 | 山旅日記
3月4日
夜叉神峠→鷲ノ住山→歩き沢橋→池山吊尾根→池山御池小屋

やがて北岳は池山吊尾根に隠れ、農鳥岳が姿を現す。



鷲ノ住山入口で林道を離れる。
少し登ると、はるか眼下に見える野呂川へ急降下。
標高差にして約400m、やるせない気持ちのなか、薄氷に注意して一気に下る。



野呂川を吊橋で渡り、足場の悪い岩場の急登をこなし、対岸の林道へ。

不気味な静けさのトンネルをいくつか過ぎる。真っ暗闇のトンネルは所々凍結してて要注意だ。



長いアプローチをこなし、ようやく池山吊尾根の登山口・歩き沢橋。
北岳頂上までは標高差約2000m。



歩き沢橋から登りはじめてしばらくするとすっかり一面雪景色に。
北面だからあまり陽のあたらない、冬枯れの樹林帯を黙々と登る。

やがて足場の悪い崩壊地。
凍っていて難儀したが、なんとか越える。

振り返れば鳳凰三山の山並み。
そして谷の対岸、同じ目線上にはさきほどまで歩いていた夜叉神峠からつづく林道・・・。。



所々にある赤布や薄っすらとあるワカンのトレースのようなものを目印に、不明瞭な樹林帯を辿る。

やがて見覚えのある開けた場所に出て、吊尾根に乗った。



ここからは右折し、吊尾根に沿ってシラビソの静かな森を行く。
小屋まではもうひと頑張り。



そのうちにトレースは消え、雪に足をとられながらも前へ。
やがて池山御池の白い雪原に出た。



一面真っ白な池山御池。対岸の小屋までは時おり腰まで埋まる。



雪に埋もれた池山御池小屋。
春に来た時は夜遅く、小屋に先行者もいたので、外にテントを張った。あの時は真っ暗闇の中、小屋の場所が分からず右往左往したなぁ・・・。



その後どうも改築されたようで、小屋の中はとても綺麗で快適。

当初は明日のためにもう少し上部に幕営を・・・と考えていたが、小屋の中にテントを張って快適なベースとし、ここから頂上アタックをすることにした。

明日は頂上に向けて、長い一日になりそうだ。

~つづく~

[画像]
①林道を離れ鷲ノ住山から野呂川へ。奥には真っ白な早川尾根のアサヨ峰。
②農鳥岳を仰ぎ見ながら、ツララかかる林道を行く。
鷲ノ住山展望台手前で。
③野呂川を高度感ある吊橋で渡る。まぁ揺れること。
④早川尾根の稜線を眺めながら歩き沢橋へ。
⑤長いアプローチを経て登山口の歩き沢橋。
⑥樹林帯の登り。
⑦池山吊尾根にのる。右折する小広場で一息。
⑧⑨一面真っ白な池山御池。
⑩池山御池小屋。
⑪小屋内部。テントを張って快適なベースに。

※③⑦⑪Kさん提供。

(参考)
夜叉神峠入口800
925鷲ノ住山展望台945
1150あるき沢橋1215
1530池山御池
1540池山御池小屋

南アルプス・北岳池山吊尾根No2

2011-03-22 20:51:24 | 山旅日記
3月4日
夜叉神峠→鷲ノ住山→歩き沢橋→池山吊尾根→池山御池小屋

Kさんの車で夜叉神峠へ。
中央道からはモルゲンロートに焼ける南アルプスの白峰。
とても美しく雄大な眺めに気持ちも高ぶる。



夜叉神峠入口まで雪は全くなかった。
懸案のゲートも開いていてホットしたのもつかの間・・・、準備をしていると軽トラがやってきて、例のおやじにゲートを閉められる。そしておまけには「こっちは駄目だよ」と釘を打たれた。



何を言っても無駄な事は分かっているのでおとなしく引き、前回同様山腹を巻き、急斜面をはい上がりこれを突破。
長い林道歩きの始まりだ。


すぐに夜叉神峠トンネル。脇のドアからトンネル内へ。
このトンネルはとにかく長い・・・。
遠近感が狂い、頭がボンヤリ。

トンネルを抜けるとやがて白峰三山が目に飛び込んでくる。



3000mの稜線を仰ぎ見ながら、林道を行く。
池山吊尾根の上、遥か高みに頂を覗かせる北岳。
明日あの頂に登ることができるのだろうか・・・。



遥かに高い南アルプスの主稜線。
大きな期待と少しばかりの不安が入り交る、そんな気持ちであった。

~つづく~

[画像]
①朝日に輝く白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)。
②③夜叉神峠入口。
荷物も膨らむ。
④夜叉神峠トンネル。林道のトンネルでは日本最長だとか・・・。
⑤青空に白く輝く南アルプスの稜線。
北岳(右)と間ノ岳が大きい。
⑥巨峰・間ノ岳。

南アルプス・北岳池山吊尾根No1

2011-03-22 15:55:38 | 山旅日記
南アルプスの最高峰・北岳(3193m)。

去年2月、単独でチャレンジをしようとしたが、何故か無償に怖くなり、敗退した山。
あれは自分自身に負けた・・・。



そして数日後、気を取り直して挑んだ南アルプス・仙丈ヶ岳(3033m)。
快晴の頂から間近に聳える北岳。
北岳を眺める、あの時の何とも言い難い気持ちは忘れられない。

それ以来「冬の北岳」は常に頭の片隅にあった。



5月、雪深い立山連峰・剱沢からとんぼ返りし、GWは友人のMさんと南アルプス・白峰三山縦走へ。
ルートは池山吊尾根から。

2月、登山口にもたたず敗退した、自分自身に負けたあの気持ち。3ヶ月という時が経ったが「冬の北岳」を意識しての計画であったのは間違いない。

天候にも恵まれ、白峰三山を無事縦走することができたが、厳しさを感じたのもまた事実。



そして各地の山を登り初夏から秋にかけては剱澤小屋での生活。
毎日山を眺め、この夏も多くの人々と出会うことができた。
出会いに感謝。



そして10月12日に小屋閉めし山を下りてからは、友人を訪ね、東北や北陸、そして九州・四国を周った。
初めての土地は新鮮、日々充実したとても楽しい旅でありました。



12月に入り東京に帰ってくると、山はすっかり冬模様。
厳冬の南アルプス(聖岳・甲斐駒ヶ岳)に登り、2月には冬富士にも登った。



しかしどこか満足できないものがあった。冬はもうすぐ終わり。

あの時から心のどこかに引っかかっていたもの。
「冬の北岳」に対する想い。

それを確かめに南アルプス・北岳へ向かった。

~つづく~

[画像]
①ようやく見えた北岳バットレス。しかし頂きはまだ遥か遠い。
②2010年2月、南アルプス・仙丈ヶ岳から望む厳冬の北岳。
③GWはMさんと南アルプス・白峰三山を縦走。間ノ岳(3189m)から振り返る北岳。
④梅雨が明け今年初めて剱岳へ。
残雪豊富な初夏の剱沢を俯瞰する。立山連峰(左)の奥には槍・穂高連峰。
2010年7月19日、快晴の剱岳頂上で。
⑤初めての九州。「日本最南端・西大山駅」から仰ぐ開聞岳。
⑥年明けは甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根へ。
八合目から南アルプス主稜線を望む。北岳がひときわ高い。
⑦2月は霊峰・冬富士へ。
条件に恵まれ登頂することができた。
富士山・吉田口山頂で。