環境分析研究所

全部又は一部の複写・頒布できません。
利用の結果、損害等一切責任を負いません。

東日本大震災がれき処理物語 (その1)

2014年04月04日 07時40分28秒 | まちの環境
東日本大震災がれき処理物語 (その1)
                           はじめに
 平成23年3月11日三陸沖を震源とする大地震が発生しました。
後に、東日本大震災とされましたが、この東日本大震災の地震と津波によるがれきのほか、放射能に汚染された廃棄物が大量に発生しました。
この震災による災害廃棄物の広域処理を受け入れしようとする地域住民の安心と理解のため、震災がれき処理の受け入れについて自治体がどのように対応をしたか、愛知県内を中心に取材をしたものを2回に分けて掲載します。 

第1章  東日本大震災の規模
1 震災被害について (気象庁)
 平成23年3月11日14時46分三陸沖を震源とする、マグニチュード9.0の大地震が発生しました。この地震と津波により震災がれきが東日本に於いて災害廃棄物と津波堆積物の処理が必要なとなりました。その他に、原子力発電所の事故により福島県の放射性物質汚染地域内の廃棄物(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境への対処に関する特別措置法)が約47万トンもありました。(環境省25.2.22)
 また、震災の被害は平成25年3月11日現在の消防庁調べによると、死者18,493人、行方不明者2,683人、負傷者6,217人。建物の被害では、全壊が128,801棟、非住宅被害として公共建物21,257棟、半壊269,675棟、その他75,272棟で、一部破損756,814棟、津波等による床上浸水3,352棟、床下浸水17,454棟、火災の発生は330件となりました。
 震災後2年が経過する平成25年2月15日現在でも、避難者数は約31万5,000人が不便な避難生活を強いられています。

2 震災がれき発生量
(1) 東日本大震災に伴う災害廃棄物全体の処理状況について(環境省)
 地震と津波の被害より東日本13道府県247市町村に於いて推定総量2,039万トンの災害廃棄物が発生し、津波堆積物1,046万トン合計3,085万トンとなり、このうち甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の沿岸の37市町村では約2,667万トンあり、このうち災害廃棄物で約1,628万トンとなっています。その他に福島県放射性物汚染地域内の廃棄物は約47万トンもあります。
平成24年12月末現在の廃棄物の処理状況は、全体の約43%が処理を完了しております。
(2) 広域処理が必要な震災廃棄物について(平成24年12月末)
   岩手県と宮城県の広域処理を要する廃棄物は、約69万トンのうち可燃物は約32万トンのうち主に木くずが12万トンとなっていました。

3 東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理について、
  広域的な協力に係る災害廃棄物の処理を進めるため、災害廃棄物を受け入れる地域の風評被害等住民の安心と理解を進めるため、平成24年4月17日付けで、関係都道府県廃棄物行政主管部局長に対し、環境省廃棄物対策課長名で「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理に関する基準等について」が告示されたことが通知されました。(東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン)この結果、平成24年12月末現在、1都1府11県の58件が広域の処理が実施されており、広域処理を必要とする量約69万トンのうち既に約21万トンの処理が完了しました。今後、約59万トンが処理受け入れされる見込みであることから、残り約10万トンの広域処理が必要となっています。

4 広域処理の災害廃棄物の放射能濃度レベル 
  東京都等の試験焼却により受け入れする災害廃棄物の平均放射能濃度を240Bq/Kg以下を目安とし、生じるばいじん及び焼却灰その他燃えがらの放射能濃度(セシウム134、137の合計)を8,000Bq/Kg以下とされています。 
  この8,000Bq/Kg以下とされたのは、原子力安全委員会が埋立処分の目安として焼却灰等の濃度が、埋立処理により周辺住民の受ける追加被爆線量が1mSv/年を越えないこととし、また、処分施設の管理終了後においても、周辺住民の受ける追加被爆線量が0.01mSv/年(人の健康に対する影響が無視できる線量)以下とするものです。(mSv:ミリシーベルト、Bq: ベクレル)

5 可燃性災害廃棄物の処理方法
  可燃性災害廃棄物の焼却等を行う場合はろ過式集塵機等の設備を備え、また、焼却灰等は一般廃棄物の最終処分場で埋立処分することとしています。

6 安全性の確認方法
 (1) 一次仮置き場
  「災害廃棄物仮置場放射能等調査業務委託報告書(平成23年7月岩手県)」
① 災害廃棄物の資料採取
     あらかじめ災害廃棄物を掘削・撹拌等を行い、表面以外の採取できるようにする。
② 可燃部を対象に「木質」、「5mm以下の細塵」、「紙類」、「繊維」、「プラスチック」、「わら」等の種類別とする。
③ 平均的な放射能濃度を測定するため、種類別に10カ所以上で採取する。
④ 採取する位置はるべく均一に分散するよう採取する。
 (2) 二次仮置き場
   受け入れ側における安全性の確認方法
    可燃性災害廃棄物等の場合
     焼却灰等の放射能濃度を1回/月測定
     排ガスは排出に於いて放射能濃度を1回/月程度測定
    また、焼却灰等を埋立する最終処分場の敷地境界において放射線量を7日に1回測定

第2章  愛知県の震災がれき処理の対応について
 愛知県の災害廃棄物の受け入れに係る取組について(愛知県市町村会議資料より) 
 平成23年4月8日
   廃棄物の受け入れ処理への協力依頼(環境副大臣通知)により災害廃棄物の広域処理体制の構築に関する調査(受け入れ可能な廃棄物の種類、量等)
 平成23年10月4日
   災害廃棄物の広域処理推進の開催(全国の自治体に広域処理協力要請)
 平成23年10月7日
   東日本大震災により生じた災害廃棄物の受け入れ状況調査
 平成23年10~12日
  愛知県は国へ「東日本大震災の災害廃棄物広域処理に関する質問書」を提出 
 平成24年3月16日
「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法第6条第1項に基づく広域的な協力要請」に対し3月18日付けで知事が受け入れを表明
 平成24年4月5日
  名古屋港5区2工区、中部電力㈱碧南火力発電所最終処分場、豊田自動車㈱田原工場最終処分場の3カ所を受け入れ候補地とし、受け入れに関する検討調査費を専決処分により予算確保することを記者発表し、3月16日「平成23年10月4日付け自治体に広域処理協力要請」に対する災害廃棄物の受け入れする旨を回答    
     
   碧南火力発電所(石炭火力発電所 碧南市)1号~5号
               
   碧南火力発電所灰捨地(最終処分場)       
        
   名古屋港5区2工区(知多市)
 平成24年4月9日
受け入れに関する検討調査費6億円を先決処分する。
 平成24年4月23日
  災害廃棄物処理推進プロジェクトチームを設置
 平成24年5月23日
  5月臨時県議会で、受け入れに関する検討調査費6億円の先決処分が承認される。
   1 受け入れ基本的条件の搬入手法検討
① 災害廃棄物の搬入手法検討
② 受け入れ施設の工法等検討
③ 地質調査(地質調査ボーリング、サンプリング・土質試験)概要
   2 受け入れ基準の設定
① 受け入れ基準の設定
② 検査体制の検討(放射性物質の測定地点・方法)
   3 生活環境
① 現地調査の実施(地上気象調査、上層気象調査、一般環境大気調査、道路沿道の大気質調査、騒音・振動・悪臭・土壌・水質調査)
② 生活環境影響調査書の作成(予測調査=大気質、騒音、振動、悪臭、土壌、水質)
 平成24年6月8日
  住民説明会等開催費、試験焼却費等を計上した6月補正予算(69,458千円)
を発表
1 住民説明会等開催費
 (1) 受け入れ候補地の周辺住民説明会を延べ36回 (平成24年8月頃) 予定
 (2) 被災地見学会
2 広報費 パンフレット等の作成
3 試験焼却実施費
(1) 試験焼却(試験焼却量100t、災害廃棄物混焼率20%)
放射能濃度100Bq/Kg以下の可燃物
市町村又は一部事務組合が設置している一般廃棄物焼却
(2) 環境調査(受入被災地の放射性物質の濃度等、焼却灰等の放射性物質の濃度、空間放射線量率等)
(3) 住民説明会
実施予定市町村住民(試験焼却実施前後2回)
※ 知事の専決処分について (地方自治法第179条に基づく専決処分)
普通地方公共団体の長(知事)が特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないと認めるとき、長の判断で処理できるものです。この処置については、地方公共団体の長は、直近に開催される議会(本会議)に報告し、その承認を求めなければならない。また、議会が不承認としても専決処分の効力は失いません。

 あとがき
  平成26年3月で東日本大震災から3年を迎える前に、1月13日には岩手県陸前高田市と釜石市のがれきを積んだ21両編成の最終列車が東京品川貨物ターミナルに到着し、岩手県、宮城県のがれき処理に目途がついたと言うニュースがありましたが、福島県も復興のニュースが届く日を期待しています。
 参考資料
 東日本大震災・地震の概要(気象庁)
 東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表(環境省)
 災害廃棄物の広域処理の推進について(環境省)
 東日本大震災で発生した災害廃棄の受け入れに関する市町村長会議資料について(愛知県 HP)