梅日和 umebiyori

心が動くとき、言葉にします。テーマは、多岐にわたります。

非言語コミュニケーションの威力。

2022-02-08 10:48:16 | 雑記 Communis2022

宮原教授によると、言語と非言語(ノンバーバル)の割合は、3:7(前掲書,2007)。また、カリフォルニア大学では、心理学者アルバート・メラビアンにより「メラビアンの法則」も提示されています。或るメッセージを伝達する際に、言語情報と非言語情報が矛盾する場合、情報の受け手は言語情報を7%、話し方などの非言語情報を38%、見た目や表情などの非言語情報を55%という割合で参考にしていたという実験結果です。あくまで、言語と非言語情報が相矛盾していながらひとつのメッセージを伝達する、という条件付きの結果(Albert Mehrabian,1971)ですが、わたしたちが言語よりも非言語コミュニケーションに日常の多くを頼っている、ということは言えそうです。

非言語コミュニケーションには、7つの種類があります。1.周辺言語2.プロクセミクス3.時間、4.接触行動5. 身体動作6.視線、7.人工物の使用です。(分類法及び名称には複数の見解があります)

1.周辺言語は、ことばそのものではなくその周辺の要素です。声のトーンや速さ,抑揚などを指します。2.プロクセミクスは、近接学。1966年、アメリカの文化人類学者のエドワード・T・ホールによって発見された対人距離の分類です。蛇足ですが、鴨川(京都)の川べりには、夕暮れになると恋人たちがほぼ等間隔で並びます。その距離、ほぼ2メートル。ホールの分類に従えば、相互に手が届きづらい「社会距離」にあたります。今から40年も前のこと。近接学を知ったとき、町のあちらこちらで、対人距離を観察し、測定したものでした。3.時間は、「間」あるいは時間感覚を指します。沖縄時間といったものはよく知られています。4.接触行動は、その名の通り。軽く手を合わせるなど、さまざまな場面で相互に接触しています。今は、感染症のことからハグがタッチになっていますが。5.身体動作もまた名前通りです。ジェスチャーなど手足の動き、顔の表情や姿勢など。カメラを向けられると思わず出してしまうVサインなどもそうです。6.視線も名の通り。宮原教授は、日本語には「目を含んだ数多くの表現がある」と指摘しています。(宮原,2007)確かに、「目にものを言わす」「目力がある」「目が肥える」などなどいくつも思い浮かびます。7つ目は、人工物の使用です。少しわかりにくいかもしれません。これアクセサリーや衣服、髪型などのことです。「ファッションは、自己表現か?いや、コミュニケーションツールか?」なんて、SNS上では取り上げられています。

以上が、非言語コミュニケーションに分類されている7つです。しかし、実際には、建築物やら各企業のブランドロゴやらシンボルマークやら、香り、などなど、多くの非言語要素にあふれています。

 

参考図書

アルバート・マレービアン著、西田司他共訳『非言語コミュニケーション』聖文社,1986年。

エドワード・T・ホール著, 日高敏隆・佐藤信行共訳『かくれた次元』みすず書房,1970年。

マジョリー・F・ヴァーガス、石丸正訳 『非言語コミュニケーション』 新潮社,1987年。

 

 


はたらく、ことば。

2022-02-07 09:45:27 | 雑記 Communis2022

さて、恣意的(論理必然性がない)で、意図的で、人為的な「ことば」(2/6掲載文参照)ですが、どのようなはたらきをしてくれるのか。宮原哲教授は、6つのはたらきについて述べています。

  1. ラベリング
  2. 感情表出
  3. 人間関係コントロール
  4. アイデンティティ、立場を明らかにする
  5. 情報を記録する
  6. 共感・ゴール設定
  • ラベリングは、名前をつけること。現実に経験していることをことばにし、名づけ、整理しています。
  • 同様に、自己の感情を「かなしい」「くやしい」といったことばにして表に出しています。
  • 敬語に代表されるように、上限関係など解釈項がおのずと作用することばは、それを使うひとの立場などを表す。このことで、送り手と受け手の関係をコントロールしています。
  • 自分自身に対する認識を左右します。職業や生まれ育った地域、さまざまなグループに所属するわたしたちは、おのずとそれらのグループから影響を受けています。その影響のひとつが、ことばの使い方です。つまり、ことばの使い方によって、個々人を形成あるいは表出している側面があります。
  • (ことばは、)記憶の道具でもあります。
  • (ことばを使って、)未来のゴールを設定し、行動計画を立てることができます。今現在ではなく、まだ見ぬ未来について考えることができるのもことばのおかげです。

こうして整理していると、ことばはなかなかの「はたらきもの」です。

ただし、わたしたちは、「ことば」以外にもシンボルを持ち、多用しています。それが、ノンバーバル・コミュニケーションと呼ばれるものです。「言語」と「非言語」、おおむねその割合は、3:7と言われています。(宮原,2000)

 

 

 

 

参考図書

宮原哲『入門コミュニケーション』松柏社,2007。

池田健一『コミュニケーション (社会科学の理論とモデル)』東京大学出版会,2000。


はたらく、ことば。

2022-02-07 09:45:27 | 雑記 Communis2022

さて、恣意的(論理必然性がない)で、意図的で、人為的な「ことば」(2/6掲載文参照)ですが、どのようなはたらきをしてくれるのか。宮原哲教授は、6つのはたらきについて述べています。

  1. ラベリング
  2. 感情表出
  3. 人間関係コントロール
  4. アイデンティティ、立場を明らかにする
  5. 情報を記録する
  6. 共感・ゴール設定
  • ラベリングは、名前をつけること。現実に経験していることをことばにし、名づけ、整理しています。
  • 同様に、自己の感情を「かなしい」「くやしい」といったことばにして表に出しています。
  • 敬語に代表されるように、上限関係など解釈項がおのずと作用することばは、それを使うひとの立場などを表す。このことで、送り手と受け手の関係をコントロールしています。
  • 自分自身に対する認識を左右します。職業や生まれ育った地域、さまざまなグループに所属するわたしたちは、おのずとそれらのグループから影響を受けています。その影響のひとつが、ことばの使い方です。つまり、ことばの使い方によって、個々人を形成あるいは表出している側面があります。
  • (ことばは、)記憶の道具でもあります。
  • (ことばを使って、)未来のゴールを設定し、行動計画を立てることができます。今現在ではなく、まだ見ぬ未来について考えることができるのもことばのおかげです。

こうして整理していると、ことばはなかなかの「はたらきもの」です。

ただし、わたしたちは、「ことば」以外にもシンボルを持ち、多用しています。それが、ノンバーバル・コミュニケーションと呼ばれるものです。「言語」と「非言語」、おおむねその割合は、3:7と言われています。(宮原,2000)

 

 

 

 

参考図書

宮原哲『入門コミュニケーション』松柏社,2007。

池田健一『コミュニケーション (社会科学の理論とモデル)』東京大学出版会,2000。


ことばは、象徴そして記号。

2022-02-06 05:58:49 | 雑記 Communis2022

当たり前のように使用している「ことば」ですが、それぞれのことばのもつ意味は初めから固定されているわけではありません。ことばは、象徴(シンボル)そして記号です。恣意的(論理必然性がない)で、意図的で、人為的なものです。例えば、AIということばは、それを使うひとにとってAIが指すものとの関係を示しています。そのひとがAIについて脳のなかに持っている情報やイメージ、その時々の感情などを恣意的に表現するときに個々人が選び、使うのが「ことば」です。「ことば」そのものに意味はなく、それを使うひとのなかに意味が存在しています。

ひととことば(=記号)、そしてそのひとにとってのことばが指し示すものとの関係、意味について、哲学者、数学者であるC.S.パースは、「三項図式」を提示しています。 

図1 記号の三項図式 

石田,2003,64ページを参考に、作図。 

参考文献:Peirce ,C.H.,内田種臣編訳,1986,134ページ。

 

ここでは、AIということばが、記号です。対象は、そのことばが指し示すものやこと。そして、AIの持つ解釈項(明確化された記号の意味、観念)を示しています。「対象は、記号によって意味を付与されますが、記号の意味はそれを解釈する体系(=解釈項)と不可分に結びついており、解釈作用として対象に意味を与えるのです」(石田,2003)。

わたしたちは、常に記号とその対象、そして解釈項という三項から成る「記号作用」を行いながら、「ことば」を使っているわけです。(図1参照)

ことば、対象、そして解釈項は、固定されたものではありません。そのため、ことばは極めて曖昧な存在となり、使うひとによって異なる記号作用が行われ、おのずとズレが生じます。

記号論をかじると、「言葉尻に反応すること」が激減します。ことばは、単なる記号、あいまいな存在と自覚するためです。むしろ、背後で働く「解釈項」に意識が向かいます。

 

 

 

 

 

参考図書

C・S・パース 内田種臣編訳『パース著作集2』, 勁草書房,2000。

石田英敬『記号の知、メディアの知』東京大学出版会,2003。

宮原哲『入門コミュニケーション』松柏社,2007。