梅日和 umebiyori

心が動くとき、言葉にします。テーマは、多岐にわたります。

コミュニケーションをデザインしよう。

2022-02-10 10:33:06 | 雑記 Communis2022

1冊の本に出会ったことがきっかけとなり、短大生のためのコミュニケーション論の演習を組み立てたことがあります。元外交官でおられた北川達夫さんが日本に紹介したフィンランドの国語の教科書です。小学校5年生が対象でした。そこには、コミュニケーションモデル(2/1掲載)の各要素を楽しく伸ばしつつ、メディアリテラシーをきちんと養成していく工夫があふれていました。

短大で実際に行った演習は、次のようなものでした。

7名ほどで、チームを組み、ひとつの主張をめぐって、議論をしていただきます。

例えば、「紙の教科書は、要らない」。この主張をめぐり、7名はそれぞれの役割を引き受けます。教科書出版社の営業担当、デジタル出版に強いプロダクションの営業、長く紙媒体に頼って授業を進めてきた教員、生徒A、生徒B、生徒の保護者代表、PCなどデバイスの販売会社の営業などです。チームメンバーは、事前に下調べをしてから、議論に臨みます。参加者のネーミング、服装、背丈、業界や職場の状況などすべてメンバー自らが決めます。

学生たちは、役割が決まってからというもの、やたらにキラキラとしていました。

例えば「そもそも教科書の出版社って何よ?」「出版社の営業って?」「どんな服装してる?」電車に乗っても何をしても、役作りのための情報集めを開始しているからです。

さて、議論当日。相互に利害の違うひとたちが、ひとつの主張をめぐり意見を述べていきます。いかに自己の主張に理解を得るのか、反論への対応はどのするのか。なかなか白熱の議論が交わされていました。学生たちは、知らず知らずのうちに、「事実を調べる」「観察する」「想像する」プロセスを経て、「コミュニケーションをデザインする」経験をしていきます。

1冊の書籍から始まったこの取り組みでしたが、やりながら気が付いたことがありました。コミュニケーションは、デザインの対象で、そのデザイン力こそ日常に変化や笑顔を生み出す基礎ではないかと。

20代の頃、在籍していた広告代理店のトップが、よく言っていました。「君たちの仕事は、新聞広告を創ることでもなくCMを創ることでもない。クライアントとそのお客さまのコミュニケーションをデザインすることだ」と。新聞もテレビ、デジタルコンテンツもそのための手段であって、クリエイティブだなんだと浮かれている場合ではない(笑)と教えてもらったように受けとめていました。デザインは、なにも専門会社の人間がやるべきことではなく、だれもがちょっとした意識をもてば、簡単にやれることなのです。

 

 

参考図書

メルヴィ バレ , リトバ コスキパー , マルック トッリネン  著 , 北川 達夫 , 北欧文化教育総合研究所 , フィンランドメソッド普及会 翻訳『フィンランド国語教科書 小学5年生―日本語翻訳版 フィンランド・メソッド5つの基本が学べる』経済界,2007。

上記以外にも北欧の教科書については多く翻訳されています。ご興味がある方は、ぜひ読まれてください。楽しいやら感心するやら・・日本の教育は大丈夫か?と思えることに満ちています。



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