◆神代の案内人ブログ

…日本の古代史についてのブログです。…他の時代もたまに取り上げる予定です。

◆天照大神とはどんな神様(その6)

2013-11-20 17:32:23 | ◆天照大神とはどんな神様
 再び日本書紀に戻り、その後の成り行きの相違点をみてみたい。
『是に素戔鳴尊、請して曰さく「吾今教を奉りて根の国に就りなむとす。故、暫く高天原に向でて、姉(あめのみこと)と相見え、後に永に退りなんと欲ふ」とまうす。「許す」と勅ふ。乃ち天に昇り詣づ。是の後に、伊奘諾尊、神肯既に畢へたまひて、あつしれたまふ。是を以て、幽宮を淡路の州に作りて寂然に長く隠れましき』
「汝は無道極まりないので、もうこの国には置いておけない、何処にでも立ち去れ」と伊奘諾尊に言われ「それでは遠い遠い未開の国に行きます。その前に高天原に行き姉君(あまてらすおおみかみ)に会って今生の別れを言ってから往きたいと思いますのでお許しを」、といって許可をもらう。その後間もなく伊奘諾尊は体調を崩した。
『初め素戔鳴尊、天に昇ります時に溟渤以て鼓き盪ひ、山岳為に鳴り咆えき。此れ則ち、神性雄健きが然らしむるなり。天照大神、素より其の神の暴く悪しきことを知しめして, 来詣る状聞しめすに至りて、乃ち勃然に驚きたまひて曰はく、「吾が弟の来たることは,豈善き意を以てせむや。謂ふに、當に国を奪はむとする志有りてか。夫れ父母、既に諸の子に任せたまいて、各其の境を有たしむ。如何ぞ就くべき国を棄て置きて、敢へて此の處を窺窬ふや」とのたまひて、乃ち髪を結げて髻に為し,裳を縛きまつりて袴に為して、便ち八坂瓊の五百箇の御統を以て、其の髻鬘及び腕に纒け、又背に千箭の靱と五百箭の靱負ひ、臂には稜威の高鞆を著き、弓彇振り起て、剣柄急握りて、堅庭を踏みて股に陥き、沫雪の若く蹴散し、稜威の雄誥奮はし、稜威の嘖讓を発して、陘に詰問ひたまいき。』
 難しい漢字の連続で到底正しく読むことは出来ないと思う。しかし大意は分かると思う。大神は髪を男の様に結い直し完全武装して弓箭を負い、怒りを全身に表し、怒髪天を突く勢いで何をしに来た、と迫ったのである。
「私には汚い心は全くありません。父君の命を受けて根の国に行きます。これが今生の別れと思いますので、姉君の顔を見ずして去ります事が悲しくて遠い道をやっと来たのです、姉君その様に怒り給うな」
「それならなんでその様な態度をとる、真にその様に思うなら其の証拠を見せよ」
「姉君と誓はむ」
「賭けをしましょう、その賭けの中で私の生む子が女だったら私に黒き汚い心が有ると思いませ。若し男の子だったら清い心だったと思ってください」
『是に、天照大神、乃ち素戔鳴尊の十握剣を索ひ取りて、打ち折りて三段に為して、天真名井に濯ぎて、齬然に咀嚼みて,吹き棄つる気噴の狹霧に生まるる神を,號けて田心姫を曰す。次に湍津姫。次に市杵島姫。凡て三の女ます。既にして素戔鳴尊、天照大神の髻鬘及び腕に纒かせる、八坂瓊の五百箇の御統を乞ひ取りて、天真名井に濯ぎて、齬然に咀嚼みて、吹き棄つる気噴の狭霧に生まるる神を、號けまつりて正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊と曰す、次に天穂日命。・・・』
 大神は素戔鳴尊の剣を取って井戸の水で濯ぎ、バリバリと噛んで強く吐き出すとあたりが霧の如くなり、その中に田心姫ら三人の姫が生まれた。こんどは素戔鳴尊が大神の装着くしていた瓊をとって井戸の水で濯ぎ、咀嚼して強く吹き出すと霧になり、天忍穂尊ら五人の男神が生まれた。大神は「三人の姫は汝の剣から生まれたから自分で育てるが良かろう。五人の男神は私の瓊の変身だから私が引き取って育てよう。」と言った。
 日本書紀を何度も目を凝らし、通して見ても、大神が女性であると明言している記述はない、僅かに多くの国や、山、川, 木、草を生み最後に君たるべき日の神を生みまつります。「大日靈貴尊と號す」と、女性を少し印象づける文字を使っているが、それ以外全く男とも女とも述べていない
『「姉に相見えて、後に永に退りなんと欲す。若し姉と相見えずば、吾何ぞ能く敢へて去らむ。是を以て、雲霧を跋渉み、遠くより来参つ、意はす、阿姉翻りて起厳顔りたまわんことを」とのたまふ』
 と二度も三度も、大神が女である事を示す文字が、たたみかける様に突然に出て来る。もし女であれば、「生まれます君は光輝く姫の君」、など初めから明らかにするのが本当だと思うのである。不可解の記述が続く。
『是の後に、素戔鳴尊の為行, 甚だ無状し。何となれば、天照大神、天狭田・長田を以て御田としたまふ。時に素戔鳴尊、春は重播種子し、且畔毀す。秋は天斑駒を放ちて、田の中に伏す。復天照大神の新嘗しめす時を見て、則ち陰に新宮に放糞る。又天照大神の、方に神衣を織りつつ、斎服殿に居しますを見て、則ち天斑駒を剥ぎて、殿の甍を穿ちて投げ納る。是の時に天照大神、驚動きたまいて、梭を以て身を傷もしむ、此に由りて、発慍(いかり)まして、乃ち天石窟に入りまして、磐戸を閉ざして幽り居しぬ。故、六合の内常闇にして、昼夜の相代る知らず』
 あれほど、天照大神との別れを悲しんだ後、突然に又、素戔鳴尊の狼藉が出て来る。稲床に二重に種を蒔いて、稲の苗を駄目にしてしまう。田の畦を壊して水が行かなくしてしまう。稲が育つてくれば、馬を其の中に放って、稲を食べたり踏んだりさせて駄目にしてしまう。秋となれば新嘗祭の殿中に糞をたれる。神衣の織殿の屋根に穴を開けて、皮を剥いだ馬の死体を投げ入れる。驚いて織機から落ち怪我をしてしまった大神が、遂に我慢できず、洞窟に籠って、石の戸を固く閉じてしまう。
 有名な神話の筋で日本人ならば誰でも知っていると思う。しかしほとんどの人はその前後を知らない。一口に言って全体の筋が全く通じないのである。次に述べる秀真伝と比べていただきたい。


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