1.タイトル:「"界面活性剤を燃料に"水中を泳ぎまわる油滴」
2.発表概要
水中に形成したマイクロメートルサイズの油滴に、予め界面活性剤を分解する触媒を配合しておくと、油滴が水中に溶けている界面活性剤を分解しながら、泳ぎまわることを発見した。さらに、泳ぎまわる油滴どうしは、衝突して一つに融合することもなく、互いに避け合ったり、連れ添ったりして泳ぐという新しい運動パターンを示した。
3.発表内容
1.どんな現象を発見したか
油の粒を界面活性剤の溶液に添加すれば、油の粒に界面活性剤が取り込まれ、油は乳化される。しかし、油の粒に、界面活性剤を分解する触媒を予め配合しておけばどうなるであろうか?我々は加水分解されやすい合成界面活性剤(1)を水中に溶かしておき、触媒(4)を仕込んだ油滴(2)で、水中の界面活性剤を分解させる実験を行った。すると、油滴内部に取り込まれた界面活性剤が、油分子(2)と水溶性分子(3)に分解されるのに伴い、直径100マイクロメートルほどの油滴が、分解物を放出しながら、毎秒数十マイクロメートルの速さで一方向に泳ぐことを発見した。泳ぐ油滴の後部の表面には、界面活性剤が分解された油分子が集まっては、次々と粒となって放出されてゆく(右図、図1)。また、泳ぐ油滴どうしが偶然接近した場合、正面から近づきあうと互いに避け合い、同方向で近づきあうと連れ添って泳ぐという新しい運動パターンを示すこともわかった(図2)。
2.なぜこのような運動をするのか?
この油滴の内部では、泳ぐ方向に沿った対流が生じ、分解物を油滴後部表面に寄せ集め放出する。界面活性剤を前部で取り込み、後部で分解物を放出することで、油滴表面の界面活性剤の濃度は非平衡状態に保たれる。それが駆動力となり、自ら泳ぐというメカニズムが考えられる。「自ら泳ぐことにより、油滴は新たな界面活性剤を得て泳ぎつづけることができる。」まさにセルフ・サステイナブルな系である。
3.今回発見した動く油滴の特徴
これまでに報告された動く油滴は、油滴の接するガラス界面との界面エネルギーを利用したり、油滴の有機物質そのものを消費するものであった。今回の泳ぐ油滴の特徴は、以下の2点にある。
1)外部からの界面活性剤を燃料としているため、界面活性剤を外から添加しさえすれば、泳ぎ続けられる。これは、生物が代謝の過程で運動エネルギーを得て動き続けることができることを、最も単純にしたモデルということができる。
2)2つの油滴がたまたま近づきあうと、新しい運動パターを示す。油滴が泳ぐことで、その周囲の環境(水の流れや燃料である界面活性剤濃度)を変え、その環境に油滴が応答することで運動パターンが変わるという、原始的なコミュニケーションのモデルとして興味深い。
2.発表概要
水中に形成したマイクロメートルサイズの油滴に、予め界面活性剤を分解する触媒を配合しておくと、油滴が水中に溶けている界面活性剤を分解しながら、泳ぎまわることを発見した。さらに、泳ぎまわる油滴どうしは、衝突して一つに融合することもなく、互いに避け合ったり、連れ添ったりして泳ぐという新しい運動パターンを示した。
3.発表内容
1.どんな現象を発見したか
油の粒を界面活性剤の溶液に添加すれば、油の粒に界面活性剤が取り込まれ、油は乳化される。しかし、油の粒に、界面活性剤を分解する触媒を予め配合しておけばどうなるであろうか?我々は加水分解されやすい合成界面活性剤(1)を水中に溶かしておき、触媒(4)を仕込んだ油滴(2)で、水中の界面活性剤を分解させる実験を行った。すると、油滴内部に取り込まれた界面活性剤が、油分子(2)と水溶性分子(3)に分解されるのに伴い、直径100マイクロメートルほどの油滴が、分解物を放出しながら、毎秒数十マイクロメートルの速さで一方向に泳ぐことを発見した。泳ぐ油滴の後部の表面には、界面活性剤が分解された油分子が集まっては、次々と粒となって放出されてゆく(右図、図1)。また、泳ぐ油滴どうしが偶然接近した場合、正面から近づきあうと互いに避け合い、同方向で近づきあうと連れ添って泳ぐという新しい運動パターンを示すこともわかった(図2)。
2.なぜこのような運動をするのか?
この油滴の内部では、泳ぐ方向に沿った対流が生じ、分解物を油滴後部表面に寄せ集め放出する。界面活性剤を前部で取り込み、後部で分解物を放出することで、油滴表面の界面活性剤の濃度は非平衡状態に保たれる。それが駆動力となり、自ら泳ぐというメカニズムが考えられる。「自ら泳ぐことにより、油滴は新たな界面活性剤を得て泳ぎつづけることができる。」まさにセルフ・サステイナブルな系である。
3.今回発見した動く油滴の特徴
これまでに報告された動く油滴は、油滴の接するガラス界面との界面エネルギーを利用したり、油滴の有機物質そのものを消費するものであった。今回の泳ぐ油滴の特徴は、以下の2点にある。
1)外部からの界面活性剤を燃料としているため、界面活性剤を外から添加しさえすれば、泳ぎ続けられる。これは、生物が代謝の過程で運動エネルギーを得て動き続けることができることを、最も単純にしたモデルということができる。
2)2つの油滴がたまたま近づきあうと、新しい運動パターを示す。油滴が泳ぐことで、その周囲の環境(水の流れや燃料である界面活性剤濃度)を変え、その環境に油滴が応答することで運動パターンが変わるという、原始的なコミュニケーションのモデルとして興味深い。