図書館・語り・紙芝居・集団相手の絵本よみ・ボランティアなどについて書きます。
絵解きボランティア
4枚の紙芝居を作ろう(子ども手作り紙芝居)
2008-01-15 / 論文
各ご家庭で参考にしてください。なお、これを参考にして新潟市近辺で他団体や個人が催しをなさる場合は、当会代表:石倉恵子(265-3427)までご連絡いただきたいと思います。会員複数が関わって講座をし、他の文献を合わせ、文章化したオリジナルな物です。
「4枚の紙芝居を作ろう(子ども手作り紙芝居)」
2007.2 石倉恵子
(2005年に書いたものを書き直した)
目次
1 はじめに (1)
2 用意するもの (1)
3 手順 (2)
4 もっとやりたい人は (4)
5 学校の先生は (4)
6 ボランティアが活用する (4)
7 ボランティアの役割 (5)
8 大人が紙芝居をつくる (5)
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1 はじめに(作る子どもへ)
ゲームは好きですか。やっとの思いでお金をもらってソフトを買って、ゲーム機に入れてやりますね。こっそり友達とソフトを交換してお母さんに怒られたことはありませんか。
カードゲームも好きですか。カードを友達と交換することもありますね。自分にとっていらないものでも他の人には大事だったりしますよね。ポケットに入りきらないくらいの束を握ってそれを眺めるのもうれしい。
ゲームソフトやカードを作りませんか。ずっと昔から日本にはそれに似たものを大まじめで作って、交換したり使ったりすることを商売にしていた大人がいました。今、図書館の隅で眠っている紙芝居がそれです。開いて見るとマンガみたいな絵でしょう。舞台に入れるとゲームの画面みたいでしょう。作るのは、自分が楽しめればいいので、すごい絵でなくても4コママンガみたいでもいいのです。とにかく描いて演じてみれば、あなたがそこにいるということを、みんながわかってくれるはずです。ひどいことを言う人がいるかもしれないけれど、あなたの作った紙芝居は、ソフトやカードを交換するみたいに、他の誰かにとってすごく大事なものかもしれません。
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2 用意するもの (2時間コース)
・鉛筆、消しゴム。ポスカ、クーピーなどこすってもかすれない色をつけるもの(絵の具が一番だが時間不足の可能性あり)
・プリンターやファックスに入っているA4かB5の紙、1人1枚。(チラシの裏でもいい)
・白表紙(板目紙ともいう)サイズはB4(美濃版)のもの。1人4枚、これはホームセンターで10枚250円位で売っています。大きい束でも買えます。
・ボランティアの誰かが見本(3の項 ④と⑥⑦を実際に作る。マジック書きでいい。なるべく絵が簡単な4コママンガを真似てもいい)を作っておきます。または、子ども手作りの作品をとりよせてそれを使ってもいいです。
・ 時間配分は参加者十人以下として、印刷紙芝居の実演30分、作る1時間、順番に読む30分、です。
・ ボランティアは子ども3人に大人が1人くらいついていると、一番いいです。親がいればもっと少なくていいです。
・ 紙芝居実演セット(舞台、演台、照明、あれば拍子木)
・ 作る手順を模造紙など大きな紙に書いたもの(3の項②、⑥、⑦)
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3 手順
① 実演をたっぷり見せる。そのときに画面展開主体の幼児向けの作品をいくつもやるといい。
② プリンターの白い紙を一枚づつ渡して、8等分に折るよう説明します。縦長にして、横2×縦4の折り目があるようにして広げます。左の4つに絵を、右の4つにそれに合わせたセリフを書く、これが下書きになると説明します。
③ ボランティアが見本を見せて説明します。
④ 下書き
4コママンガと同じように考えます。自分のこと、身の回りのこと、日記みたいに、今日の朝ごはん、昨日のおふろ、日曜日に何した、下ネタでもいい、などと想像して、まず第一場面の主人公や話のきっかけから入ります。このまま黙っていてもほとんどの子は書いていくようです。
次に迷うようなら、それに何か起こるか、出た、爆発した、落ちた、変身した、スッと変化した、ゆっくり変わった、ぶつかった、ドンと動いたこと、はないか、考えを進めてもらいます。そのときに子どもはしゃべりながら書くといいです。親やボランティアは子どもの話を引き出します。
某小学校では、スライムが爆発して元に戻った、ウンチが出た、虫が大きくなった、蝶が逃げた、で作りました。最初なのだからすぐ思いつくような、簡単なわけのわからない話でいいのです。ここでまとまった形にしようとしたり、指導して起承転結だとか、そうしないで下さい。上から順番にマンガ絵日記を書くようにします。友達にウケようとしてもいいです。
見本とそっくりに作る子もいますが、「物だけちょっと違うのにしないか」と尋ねて、それもいやなようなら「それでいいよ、次は違うの作ればいいよ」と認めて他の人と同じようにしてください。「真似したいと思ったことそのもの」を大切にしてください。
絵を書きながらしゃべったこと(「バギューン、ガガガ、あれへんだなあ、」など)を右に文字で書くように言います。「しぬ」「ころす」などという子もいますが普通に聞いて、そのまま受け入れてください。セリフになったはなし言葉を主体として書きますが、「ああしたらこうなった」と物語のすじを説明してもいいです。
スライムの話は、「主人公が何事かをして元に戻るという物語の基本の形」で、その子はそれを自然に口にしたのだと思います。その時の私の驚きようにその子は手ごたえを感じて、元気に色を塗りました。
絵は下書きだから適当でいいです。色もつけなくていい。つけたい子や下書きを細かく書くことに熱中しだす子もいます。しばらくそのまま好きなようにして、15分くらい後、大きい紙に書くよう促してください。一番目のマス目に題を書いてもらいましょう。
⑤ ボランティアはどうするか
指導しようとする人はボランティアになれません。これは守っていただきたいのです。大人は「そうじゃなくて」「印刷紙芝居をまねて」とか言いたくなりますが、それは児童文化の考え方であり、「子ども手作り」の本質を理解されるようお願いしたいと思います。子どもが思い感じることはその子どもしか分からないので、本人の言葉を引き出すようにします。好きなように本人がしゃべりながら描くと自由な作品ができます。この場合のボランティアは「子どものつぶやきを聴く」傾聴ボランティアなのです。
大人がもし話しかけるなら、「しゃべりながら描いていいよ」「そのまま」「なるほど」「そうだね」「それからどうなった?」「それでいいよ」「もっと私に教えて」などでしょうか。
複雑なことを言うと、子どもは考え込んで止まってしまいます。止まっているときはしばらく静かに様子を見て、子どもが「わかんない」と言うか、そういう様子がないか見てください。そのときにはせかさないよう、ボランティアが最初の升目からゆっくり読んでみて、止まったところで「それからどうなるかなあ」と聞いてください。次に展開したことを決して否定せず、どんなものでもそれでいいと進めてください。紙が足りなかったら足して書きます。
一緒にセリフを読んでうなずいてくれるボランティアがいいのです。子どもにしゃべらせることができる人です。「おだててその気にさせる」という手法と似ていますが、ボランティアは自分が子ども手作りの作品に対してどれだけ近寄ろうとしているか自問して、しっかり絵を見つめてください。子どもはそういうことに敏感に反応するのではないでしょうか。
うなずくのが好きな人はあんまり口出ししません。書いたものを一緒に、にこにこしながら、けれど、真剣に見て、その子を理解しようとしているはずです。少なくとも、子どもを教える対象として見ず、大人が学び取る対象とする感覚が必要です。
子どもの作った紙芝居は大人の作ったのより面白いと評判なのだということを、かみしめてほしいのです。大人のボランティアが実演する時は、聞き手が合いの手を入れてくれる気持ちになるよう語りました。子どもが作るときは、ボランティアが合いの手をいれてください。
⑥ 白表紙に書く
一こまを一枚の紙に書きます。できるだけ大きくドカンと書くよう、ここでアドバイスしてください。しかし、できない人はそのまま小さくてもいいのです。その場合は紙の真ん中に書いてください。端だとよく見えなくなるので。
絵の具で色をつけるなら、4枚同時に並べ、同じところはついでにみんな塗っておくといいです。
左下の隅に1から4まで番号を書きます。また、一枚目に題と自分の名前を書きます。ペンネームにしても楽しいでしょう。どんな変な名前でもいいのです。
⑦ 裏書き
1枚目のセリフは4枚目の絵の裏に書きます。2枚目のセリフは1枚目の絵の裏。3枚目のセリフは2枚目の絵の裏。4枚目のセリフは3枚目の絵の裏。
⑥が終わった時点で、ボランティアにあらかじめ裏面に「○枚目のセリフ」とカッコ書きしておいてもらうといいです。何作も作り慣れてくれば、それも子どもが自分でできるようになると思います。
⑧ 仕上げ
ボランティアに、目の前で向かい合ったままちょっとやってもらうといい。足りないことがあれば、そこで本人が気づくので書き加えようとします。よく見えないなら、縁取りしたり濃く描いたりしましょう。
⑨ 舞台に入れて演じる
心配だったら、ボランティアに横で一緒に読んでもらいましょう。前に出るのをいやがる子は「代わりにね」といってボランティアが読みます。その後「やってみる?」ともう一度誘います。舞台に入れて見るととてもいいことが本人にもわかるから、やってみたくなると思います。絵を抜くのは手がすべって難しいからボランティアに手伝ってもらって、自分は舞台の横に立ち、下書きの字を見て読むと、もっといいかもしれません。自分の思ったとおり一人でやれれば気持ちがいいです。
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4 もっとやりたい人は
下書きの紙を増やせば、4,8,12・・と4の倍数で描けます。半端な数で終わっても良いです。下書きのまま8枚を切り離して上記⑦のようにのりではり合わせれば小さい紙芝居のできあがり。重ねて持てばオリジナルカードのようになります。
葉書を二つに折って半面を窓のようにくりぬき、上は開いたまま横長に持ち、カードをはさみ、上か左へ抜いて後ろへさせば小さいテレビか携帯ゲームみたいです。友達と中身を取り替えればゲームソフトの交換とかIモードに似ていて、裏のセリフなんか読めなくてもなんとなく話がわかるでしょう。それが想像力ではないでしょうか。パラパラ漫画みたいです。
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5 学校の先生は
① 児童文化と子ども文化の違いを知る。
児童文化として作る紙芝居が今までの主流でした。名作や民話を紙芝居に作ることです。名作の勉強にもなるし、地域を知り、地域の人とのふれあいにもなると思っていらっしゃるようです。名作はまだいい、適当に想像して描けるからです。民話は、真面目な子どもほど困るのです。服装や道具など時代考証に近いことを子どもがやらなくちゃならない。また、地域の名士が指導して子どもがそれに従う形になりやすいのです。嬉しいのは誰でしょう。自分の思ったのと違う形や色で描かされた共同制作など、子どもはどんな惨めな気持ちになるでしょう。第一、一枚毎に描き手の違う紙芝居は連続性がありませんので見るほうはよく分かりません。
② 「子ども文化」として
まだ若い学問なのでよく認識が進んでいない様子なのですが、「児童文化」と「子ども文化」は対で使うことが多く、それを理解すると今までもやもやとしていたことがすっきりと分かってくると思います。子どもは大人のミニチュアでなく個別の独特な文化を持っているので、それを大人の文化と対等に受け止め、それを「児童文化」一点張りで押しつぶしてはいけない、という気持ちです。
今書いた「話の筋を決めて子どもに作らせる」のが「児童文化」で、「自分の思ったことを自分で描く」のは「子ども文化」と例えることができます。どうぞ、ご理解ください。
「子ども手作り」は、脚本はその子の気持ちやつぶやき、絵はその子が置かれた状況の匂いや音まで表現し、分身のように生の姿を公にできます。外部に出すのであれば、子どもにペンネームで書いてもらってもいいでしょう。いずれにしろ、立派なものを崇拝しているうちは子ども文化を見ることができず、また、子ども文化をしっかり見据えたうえでなければ児童文化も語れないのではないでしょうか。
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6 ボランティアが活用する
条件が合えば、紙芝居のおはなし会に子どもの作品を差し込むことができます。長いお話の間にこれが入ると、全然違う世界が展開され、頭の中がクリアになるのです。「子ども文化」の作品なので子どもに圧倒的に支持されます。
見る大人は今の子どもの生の姿を見ることができます。ギョッとすることもあるでしょうが、まずそれを受け止めてから次を考えることで、現実の子どもに対応することができるのだと思います。
紙芝居を子どもが演じるとき、印刷紙芝居だと下読みに手間がかかり好みのものを探し出すこともできず行き詰ることがあります。自分の作ったものを自分で演じ、ウケてくれる大人がいる、ということはどれだけ励みになるでしょう。ボランティアは子どもが演じられるよう、段取りをします。
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7 ボランティアの役割
考える方法まで指示し子どもを保護したり教え導くのは、たいていの大人や子どもにとってある意味心地よく安楽で、教えられることを好む人が増えていくことにつながってきました。
作者の名前を聞いただけでなんとなくすばらしい作品だと思い込む人を、私はたくさん見てきました。有名な先生を崇拝した私自身もそうでしたし、またいつ間違えるかもしれません。「平和、人権」を唱えながら、権威を見せることで人を引っ張る人もいます。それらを見極めるためには、受ける側の感受性を豊かにするのがいいのではないでしょうか。
感受性を豊かにする方法。感受性とは受ける側の感性なので、何が言いたいのか分からなかったり自分の想定外のものに向かい合うことのほうがそれは豊かになります。わからないのであれこれ想像し、想像力が働くからです。不足分を補おうとする力です。また、「変だ」「おかしい」「まちがってる」「わからない」「足りない」などとマイナス要素が強い刺激になり、その刺激がエネルギーになることが多いのです。少なくとも、ある目的のために作られた作品に出会いそれに誘導されるよりも良い方法です。
だからボランティアは子どもを指導しようとせず、材料を揃えてできるだけ静かに待ちましょう。しかし時間や大きさが限定されているので、その中で見極め決断する力も必要であり、誰かが「それでいい」「そうだね」と言ってあげればよく、その見極めを一緒にする役割もします。
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8 大人が紙芝居をつくる
「紙芝居ボランティア」の論文に書いたとおりです。絵や文章に自信のある方が立派なものを作ろうと力む場合が多いです。手作り紙芝居における重要なことは、相手のために自分の思いを込めて表現することではないかと思います。聞き手が身近に感じるよう分かりやすく、ということを理解し、その上で面白く、良いものを楽しんで作っていただきたい。家庭の中で、親が子どもに作ってあげるのが最高のものとさえ思えるのです。
また「私なんて」と言いながら描く頼りなさげな力の抜けた絵が、思わぬ効果をもたらすこともあります。個人的なささいな日常を楽しみ、友達と茶飲み話のネタにするようなことが共感をよびます。
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参考文献
『14歳の子を持つ親たちへ』内田樹・名越康文 (新潮社)
『紙芝居をつくろう!』坂本一房・堀田穣 (青弓社)
『児童文化』原昌・片岡輝 (建帛社)
『絵芝居』(月刊)(絵芝居研究会)
『ひろがれ紙芝居』(人と本を紡ぐ会)
『異文化としての子ども』本田和子(筑摩書房)
『絵で聴く子どもの優しさ』寺内定夫(萌文社)
「4枚の紙芝居を作ろう(子ども手作り紙芝居)」
2007.2 石倉恵子
(2005年に書いたものを書き直した)
目次
1 はじめに (1)
2 用意するもの (1)
3 手順 (2)
4 もっとやりたい人は (4)
5 学校の先生は (4)
6 ボランティアが活用する (4)
7 ボランティアの役割 (5)
8 大人が紙芝居をつくる (5)
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1 はじめに(作る子どもへ)
ゲームは好きですか。やっとの思いでお金をもらってソフトを買って、ゲーム機に入れてやりますね。こっそり友達とソフトを交換してお母さんに怒られたことはありませんか。
カードゲームも好きですか。カードを友達と交換することもありますね。自分にとっていらないものでも他の人には大事だったりしますよね。ポケットに入りきらないくらいの束を握ってそれを眺めるのもうれしい。
ゲームソフトやカードを作りませんか。ずっと昔から日本にはそれに似たものを大まじめで作って、交換したり使ったりすることを商売にしていた大人がいました。今、図書館の隅で眠っている紙芝居がそれです。開いて見るとマンガみたいな絵でしょう。舞台に入れるとゲームの画面みたいでしょう。作るのは、自分が楽しめればいいので、すごい絵でなくても4コママンガみたいでもいいのです。とにかく描いて演じてみれば、あなたがそこにいるということを、みんながわかってくれるはずです。ひどいことを言う人がいるかもしれないけれど、あなたの作った紙芝居は、ソフトやカードを交換するみたいに、他の誰かにとってすごく大事なものかもしれません。
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2 用意するもの (2時間コース)
・鉛筆、消しゴム。ポスカ、クーピーなどこすってもかすれない色をつけるもの(絵の具が一番だが時間不足の可能性あり)
・プリンターやファックスに入っているA4かB5の紙、1人1枚。(チラシの裏でもいい)
・白表紙(板目紙ともいう)サイズはB4(美濃版)のもの。1人4枚、これはホームセンターで10枚250円位で売っています。大きい束でも買えます。
・ボランティアの誰かが見本(3の項 ④と⑥⑦を実際に作る。マジック書きでいい。なるべく絵が簡単な4コママンガを真似てもいい)を作っておきます。または、子ども手作りの作品をとりよせてそれを使ってもいいです。
・ 時間配分は参加者十人以下として、印刷紙芝居の実演30分、作る1時間、順番に読む30分、です。
・ ボランティアは子ども3人に大人が1人くらいついていると、一番いいです。親がいればもっと少なくていいです。
・ 紙芝居実演セット(舞台、演台、照明、あれば拍子木)
・ 作る手順を模造紙など大きな紙に書いたもの(3の項②、⑥、⑦)
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3 手順
① 実演をたっぷり見せる。そのときに画面展開主体の幼児向けの作品をいくつもやるといい。
② プリンターの白い紙を一枚づつ渡して、8等分に折るよう説明します。縦長にして、横2×縦4の折り目があるようにして広げます。左の4つに絵を、右の4つにそれに合わせたセリフを書く、これが下書きになると説明します。
③ ボランティアが見本を見せて説明します。
④ 下書き
4コママンガと同じように考えます。自分のこと、身の回りのこと、日記みたいに、今日の朝ごはん、昨日のおふろ、日曜日に何した、下ネタでもいい、などと想像して、まず第一場面の主人公や話のきっかけから入ります。このまま黙っていてもほとんどの子は書いていくようです。
次に迷うようなら、それに何か起こるか、出た、爆発した、落ちた、変身した、スッと変化した、ゆっくり変わった、ぶつかった、ドンと動いたこと、はないか、考えを進めてもらいます。そのときに子どもはしゃべりながら書くといいです。親やボランティアは子どもの話を引き出します。
某小学校では、スライムが爆発して元に戻った、ウンチが出た、虫が大きくなった、蝶が逃げた、で作りました。最初なのだからすぐ思いつくような、簡単なわけのわからない話でいいのです。ここでまとまった形にしようとしたり、指導して起承転結だとか、そうしないで下さい。上から順番にマンガ絵日記を書くようにします。友達にウケようとしてもいいです。
見本とそっくりに作る子もいますが、「物だけちょっと違うのにしないか」と尋ねて、それもいやなようなら「それでいいよ、次は違うの作ればいいよ」と認めて他の人と同じようにしてください。「真似したいと思ったことそのもの」を大切にしてください。
絵を書きながらしゃべったこと(「バギューン、ガガガ、あれへんだなあ、」など)を右に文字で書くように言います。「しぬ」「ころす」などという子もいますが普通に聞いて、そのまま受け入れてください。セリフになったはなし言葉を主体として書きますが、「ああしたらこうなった」と物語のすじを説明してもいいです。
スライムの話は、「主人公が何事かをして元に戻るという物語の基本の形」で、その子はそれを自然に口にしたのだと思います。その時の私の驚きようにその子は手ごたえを感じて、元気に色を塗りました。
絵は下書きだから適当でいいです。色もつけなくていい。つけたい子や下書きを細かく書くことに熱中しだす子もいます。しばらくそのまま好きなようにして、15分くらい後、大きい紙に書くよう促してください。一番目のマス目に題を書いてもらいましょう。
⑤ ボランティアはどうするか
指導しようとする人はボランティアになれません。これは守っていただきたいのです。大人は「そうじゃなくて」「印刷紙芝居をまねて」とか言いたくなりますが、それは児童文化の考え方であり、「子ども手作り」の本質を理解されるようお願いしたいと思います。子どもが思い感じることはその子どもしか分からないので、本人の言葉を引き出すようにします。好きなように本人がしゃべりながら描くと自由な作品ができます。この場合のボランティアは「子どものつぶやきを聴く」傾聴ボランティアなのです。
大人がもし話しかけるなら、「しゃべりながら描いていいよ」「そのまま」「なるほど」「そうだね」「それからどうなった?」「それでいいよ」「もっと私に教えて」などでしょうか。
複雑なことを言うと、子どもは考え込んで止まってしまいます。止まっているときはしばらく静かに様子を見て、子どもが「わかんない」と言うか、そういう様子がないか見てください。そのときにはせかさないよう、ボランティアが最初の升目からゆっくり読んでみて、止まったところで「それからどうなるかなあ」と聞いてください。次に展開したことを決して否定せず、どんなものでもそれでいいと進めてください。紙が足りなかったら足して書きます。
一緒にセリフを読んでうなずいてくれるボランティアがいいのです。子どもにしゃべらせることができる人です。「おだててその気にさせる」という手法と似ていますが、ボランティアは自分が子ども手作りの作品に対してどれだけ近寄ろうとしているか自問して、しっかり絵を見つめてください。子どもはそういうことに敏感に反応するのではないでしょうか。
うなずくのが好きな人はあんまり口出ししません。書いたものを一緒に、にこにこしながら、けれど、真剣に見て、その子を理解しようとしているはずです。少なくとも、子どもを教える対象として見ず、大人が学び取る対象とする感覚が必要です。
子どもの作った紙芝居は大人の作ったのより面白いと評判なのだということを、かみしめてほしいのです。大人のボランティアが実演する時は、聞き手が合いの手を入れてくれる気持ちになるよう語りました。子どもが作るときは、ボランティアが合いの手をいれてください。
⑥ 白表紙に書く
一こまを一枚の紙に書きます。できるだけ大きくドカンと書くよう、ここでアドバイスしてください。しかし、できない人はそのまま小さくてもいいのです。その場合は紙の真ん中に書いてください。端だとよく見えなくなるので。
絵の具で色をつけるなら、4枚同時に並べ、同じところはついでにみんな塗っておくといいです。
左下の隅に1から4まで番号を書きます。また、一枚目に題と自分の名前を書きます。ペンネームにしても楽しいでしょう。どんな変な名前でもいいのです。
⑦ 裏書き
1枚目のセリフは4枚目の絵の裏に書きます。2枚目のセリフは1枚目の絵の裏。3枚目のセリフは2枚目の絵の裏。4枚目のセリフは3枚目の絵の裏。
⑥が終わった時点で、ボランティアにあらかじめ裏面に「○枚目のセリフ」とカッコ書きしておいてもらうといいです。何作も作り慣れてくれば、それも子どもが自分でできるようになると思います。
⑧ 仕上げ
ボランティアに、目の前で向かい合ったままちょっとやってもらうといい。足りないことがあれば、そこで本人が気づくので書き加えようとします。よく見えないなら、縁取りしたり濃く描いたりしましょう。
⑨ 舞台に入れて演じる
心配だったら、ボランティアに横で一緒に読んでもらいましょう。前に出るのをいやがる子は「代わりにね」といってボランティアが読みます。その後「やってみる?」ともう一度誘います。舞台に入れて見るととてもいいことが本人にもわかるから、やってみたくなると思います。絵を抜くのは手がすべって難しいからボランティアに手伝ってもらって、自分は舞台の横に立ち、下書きの字を見て読むと、もっといいかもしれません。自分の思ったとおり一人でやれれば気持ちがいいです。
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4 もっとやりたい人は
下書きの紙を増やせば、4,8,12・・と4の倍数で描けます。半端な数で終わっても良いです。下書きのまま8枚を切り離して上記⑦のようにのりではり合わせれば小さい紙芝居のできあがり。重ねて持てばオリジナルカードのようになります。
葉書を二つに折って半面を窓のようにくりぬき、上は開いたまま横長に持ち、カードをはさみ、上か左へ抜いて後ろへさせば小さいテレビか携帯ゲームみたいです。友達と中身を取り替えればゲームソフトの交換とかIモードに似ていて、裏のセリフなんか読めなくてもなんとなく話がわかるでしょう。それが想像力ではないでしょうか。パラパラ漫画みたいです。
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5 学校の先生は
① 児童文化と子ども文化の違いを知る。
児童文化として作る紙芝居が今までの主流でした。名作や民話を紙芝居に作ることです。名作の勉強にもなるし、地域を知り、地域の人とのふれあいにもなると思っていらっしゃるようです。名作はまだいい、適当に想像して描けるからです。民話は、真面目な子どもほど困るのです。服装や道具など時代考証に近いことを子どもがやらなくちゃならない。また、地域の名士が指導して子どもがそれに従う形になりやすいのです。嬉しいのは誰でしょう。自分の思ったのと違う形や色で描かされた共同制作など、子どもはどんな惨めな気持ちになるでしょう。第一、一枚毎に描き手の違う紙芝居は連続性がありませんので見るほうはよく分かりません。
② 「子ども文化」として
まだ若い学問なのでよく認識が進んでいない様子なのですが、「児童文化」と「子ども文化」は対で使うことが多く、それを理解すると今までもやもやとしていたことがすっきりと分かってくると思います。子どもは大人のミニチュアでなく個別の独特な文化を持っているので、それを大人の文化と対等に受け止め、それを「児童文化」一点張りで押しつぶしてはいけない、という気持ちです。
今書いた「話の筋を決めて子どもに作らせる」のが「児童文化」で、「自分の思ったことを自分で描く」のは「子ども文化」と例えることができます。どうぞ、ご理解ください。
「子ども手作り」は、脚本はその子の気持ちやつぶやき、絵はその子が置かれた状況の匂いや音まで表現し、分身のように生の姿を公にできます。外部に出すのであれば、子どもにペンネームで書いてもらってもいいでしょう。いずれにしろ、立派なものを崇拝しているうちは子ども文化を見ることができず、また、子ども文化をしっかり見据えたうえでなければ児童文化も語れないのではないでしょうか。
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6 ボランティアが活用する
条件が合えば、紙芝居のおはなし会に子どもの作品を差し込むことができます。長いお話の間にこれが入ると、全然違う世界が展開され、頭の中がクリアになるのです。「子ども文化」の作品なので子どもに圧倒的に支持されます。
見る大人は今の子どもの生の姿を見ることができます。ギョッとすることもあるでしょうが、まずそれを受け止めてから次を考えることで、現実の子どもに対応することができるのだと思います。
紙芝居を子どもが演じるとき、印刷紙芝居だと下読みに手間がかかり好みのものを探し出すこともできず行き詰ることがあります。自分の作ったものを自分で演じ、ウケてくれる大人がいる、ということはどれだけ励みになるでしょう。ボランティアは子どもが演じられるよう、段取りをします。
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7 ボランティアの役割
考える方法まで指示し子どもを保護したり教え導くのは、たいていの大人や子どもにとってある意味心地よく安楽で、教えられることを好む人が増えていくことにつながってきました。
作者の名前を聞いただけでなんとなくすばらしい作品だと思い込む人を、私はたくさん見てきました。有名な先生を崇拝した私自身もそうでしたし、またいつ間違えるかもしれません。「平和、人権」を唱えながら、権威を見せることで人を引っ張る人もいます。それらを見極めるためには、受ける側の感受性を豊かにするのがいいのではないでしょうか。
感受性を豊かにする方法。感受性とは受ける側の感性なので、何が言いたいのか分からなかったり自分の想定外のものに向かい合うことのほうがそれは豊かになります。わからないのであれこれ想像し、想像力が働くからです。不足分を補おうとする力です。また、「変だ」「おかしい」「まちがってる」「わからない」「足りない」などとマイナス要素が強い刺激になり、その刺激がエネルギーになることが多いのです。少なくとも、ある目的のために作られた作品に出会いそれに誘導されるよりも良い方法です。
だからボランティアは子どもを指導しようとせず、材料を揃えてできるだけ静かに待ちましょう。しかし時間や大きさが限定されているので、その中で見極め決断する力も必要であり、誰かが「それでいい」「そうだね」と言ってあげればよく、その見極めを一緒にする役割もします。
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8 大人が紙芝居をつくる
「紙芝居ボランティア」の論文に書いたとおりです。絵や文章に自信のある方が立派なものを作ろうと力む場合が多いです。手作り紙芝居における重要なことは、相手のために自分の思いを込めて表現することではないかと思います。聞き手が身近に感じるよう分かりやすく、ということを理解し、その上で面白く、良いものを楽しんで作っていただきたい。家庭の中で、親が子どもに作ってあげるのが最高のものとさえ思えるのです。
また「私なんて」と言いながら描く頼りなさげな力の抜けた絵が、思わぬ効果をもたらすこともあります。個人的なささいな日常を楽しみ、友達と茶飲み話のネタにするようなことが共感をよびます。
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参考文献
『14歳の子を持つ親たちへ』内田樹・名越康文 (新潮社)
『紙芝居をつくろう!』坂本一房・堀田穣 (青弓社)
『児童文化』原昌・片岡輝 (建帛社)
『絵芝居』(月刊)(絵芝居研究会)
『ひろがれ紙芝居』(人と本を紡ぐ会)
『異文化としての子ども』本田和子(筑摩書房)
『絵で聴く子どもの優しさ』寺内定夫(萌文社)
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