日本橋に空を

と首相がいきなり言い出して周りを当惑させているという話だ。私は日本橋界隈が大好きだ。日本橋三越前から神田あたりまでときどき歩く。途中の室町砂場は好きな蕎麦屋である。

だが日本橋自体はたしかに暗い。真上に首都高が世にも醜い姿をさらしているからだ。角栄が首相の頃の改造論による自然破壊を思い出すような古臭くて汚らしい姿。かつて東京の中心だった歴史的スポットとしてはいかにも悲しい。あそこに高速道路がなくて、高い空がみわたせたらどんなにいいだろう。

京都の町が美しく、気持ちが安らぐのは加茂川が自然に近い姿で横たわっているからだ。三条大橋、四条大橋といった橋は、町の中心にありながら空がぽっかりと見えて広々とした空間を演出している。橋の上に上るとゆったりと開放的な気分になって何時行っても素敵だと思う。もし加茂川の上に高速度道路が走っていたらと思うと暗然とした気分になると同時に日本橋の上に首都高を通した設計者の無神経に腹が立つ。

首相の任期残り九ヶ月、個人的には是非にも日本橋に空を取り戻してほしいものだと思っている。