ヤスの駄文部屋

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ウルトラマンジード総括 ~ジードには何が足りなかったのか~

2017-12-29 14:57:15 | ウルトラマン
皆さんどうも、ヤスでございます。
今回は、12月23日に最終回を放送した『ウルトラマンジード』の総括をしていきたいと思います。










今回はかなり批判的な内容になっているので、苦手な方はご遠慮ください















ストーリーについて
まずは、全体のストーリーについていくつか具体的に話を取り上げて書いていくことにします。

第1話
全てのボタンの掛け違いはここから始まったといっても過言ではないでしょう。ジードの1話は『ウルトラマンジード』という作品、及びヒーロー物において絶対に外してはいけない要素を提示することが出来なかったのですから。
ジードの1話の全体的な流れはこうです。「ある日、平和だった世界に突如として怪獣が出現。ドンシャインというヒーローが好きな少年、朝倉リクは自分がウルトラマンとして戦えることを教えられ、ウルトラマンジードへと変身する。しかし、なんとその姿は都市伝説として語れる悪の戦士ベリアルに瓜二つであった…。」
流れだけ見れば、ヒーロー物としては中々王道であるとも言えるでしょう。「普通の人間として育ってきた少年が実はとんでもない力を秘めていた上に、悪人とされる存在に瓜二つであり少年には過酷な運命が待ち受けている」という部分だけ切り抜けば、まるで少年漫画のような熱さです。
ですが『ウルトラマンジード』は重大なところで躓いてしまいます。それは「ヒーローがヒーローとして戦う理由を描くこと」です。この部分をこの1話で示せなかったことは、個人的には残念でなりません。
朝倉リクは物語開始当初、普通の少年でした。普通の人間ではありえない身体能力を持っている所から厳密には普通の少年ではありませんが、彼はそう信じていたはずです。自分を普通の人間だと信じていた少年にとって、「実は地球人ですらなかった」という事実は本来ならばかなり深刻な問題のはず(しかも都市伝説だと考えていたウルトラマンが実在していたという事実も伝えられています)。しかし、『ウルトラマンジード』は1話でこの部分を軽く流してしまいました。ぺガと自分は地球人か否かの話をした後に、レムから「マスターは地球人ではない」という指摘を受けたのにも関わらずリクはノータッチ。もちろん1話の尺の中でその全てを描くことは不可能ですし、あの場ではリクは怪獣を止めることを優先したのでしょうが、そうであるならば余計に「戦う理由」を描く必要性が出てくるはずです。
それでは、リクがウルトラマンとして戦う理由がきちんと描かれていたと言えるでしょうか?答えははっきりと「NO」です。ただこれが理由ではないかと推察できる部分はあります。
1つはリクがヒーローが好きなこと。リクが割といい年をしているのにヒーローが好きな(私も人のこと言えませんが)あたり自分もヒーローになりたいと思っていても不思議ではないでしょう。しかしこのヒーローが好きという描写は、あくまで「ヒーローが好き」以上でも以下でもなく「リクが憧れているヒーローになりたいと考えている」と捉えられる描写はありません。
もう1つはスカルゴモラによって住んでいたリクの家が壊されてすぐにセリフとして描写されていますね。スカルゴモラを眺めながら「僕に力があれば町を守れたのに」とのセリフを残しています。ここでノイズとなってくるのがリクがそのように考えるバックボーンが描写されていないことです。確かに自分が住んでいた町を壊されたらその原因となった怪獣を止めたいと考えても不思議ではありませんし、むしろ自然であると言えるでしょう。しかし、「初めて怪獣の脅威を認識した」にも関わらず、ただただ正義感のみで「あの怪獣を倒したい」とだけ考えるのはさすがに無理があります。この時点で我々に与えられている情報はリクはあくまで「普通の地球人」として育ってきた「普通の少年」であるということです。普通の少年が「誰に頼まれたわけでもないのに、恐ろしい怪獣に正義感のみで突っ走っていく」というのあまり現実的とは言えません。この流れにしたいのであればせめてリクに並々ならぬ正義感があるような描写をしておくべきだったのではないかと私は考えます。
結局ジードは「どこまでも普通の少年」が「未知の脅威に挑んでいく」という部分を描けなかったのです。「自分の出生」だとか「怪獣への恐怖」だとか「普通の少年」なら考えそうなことを無視してしまったのですから。上述の通りリクのバックボーンは弱く、それらしき描写もあくまで点しての存在でしかなく1つの線としての物語は描けていません。ヒーロー物の1話として、そして普通の少年が過酷な運命に立ち向かっていく『ウルトラマンジード』の物語の1話としてはっきり言って失敗だったと言えるでしょう。こうして『ウルトラマンジード』は「普通の少年の物語」として最悪のスタートダッシュを切ったのでした。

第11、12話
『ウルトラマンジード』の山場の1つであるのが、この前後編です。この話の前編では「リクがベリアルの細胞から作られた模造品であること」、「リクのこれまでの戦いは全てケイがカプセルを手に入れるために仕組んだもの」、「ジードの変身に2つのカプセルが必要なのは模造品であるため」といった事実が明らかになります。このような様々な衝撃の事実を知らされたリクは、自身のアイデンティティを喪失してしまうことになります。当然、後編ではリクが再びアイデンティティを取り戻す物語が描かれるわけですが、その描写には不満がいくつか存在します。
実はこのお話、上述したアイデンティティを取り戻す物語をまるで描けていないのです。リクがウルトラマンとして、そして朝倉リクとして再び立ち上がる物語はあまりにもお粗末なものでした。
まず、リクはこの話で自身の名付け親である朝倉錘という老人からウルトラの父のカプセルを譲渡され、錘さんを守るべくマグニフィセントに変身し再びウルトラマンとして戦うわけですがこの時点ではリクがアイデンティティを取り戻したような描写はなかったはずです。まあ、リクは「ジーっとしててもドーにもならねえ!」という精神で生きている人間なので「目の前で死にそうな人がいるのに戦わないでいられない!」と考えたとも解釈できますが、問題はその後です。
マグニフィセントとなって再びぺダニウムゼットンとなって戦いを挑むリクに、ケイは「お前は所詮ただの模造品だ!(意訳)」と発言。それに対してリクは「模造品なんかじゃない!僕はリク!朝倉リク!それが僕の名前だぁ!」と言います。リク君はいつの間にアイデンティティを取り戻したんですかね。ケイが言っていた「お前はカプセルを手に入れるための模造品(意訳)」という言葉を真っ向から否定するような何かを得たような描写があったとは思えないんですが一体、彼に何があったんでしょう。もしかして、長らく会ってなかった名付け親から名前の由来を教えてもらう程度でケイの発言を全否定しているのだろうか。正直なところ、名前の由来を知る→ジードはケイがカプセルを手にするためにつくった模造品じゃない!になる因果関係が理解できません。それとこれとは別の話でしょうよ。
その後もリクとケイによる激しいぶつかり合いは続きます。「お前の人生に価値はない!お前を作ったのは私だ!お前が生まれた瞬間にお前を殺すことも出来たんだ!(意訳)」との発言に対してリク君はこう言い返します「あなたにはわからないんだ!人の幸せが!」意味が分かりません。いつ、誰が人の幸せについて語ったんですかね、返す言葉が斜め上過ぎて会話が噛み合ってないです。そもそも今回の話で人の幸せ云々に関する描写は存在しません。さらに続いてリク君は「僕には仲間がいる!帰る場所も!」と畳みかけます。でも今回の話って仲間関係ないので
は。
今回の話でリク君がしたのは、錘さんとゲームする→錘さんと喧嘩する(お互いを気にかけているが故に)→錘さんからカプセルを譲渡され再び戦う。いったいこの流れのどこに仲間が入り込む余地があったんですかね。確かにリク君はこれまでも「仲間」というものを大切にしてきましたが、今回の話ってそこまで仲間は関係ないと思います。そもそも仲間がいようが、いまいがケイの言うところの「お前はカプセルを手に入れるための模造品(意訳)」を否定できるとは思えないんですが。
その後の「僕は僕の人生を生きている!」もイマイチ回答になってなくて、結局ウルトラカプセルを手に入れるためにリクが戦わされていたのも事実だし、それにより多くの人が犠牲になったのも事実。この辺りを全部すっ飛ばして果たして本当にリク君はアイデンティティを取り戻したと言えるのでしょうか、ケイのことを「かわいそうな人」と言えるだけの何かをリク君が得たと言えるでしょうか、本当にリク君はライハの言う通り自分探しを終えることが出来たのでしょうか。私はそうは思えませんでした。
第16、17話
ついにベリアルが復活!地球へと来訪し、ジードとゼロの前に立ちはだかります。これ自分が見落としてるだけなのかもしれないんですけど、この時のベリアルって何しに来たんですかね。なんかジードと融合がしたかったようですが、劇中の描写を見る限りパワーアップが狙いだったんですかね。カプセルを集めてた理由ってベリアルの肉体を復活させるためだったと思うんですけど、別にそういうの関係なく復活してたのも少し気になるところ。まあベリアルはケイを利用している風でしたから、そもそも「肉体復活のため」というのがウソだったのかもしれませんけど。
この前後編、まず第一に気になったのがリク君がやたらと「ベリアルの息子」という部分にこだわっていること。自分の父親が悪人であるというのは確かにつらいことかもしれませんが、わざわざ「僕がやる!」と言ってムキになるほどリク君ってベリアルと因縁があるとは思えないのです。そもそもそれまでの描写から見ても、リク君の悩みってせいぜい「ベリアルに似ているというところから中々認められない」くらいなもので言うほどベリアルの悪行についても知らないし、そこで悩んでいるような描写もないので少し違和感を覚えてしまいました。リク君がどうしてもベリアルとの決着をつけなければいけないと思ってたのは何故なんでしょうか。
キメラベロスに吸収されたリク君は精神世界でベリアルから「地球の奴らはお前を信用しようとしないが、俺はお前を受け入れてやる。俺のところに来い」と誘いをうけます。あれだけジードが戦ってるのに地球の人々は一向にジードを信用しようとしませんし、この誘いにリクの心が動かされるのはわかります。問題は「心の奥底では求めていたはずだ、本当の家族を」の部分。そんなの初耳なんですけど。まあ、リク君の境遇から好意的に解釈すれば想像できる範疇ではありますが、これまでの話で家族を求めているような描写はなかったはずです。前編のベリアルへのこだわりもそうなんですけどリク君の葛藤とか悩みとかの描写が弱いんですよね。どうにも説得力に欠ける印象があります。
この後、ライハの言葉でリク君は自我を取り戻すわけですがそこにもいくつか気になる点が。まず「忘れないで仲間のことを」、これはわかります。何度も言いますがなんやかんや仲間に関しては描写されてきたので、理解できます。問題は次の 「地球のことを」という発言、何言ってんですかね。ジードが未だに理解を得られず、リク君が悩んでいることはライハも知っているはずです。それなのにこの場で地球のことを出すって何考えてんですかね。それとこの後に「あなたの夢を」って言いますけど、リク君がヒーローになりたいっていう夢を持ってたことはいつの間に周知の事実になったんですかね。確か明確にそれが描写されたのは15話の「戦いの子」だったような気がするんですけど(しかもモアの回想シーンのみ)。特にそれまでリク君が「ヒーローになりたい!」と強く思っているような描写はありませんでしたし、一体ライハはどの口でリクの夢について語ってんですかね。一応補足すると、リク君があれだけ「ドンシャインが好き」と言ってるのでそこから推測できなくもないですが、それはあくまで「ヒーローが好き」というだけで「ヒーローになりたい」ということにはならないと考えます。そして極めつけがこれです「あなたはみんなのヒーローなんだから!」だからいつの間にジードは皆に受け入れられたんですかね。何度も言いますけどついさっきまで「ジードはまだ受け入れられてない」ってやったじゃないですか。そしてそれこそがリク君がベリアルに取り込まれかけた原因でもあるのに、あっさりスルーするんじゃないよ。
この後にリクが昔、ドンシャインに泣いているところを助けられたシーンが入りますが、この描写ってこの話で唐突に入れるべきではないと思うんです。何故そう思うかと言うと、『ウルトラマンジード』において「リクがヒーローになりたいと考えている」という描写がかなり大切であることがこの前後編を見るとわかるからです。前述の通り、リクがベリアルの元から戻ってくるカギは「リクが皆のヒーローである(そうなりたいと考えている)こと」です。そしてそうであるならば本来「リクのヒーローへの思い」をきちんと積み重ねて描く必要があったはず。そうであるにも関わらず「リクがヒーローになりたいと考えている」と描写されたのは15話の回想シーンくらいでした。そして「ヒーローになりたいという思うようになったきっかけ」が描かれたのは上述の通り17話(16話でも伏線っぽく描写されていましたが)。圧倒的なまでにリク君の掘り下げが足りていないのではないでしょうか。『ウルトラマンジード』は「ヒーローに憧れている少年がヒーローになるまでの物語」をやろうとしたのに出来ていなかったのではないでしょうか。
そしてそう考えると、前述した1話で「ヒーローがヒーローとして戦う理由」を描けなかったのはこの作品において大きな失敗だったと思うのです。もし、第1話の段階から「リクがウルトラマンジードとして戦うこと」と「ヒーローになりたいという思い」を重ねて描写できていたら、この作品の印象は大きく変わったのではないでしょうか。「ヒーローに憧れている少年がヒーローになるまでの物語」を描く上でその初陣は特別なものだったはずです。これも、私が『ウルトラマンジード』の1話が最悪のスタートダッシュだったと考える理由の一つです。
最終的にキメラべロスから脱出したジードは(わざわざ)地球に戻ってきてキメラべロスとの再戦を開始。その姿を見た地球の人々はジードを応援!だから皆いつの間にジードを受け入れたんですかね。確かにジードはあれだけ恐れられているベリアルに戦いを挑んでいるので、地球の人々からすればどちらかと言えば応援する対象なんでしょう。ですが地球人側の最終的な描写って「ジードがベリアルを招いたんじゃない(意訳)?」というような感じで、ジードに対して否定的だったわけじゃないですか。それに「地球人はまだジードを受け入れていない」かのような描写をしておいて何もフォローを入れないというのはどうかと思います。そもそも「ベリアルとそいつを呼び寄せたかもしれない存在」がわざわざ地球に戻ってきてドンパチやってるのを見て、事情を知らない一般市民が「ジードは正義のヒーローなんだ!がんばれ!」ってなるとは思えません。これ元も子もないことを言ってしまえば、そもそも市民の描写が弱いんですよね。基本的に同じテレビ番組(「知りたいワイド」)でアナウンサーや評論家っぽい人が言うくらい。たまに市民がインタビューを受けいる描写があったような気もしますが、結局はニュース番組の中でしたね。そう言えば度々思うんですけど、この世界の軍隊って何してるんですかね。子供番組でそこまで描写するのは難しかったんだとは思いますが、それっぽいものを描写するだけでかなり印象が違ったと思うんですが。あれだけ「ジードは危険」とか言ってる割には、テレビで嫌味言うくらいで大事にしないあたり案外そこまでの事じゃなかったのかもしれませんね。

第24、25話
死んだと思ってたベリアルが(案の定)生きていた!ケイからストルム機関を奪い取りベリアルアトロシアスとなったベリアルは人類に宣戦布告する。最強最悪の存在に決死の覚悟で挑んでいきます。
最終回を手前にしてレイトさんにスポットが当たるのが印象的でしたが色々と引っかかる部分もあったりしましたね。特に気になったのはレイトさんの家族が人質になるくだり。ケイによってルミナさんとマユを人質に取られてしまったレイトとゼロは思う存分戦えなくなってしまいます。その後ライハによって家族を助けられたゼロは「家族を弱点と言ったな、それは違う!守るべきものがあるから俺達は戦えるんだ!」と言うんですけど、この状況なら割とベリアルが言ってることって正論だと思うんですよね。現実問題としてライハが助けに来なければ戦えなかったわけですし。それにゼロも見栄を切って戦いを挑んだ割には別に勝てないし…。
他に気になった点はベリアルアトロシアスの強大さが殆ど演出から伝わってこないこと。設定的に言えばエンペラ星人とダークルギエルの力を使っているわけですし、放っておけば宇宙ごと消滅するような奴なのでヤバイに決まってるんですけど、映像からだと何がそんなに強いのかよくわからない。具体的に言えばベリアルアトロシアスという存在にはどんな能力があるのかが描写できていない。しかも、あれだけ堂々と宣戦布告し「ウルトラマンじゃなければ無理」とまで言われてるのに、割と皆さんのんきに遊園地をエンジョイしているという…。いつ来るともしれない存在を恐れて営業停止なんかできないかもしれませんけど、あそこまで堂々と宣戦布告されたのに相も変わらずなにも特別なことをしないというのは若干の違和感がありますね(一応避難警報はでたようですが)。それと一般市民はともかくこの世界の軍隊って本当に何やってんですかね。あんなヤバイの放置してウルトラマンじゃなきゃ無理ってちょっとどうなんでしょう。こういった描写のせいもあって全然、決死の戦いという雰囲気が伝わって来ませんでした。アトロシアスは全体的に余裕を感じさせながら戦っていたし、ひょっとしたら底知れぬ力を隠しているのかもしれません。ですが、その「底知れない力」を描写して初めて決死の作戦という部分に説得力が生まれてくるし、レイトさんと家族のやり取りも感動的になると思うんですよ。最終決戦としてはこの上なく味気ないものだったと思います。
あと本当に細かいことなんですけど、リク君が作戦を無視して出てきたことをゼロに言われて「ジーっとしててもドーにもならないからです!」と言う部分リクくん答えになってないよ…としか思えませんでした。それとリクくん相変わらずやたらとベリアルにこだわるけど、言うほどベリアルと因縁ないよね
後編ではロイヤルメガマスターになっても勝てなかったジードの前にウルトラの父が登場。一旦引いた後にもう一度ベリアルとの最終決戦に挑みます。
まず、前編から気になってたんですけど光の国って今の今までベリアルのこと知らなかったんですかね。なんかウルトラの父が急に感じとってやって来たような描写になってましたけど、ゼロを派遣してヒカリまで一度は来ていたのに何も知らなかったってちょっと謎ですね。まあギリギリまで静観するつもりだったのかもしれませんけど、どの程度でヤバイ出来事なのかが若干わかりづらいですかね(ここはそこまで気になったわけではありませんが)。
ベリアルとケイ、それぞれの因縁の相手と決着をつけるべくライハとリク君は再び戦いに挑みます。ここからは正直ツッコミどころだらけなんですけど、まずライハが「私たちは一度キングの奇跡に触れているから、もう一度奇跡は起こるはず」って言うんですけど何を根拠に言ってるんですかね。ひょっとしたらリク君を鼓舞する意味があったのかもしれませんけど、割と意味が分からない。リク君はリク君で神妙な顔でプリミティブに変身!この人もしかしてアホなんですかね。ついさっき「ロイヤルメガマスターでも勝てなかった。」って言ってたのに一体どうしちゃったんでしょう。
ベリアルとの最終決戦!(案の定)勝てないリク君ですが、彼の諦めない意思にウルトラマンキングが反応!なんとジードの全形態が揃います。ちょっと前にお前のキングの力はほんの少しみたいなこと言ってなかったっけ?ベリアルアトロシアスの集めたカレラン分子を分解した効果とか色々と考えられるんですけど、あまりにも説明が足りてない(他のウルトラマンも感じ取っていたのでそれも関わっている?)。
そして、異次元空間に飛ばされたリク君はベリアルとの戦いの中でベリアルの心を知ることになります。要約すると「光の国の奴らを見返すために悪の道へと落ちたベリアルは、その後何度も倒されては復活しその度に深い恨みを抱いてきた」ということで、そのことを知ったリク君はベリアルに対して「怒りと悲しみ」が伝わってくると言います。今までの『ウルトラマンジード』でベリアルに関する掘り下げってほとんどなかったのに、この描写ってどうなんですかね。まあ確かに度々恨みや妬みごとを口にしてきていましたが、悲しみの要素が微塵も感じられないんですけど。この話にするならベリアルをもっと掘り下げるべきだったはずです。これまでのシリーズを見てきたら変わるのかもしれませんが、個人的には過去作を追ってきたところで全然納得できませんでした。そもそもリク君がベリアルを抱きしめて、ベリアルがアーリースタイルになる描写って必要なかったんじゃないですかね。あの描写を入れるとあたかもベリアルの心が救われたかのような印象を受けますが、実際は違います。実際のところはリク君がベリアルの心を一方的に理解して、受け入れただけです。ベリアル自身は最後まで悪の存在でしかありませんでしたし、だからこそリク君はとどめを刺したんです。結局スタッフはベリアルを悪として描きたかったのか、そうでない存在として描きたかったのかがわかりません。別に単純な悪として終わらせたくないだけならわざわざアーリースタイルに戻してベリアルが闇から抜け出したような描写をいれる意味はなかったと思います。作り手のやりたいことだけが先行したような印象です。
また、ライハとケイの戦いもはっきり言って冗長でしかありませんでした。そもそもライハの復讐劇は9話でウルトラマンキングに止められたときに、すでに終わっているようなものじゃないですか。あの時「君がなすべきことじゃない」と言われて、ライハもそこに納得したんですから。それに最終決戦間近のライハってどこまでもケイに同情してるだけなんですよね。そのケイに対する同情とケイと最後まで戦うことの因果関係が謎です。「私が看取ってあげる」とか言ってますけど、じゃあ黙って看取ってやれよって話なわけで。前編みたいにケイが何かしたならともかく、別に何もしてないとこに行って戦いを挑まなくてもいいような気がします。そもそも戦うなら戦うでちゃんと決着つければいいのに、最後はただ消えるとこ見るだけって一体何考えてたんですかねこの人。

以上がストーリーに関する大まかな不満です。ジードは割と物語的な要点がわかりやすいのでいくつかの話を例に出してみましたが、こうして見ていくと本当に勿体ないなと思いますね。いくらでも面白くできる余地はあったのにイマイチ詰めが甘いため面白くなりきらない、そんな歯がゆさを常に感じるシリーズでした。





細かい不満について
ここからは諸々の小さな不満についてです。個人的に気になるのいくつかの不満点をつらつらと書いていきます。

ベリアルの扱い
上の方で書い過去作を見てきたけどあまり納得できな部分について詳しく語っていきます。
まずイマイチよくわからないのがベリアルの「悲しみ」についてです。過去作で何かベリアルが悲しさを背負っているような描写って全然なかったはず。基本的に光の国を潰すとか、すべての宇宙を手にするとかそういう野心や憎しみとかの方が強く描かれていたはずです。それにジードにおける描写や回想を見ても全然悲しみが伝わってこないんですけど、一体ベリアルは何に悲しみを感じていたんですかね。
また、『ゼロファイト』までの出来事があまり触れられないのも残念。ゼロに「お前だってウルトラマンだろうが!」と言われたり、「守るべきもの」について問われたのに『ウルトラマンジード』では特に描写されませんでしたね。まあ「守るべきもの」がゼロの強さの秘密であることに気づいただけで別にベリアルが守るべきものを持ったわけではないんですけどね。ただ、最終回前の話で同じようなやり取りをしたのにノータッチってのはちょっと…ですし、何よりあそこで思わせぶりに引っ張ったのに結局描かれないってずっと追ってきた身からするとあれは何だったんだって感じなんですけど…。そういえばD5とUFZ達にも因縁があったはずなのに最終回でちらっと出たくらいでそこも描かれずじまいでしたね。
長いことゼロとベリアルの因縁を引っ張った割にはこの辺はかなりお粗末だったと思います。別に銀河伝説だけでも十分成立するレベルというか、それ以降の流れは何だったんだという感じ。

模造品とはなんだったのか
11話で「僕は模造品だから2本カプセルがないと変身できない」とか言ってた割には最後までそこは解決しませんでしたね。何かしらリク君が吹っ切れたような描写なかったですし。それに何より結局リク君の戦いのほとんどが仕組まれたもので、守っていたつもりだったが実は人々を傷つけていたという部分も特にフォローはありませんでしたね。実は最終回まで期待してたんですけど、拍子抜けでした。

サラリーマンゼロ                        今回、ゼロはサラリーマンのレイトさんと一体化するわけですが、はっきり言って「サラリーマン」に設定した意味はなかったと思います。わざわざ6話で「サラリーマンとウルトラマンは違う」って言う話をして、しかもレイトさんに「僕にウルトラマンは無理」と言わせたのに結局できちゃってるじゃないですか。それどころか仕事中に度々駆り出されるし結局「サラリーマンとウルトラマンの違い」ってなんだったんだよと思わずにはいられない。


フュージョンライズは差別化されたか               この作品全然フォームが差別化されませんでしたね。初期3フォームはジードクローが全形態が使えると設定されたため個性が薄れてしまいましたし、その後は完全上位互換であるマグニフィセントやロイヤルメガマスターが登場して変身する意味が薄れてしまっています。特にロイヤルメガマスターは完全な最強フォームなので他のフォームの意味を損ねてしまっています。オーブでもタイプチェンジに関しては批判が見られたりしましたが、オーブは設定的不思議ではないと解釈できました。ジードは設定的にもロイヤルメガマスター以外のフォームが必要なくなってしまったのが残念。    

敵の魅力のなさ
今回のシリーズは怪獣がどこまでも敵に召喚される存在でしかなく、ほとんど怪獣としての魅力を感じませんでした。また、この世界の軍隊は怪獣が出現しても特に活動する様子が見られず、怪獣の被害の規模等がやや伝わりづらかったです。こうした敵の魅力のなさは大したことないよう見えて意外と大問題なんですよね。ヒーローっはやはり強い敵に立ち向かっていくからカッコよく見えるのであって、ただのやられ役としての怪獣を倒してもあまり魅力を感じません。特にウルトラシリーズは巨大な怪獣が相手で他のヒーローに比べて災害的な描写が必要になってくるので尚更です。ここは全話通して残念なところでした。

各キャラの立ち位置
レム、ライハ、ウルトラマンゼロの3人のキャラクターの立ち位置にはいくつか疑問が残りました。
まずレムですが、カプセルを持っていたりジードクロー出現時に「期は熟したそういうことです」と発言する等、思わせ振りな言動をしておりかなり怪しい様子もあったのに、敵である可能性が指摘されたのはなんと11話が初めてでした。ゼロに関してもその部分部分で不満があり、そもそも彼はカプセルが盗まれた件に関して調査していたはずなのに、なぜスルーしていたのでしょうか?なんども基地の出入りしておきながら、そこに触れないのには違和感があります。フクイデ先生も最終的にカプセルを奪うならレムを裏切るようにプログラムしておけばよかったのに…。
ライハは決して悪いキャラクターではなかったんですが、彼女のアクションシーンはもう少し削れたのではないかと思います。大事なところを描かないくせに彼女がアクションしてるシーンばかり長々と映される演出には首をかしげずにはいられませんでした。







坂本浩一監督について                       さんざんTwitterでもブログでも書いてきたのでやはり書くことにしましょう。やっぱり僕はこの人を好きになることが出来ませんでした。
まず特撮についてですが、これまでに比べてマシになったと感じる部分もあったものの全体的にはやはり微妙。いくつかウルトラマンらしい絵作りが出来ていると感じる部分もありましたが、ミニチュアワークやカメラワークはあまり成長しなかったように思います。特に顕著なのが最終2話でミニチュアの撮り方が下手くそで奥行きの弱い絵作りが多かったですし、寄って揺らすカメラワークは健在でセット感が丸わかりでした。また敵のサンドバック化も相変わらず。
マシになった部分も言ってしまうと下手に他の監督の画作りを意識した結果、坂本監督としての個性は薄れてしまったように思います。一言でいうと「妙にゆっくりしただけの映像になっている」という感じ。
また、ドラマ作りの下手くそさも相変わらずで彼の担当回は上でも書いた通り酷いものでした。それとファイトオーブからわざわざ撮ってたのに本編で矛盾するのも残念です(色々しょうがない部分はあるんでしょうけど)。
あと、インタビュー等をいくつか調べてみたんですけど大体どれも「これがやりたい」、「あれがやりたい」ばかりなのも気になるなぁと。特に気になったのは「ライハを戦うヒロインとして用意した」「銀河伝説と繋がるようにした」と言う部分。まあインタビューに載っていることが全てとも思いませんけど、メイン監督として引っ張っていくなら「この作品はこういうのを目指した」くらい言って欲しいものです(この辺はほとんどイチャモンですね(笑))。










まとめ
放送前から不安半分期待半分といった感じですが、結果的に不安の方が的中してしまいましたね。色々と美味しい要素もあったけど、それらが生かされなかったのは残念でした。
ジードに足りなかったものはズバリ「取捨選択」だったと思います。もっと削れる部分はあったし、もっと拾えた部分はあったはず。そこのバランスが崩れていたのが作品としてのクオリティを下げてしまったのではないかと考えます。





何はともあれスタッフ、キャストの皆さんお疲れさまでした。





では皆さん、またいつか。                                                                                        

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7 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-02-15 15:46:02
ストーリーを軽視しがちな坂本監督の悪癖もそうですが、シリーズにそれほど造詣の深くない乙一先生がメイン脚本を担当されたことも含め、それらが悪い意味で噛み合いジードという作品の半端な出来に影響しているのかなと思いました
坂本監督の担当されたウルトラシリーズにおける作品群が大嫌いとまでは申しませんが、いわゆる「らしさ」を全く考慮されない方だなぁとは常々感じています
坂本監督の持ち味が活きる作品も勿論ありますが大体の場合それらは他のスタッフの方々のフォローあってこそで、監督個人ははっきりと申し上げて「作品」を作る力が欠けておられるように思います
Re:Unknown (kamenridermatsu)
2018-02-15 18:11:49
どこまでいっても「坂本浩一」になってしまう人ですね。それを良しとするかそうでないとするかは人それぞれですが、クリエイターとしては惜しいところが目立つ印象です。
Unknown (ju)
2018-03-20 10:25:40
坂本さんもゼロシリーズを担当したのは『ウルトラ銀河伝説』だけで、他は『ギンガS劇場版』や『エックスの5話』などあまりゼロやベリアルの掘り下げに多く関わってない上、ウルトラマンシリーズを観てきた地盤の無い乙一さんの組み合わせが実質ゼロシリーズの現状の最後とも言える作品にはあまりマッチしていないかったのかな?と思いましたね、完全新規の作品ならこの問題は無かったようにも思いますけれど…。
ジードでも朝倉リクの『ヒーローに憧れる少年➡︎少年に憧れるヒーロー』という過程をもう少しじっくりとやって欲しかったかなぁ、というのが正直な所です。
『ヒーロー好き』のリクもそうですが『お父さんがヒーロー』なレイトさんや『哀れな悪役』のケイも1つ1つの要素は輝いていたとは思うのですが、それを作品全体であと少し上手く噛み合わせていたらなぁと思うのが惜しい所だと思います。
記事作成、お疲れ様です!
Re:Unknown (kamenridermatsu)
2018-03-20 15:56:58
1つ1つの要素は面白いんですけど、つめこみ過ぎな印象があります。ジードに限らず坂本監督の作品にはそのような傾向が強いように思います。
特に父親でありながらヒーローとして戦うレイトに関しては、これで一本できたんじゃにかと思うくらい好きな設定だったので勿体ない気がします。
Unknown (Unknown)
2021-06-06 13:27:27
お前が同じもん作ってみろよ、できないから
Unknown (Unknown)
2023-06-29 03:12:54
坂本浩一の擁護する信者は良く見てない薄っぺらい
粗悪の人擬きでつまらないですから
クズですね
Unknown (Unknown)
2024-02-10 18:19:54
あんたは演技できんくせにガチャガチャいうなよあんたの好みがさっっぱり分からんあんたぜったいライバル会社だろはい論破~

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